信州便り 飯田と松本〜いまも夢追い人
生まれ故郷の飯田市の知人から毎週、A4判に編集した「いいだより」がメールで送られてきます。「飯田より」とも「いい便り」とも読めるタイトルです。2020年9月28日で800号になり、いまも続いています。
発行しているのは、元飯田市職員の小林敏昭さんです。退職後は介護関係の仕事をされています。
記念の800号は、小林さんらしいユーモアと決意があふれていました。巻頭には「八百は数がとても多いことを表す比喩として用いられ、『八百屋』『八百万』(やおよろず)などの表現があります。一方で『嘘八百』「八百長』などマイナスイメージも多いものです」とありました。
小林さんが環境問題にこだわって発信を始めたのが2005年6月9日の「No.001」号です。そのとき笠松山麓からの飯田市の全景写真を使ったそうです。記念号も同じく笠松山麓から飯田市街地と南アルプスを望む雄大な写真でした。
公私にわたる話題がぎっしり詰まったふるさとからの通信です。コロナ禍で通所介護施設での対応の苦渋や高校の同窓生との楽しい語らい、北岳で逝った親友への追悼登山の話など、温かい思いが伝わってきます。小林さんにとって、いいだよりの編集は、立ち止まって身の回りの喜怒哀楽を考える時間をつくってくれているようです。
もうひとつの便りは、松本市の知人からです。音楽サークルで歌っている中澤幸子さんが、還暦を過ぎてから初めて作詞・作曲して吹き込んだCDを私の家族に送ってくれました。
タイトルは大いなる喜びという意味の「Delightful」(ディライトフル)です。「ゆらめく街にさよならを~松本千歳橋によせて~」など5曲が収録されていました。沢宮幸子の名前で優しい歌声を響かせています。
♪千歳橋に灯りがともる
震える肩先別れを告げた
大人の恋はグラスに溶かし
そぼ降る雨に流して消した
せめても一度あなたの夢に
燃ゆる想い夜空の星に
のせてゆらめく想い出の街
千歳橋は、正式には「せんさいはし」というそうです。国宝・松本城の近くを流れる女鳥羽川にかかる橋で、昔は大手橋と呼ばれていたようです。
2019年8月に松本市を訪れたときに、この橋から時計博物館を撮った写真がありました。「ちとせばし」と思っていましたが、中澤さんは松本への愛情から正しい呼び名を知ってほしくて歌に託したそうです。
お二人の便りから、改めて年齢に関係なく人生を生き生きと過ごしていく喜びを教わった気がします。定年後、元気で好きなことに時間を費やすことができる、まさに「黄金の十年」の始まりです。
(2020年11月3日)
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