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かつて名古屋はオートバイ王国だった~第2回名古屋モーターサイクルショー開幕

 中部地方最大級の二輪車イベント「第2回名古屋モーターサイクルショー」。4月7日に愛知県常滑市の愛知県国際展示場(アイチスカイエキスポ)で開幕しました。国内外の二輪車メーカー15社20ブランド、部品・用品・カスタム関連など計115社が出展しています。初めて取材しました。
 主催の実行委員会(中部経済新聞社、愛知県、愛知オートバイ事業協同組合、愛知国際会議展示場、メ~テレ)を代表して中部経済新聞社の恒成秀洋社長があいさつ。昨年3日間で延べ3万6000人の入場者でしたが、今年の第2回は4万人を目標に掲げました。

展示されたオートバイに乗る愛好家

 出展メーカーはホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ、独BMW、米ハーレーダビッドソンなど圧倒されます。私自身はオートバイ愛好家でもなく、ライダー経験もないので、取材の狙いは四輪車と同じくEV化への対応でした。
■電動化への備え
 二輪車の各ブースでは、やはり内燃機関・爆音がライダーたちの人気です。急にEV化、電動化に進むとは思われませんが、出展企業の多くは潜在的に危機感を共有して備えをしているところも目立ちました。
 ▽日本特殊陶業のブース。モビリティビジネスカンパニー国内販売部広告宣伝課の方は、「EVだとNGKのプラグは使われなくなります。ただ、ハイブリッド車や水素燃料車であれば点火プラグの需要はあります」と話していました。

日本特殊陶業の旧本社のデザインはレトロで人気

 私の新聞記者駆け出しの地、愛知県小牧市の工場は、おしゃれなカフェテラスやテントを張ったオフィスを備えて一新されていました。また、名古屋市瑞穂区の本社は2023年に栄地区のアーバンネット名古屋ネクスタビルに移転。旧本社の社屋はTシャツの絵柄=写真=になって1枚3000円で販売していました。担当者は「日特への思い入れがない人でもレトロな絵柄を気に入って買ってくれる若い人もいますよ」とのことです。
▽プロト(愛知県刈谷市)&日立チャネルソリューションズ(愛知県尾張旭市)
 プロトは二輪・四輪のアフターパーツを企画開発し、製造販売する会社で、愛知県の「愛知ブランド企業」にも選ばれています。プロト広報販促チームの話。

EスクーターGEV600と手前が急速充電機

 EV対応では「EスクーターGEV600」=写真=を販売。原付免許で運転できます。中国で製造しているため、円安で国内販売の値段は高くなっていますが、充電時間は6~8時間。チョイ乗りによさそうです。
 これとは別に業務用に急速充電できるバッテリーを開発していました。取引先の信用金庫の営業に使ってもらったりしているそうです。新聞販売店からも配達用の問い合わせがありますが、荷物を積むと負荷がかかり走行距離が伸びなくなってしまう欠点も。今後の課題ですが、1日30㌔㍍程度の走行距離なら、環境を重視する企業イメージにふさわしいのではないでしょうか。バッテリーでは日立チャネルソリューションの協力を得ています。
 このほか、イタリアのオートバイメーカーBENELLI(ベネリ)社の折り畳み式電動自転車も販売しています。2017年からプロト社内に「E-モビリティ事業」をスタートさせ、その最初の取り扱い車種がベネリ100周年記念の「e-Bike」でした。
▽住友理工(小牧本社=愛知県小牧市) 
 名古屋営業所化工品営業課担当課長の話。「今回はクルマ関連ではなく、愛知ブランド企業のブースで出展しています。うちは防振ゴムなど自動車向けの売り上げが8割を占めているので、EV化は無視できません。非自動車部門で、今回展示している断熱材の新革命『ファインシュライト』に力を入れている」とのこと。

水と分離しているシリカエアロゲル㊥を独自技術で一体化㊨

 断熱性の高いシリカエアロゲルは、水と混ぜると分離してしまいます。これを独自の配合技術で均一分散させて塗料として使えるようにしています。シートなどに塗って、わずか1㍉以下でも断熱効果が高まるそうです。壁に入れる分厚い断熱材は必要なくなります。
▽無限電光(名古屋市天白区)

オートバイから振り落とされても身を守ってくれるエアバッグ

 二輪車用のエアバッグ「ヒットエアー」を考案し、現在も発売する無限電光と久々の対面でした。
 以前、何度か取材しています。現在も国内外の警察白バイ隊やライダーらに愛用されているほか、乗馬用も本格化させていました。2011年3月の東日本大震災直後に取材したときは、高速道路や高所作業用の需要があると話していました。
 こうした安全を守る装備品は、内燃機関でもEVでも変わらず求められるのではないでしょうか。
■かつて名古屋はオートバイ王国だった
 2001年から2002年に取材した愛知のモノづくりの源流を探る記事で、印象に残っているのは当地がオートバイ生産で国内の先陣をきっていたということでした。
 1952年ごろ、刈谷市に本社があった「トヨモータース」が製造した原動機付き自転車「DT9型」もそのはしりでした。自転車にキットとして販売したエンジン(90cc)を後付けするだけのオートバイ。物資のない戦後でもモノづくり精神が生きていた思いです。ガソリンが規制されていたなかで、松根油を使っていました。
 また、トヨモータースの下請け会社、仙石製作所が熱田区にあり、1955年からバイクにペダルをつけた「サイクロンペット」を売り出していました。
 映画の1シーンを飾ったメイド・イン・ナゴヤもありました。黒澤明監督の「醜聞(スキャンダル)」で、三船敏郎が爆音を響かせて銀幕を走り抜けた「キャプトン」。名古屋市内の「みづほ自動車製作所」の名車といわれています。
 占領下、マッカサ―元帥が乗ってたという「ヒラノ・バルモビル」も中川区の平野製作所製でした。
 メイド・イン・ナゴヤのメーカーは中小企業だったため、1955年以降は浜松市のスズキ、ヤマハ、カワイ、ホンダなどに圧倒されていきます。
 そうした中、オートバイから自動車へ。トヨタ自動車とともに部品メーカーとして大きく成長していった中小企業も多くありました。二輪車で培ったモノづくりが生きたのです。
 イベントの期間は9日までの3日間。入場料は大人2000円。女性と高校生以下は無料。
(2023年4月8日)
 ※「名古屋オートバイ王国」を書いた愛知県の冨成一也さんを2002年取材したときの話を中心に構成しています。 


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