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どうまい牛乳アイスモナカ~JA愛知みなみ(田原市)の地産地消の広がり

 愛知県の渥美半島に位置する田原市。トヨタ自動車のレクサス工場もありますが、酪農や電照菊など花き栽培、メロンなど果物の一大産地です。
■どうまい牛乳のアイスモナカ
 JAグループ愛知記者会で先月、地元の「どうまい牛乳」を使ったアイスモナカを試食しました。2023年4月から販売を始めた「どうまい牛乳アイスモナカ」です。累計6万2000個を売り上げています。

試食用のアスモナカを食べ比べてみました

 新たに3月からカスタード風味が仲間入りし、一般紙の記者のみなさんに記事にしてもらうための試食でした。
■地産地消のブランド
 どうまい牛乳は、中央製乳株式会社(愛知県豊橋市)が渥美半島の生乳を使って販売。地元の学校給食の定番でもあります。田原市は、「渥美半島たはらブランド」に認定しています。JA愛知みなみ(田原市)の酪農部会員9人によって生産される田原100%の牛乳です。搾乳後24時間以内にパック詰めされるため、搾りたての風味を損なわないと地元で愛されています。
■カスタード風味

アイスモナカのカスタード風味とオリジナル。奥はどうまい牛乳

 オリジナルと新フレーバーを食べ比べてみました。新顔は、どうまい牛乳40%、加糖卵黄8%使用し、ミルクのコクと適度な甘さのカスタード風味。素材の生乳が新鮮なので、モナカもおいしく仕上がっています。 
 希望小売価格200円~250円。JA愛知みなみの産直市場で販売中です。
■生乳が余る危機 
 思い出します。2021年暮れ、コロナ禍で学校給食が中止となり、搾乳した生乳が余り気味だったことです。JAや自治体などがみんなで協力して牛乳を購入する動きが各地で広まりました。
 チーズなど加工品をはじめ、これからの猛暑時には地産地消のアイスモナカは大歓迎です。モナカだけでは生乳の需給調整弁にはなりませんが、地元の乳製品の消費拡大は必要です。日頃から地元の酪農の状況を知り、応援意識を高めておくことが調整弁になるということを教えてくれました。
 生乳が余った様子は、下記アドレスで筆者のnote記事をご覧ください。https://note.com/aratamakimihide/n/nbd2d5acca8db
(2024年5月27日)

一杯の牛乳から~丑年の締めくくりに「寅さん」のまごころ 

 「疲れたから今日は休みにするってわけにはいかないんですもんね」 「だってそうでしょ?牛には盆も正月もないんだもの」
 葛飾柴又の「とらや」。フーテンの寅こと、車寅次郎が浮き草稼業を反省して北海道の酪農家で働き始めたものの、重労働に音を上げて、わずか3日でダウン。妹のさくらが病床に伏す兄を葛飾柴又に連れ帰ったあとの家族の会話です。
 映画「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」(第11作)は、マドンナの浅丘ルリ子の演技とともに牧場の景色が心に残ります。
 寅さんの話を思い出したのは、今年の暮れに生乳の余剰から廃棄の話が報道され、農林水産大臣に始まり、首相や東京都知事が「牛乳を飲みましょう」と呼びかけをしていたからです。夏から秋にかけて乳牛にとって低温の気候が良く、生乳の出が良かったようです。
 一方で、コロナ禍で需要が減り、年末の学校給食の休みも重なって供給が需要を大幅に上回ってしまいました。乳を搾らないわけにもいかず、生産調整もままなりません。 
 愛知県のJAでも応援の動きが出ています。JAひまわり(豊川市)管内には10戸の酪農家があります。需要の1割を占める学校給食がなくなる時期に在庫過多になっていました。JAひまわりは12月29日、管内の11支店で牛乳が当たる抽選会や数量限定の無償配布を実施しています。
 12月24日に開催されたJAグループ愛知の定例記者会では、愛知県田原市の牧場で生産されている「どうまい牛乳」(写真)が出席者にふるまわれ、年末年始の牛乳の消費拡大にペンとカメラの応援をお願いされました。
 「どうまい」は、三河弁でとてもうまいという意味だそうです。確かに牧場で飲んだ生乳のような味でした。

愛知県の小笠原牧場で2017年 ©aratmakimihide

 以前、愛知県西尾市の小笠原牧場を取材したことがあります。2017年夏でした。ホルスタイン270 頭を飼育。えさやりは通常2回のところを3回で、朝5時~9時、昼と夜。夏場の気温が30度を超えると愛知県で飼うのは過酷だといいます。そのため、扇風機は2頭に1台の割合で約130台を天井につけていました。細霧で温度を下げるなど手間暇もかかっていました。牧場経営者の仕事ぶりを拝見して、休みなしの過酷な仕事だと感じたことを覚えています。
 もうひとつの問題は、牛のえさとなる乾燥させた牧草の輸入が滞り始めたことです。乾牧草は肥育に欠かせないものですが、コロナ禍で輸送するコンテナ港の働き手が減っています。「乾牧草に逼迫感 米、豪から輸入遅れ」(日本農業新聞2021年2月12日)の黄色信号が点滅していました。中国を中心に宅配需要が高まり、利益率の高い高級品が優先されていることも背景にあるようです。
 JAグループ愛知によると、管内の新城市の酪農家でも乾牧草不足が懸念されています。「このままでは牛の間引き(唐数削減)をしなければならない」という深刻な声も出ているそうです。乾牧草は、石油と違って国家備蓄の対象品目ではありません。本州では牧草の自給率が低く、輸入に頼っているだけに、酪農家やJA単独では解決が難い問題です。
 酪農家にとって厳しい「丑年」でしたが、来年の寅年はどうでしょうか。
 「寅次郎忘れな草」では、寅さんは再び北海道の酪農家の牧場を訪れ、「労働」を志願するところでエンディングです。おそらく寅さんは働き手としては役に立たなかったと思いますが、酪農家の役に立ちたいという真心は、スクリーンから伝わってきました。
 余った生乳5000トンは、消費者の協力もあって廃棄を避けられそうです。ホクレンが28日発表しました。一杯の牛乳から多くを学んだ年の瀬でした。
(2021年12月29日)


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