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信州飯山から藤澤蒔絵の世界~名古屋の松坂屋で11月1日まで展示

 長野県飯山市の株式会社藤澤蒔絵の最新作を展示した『信州飯山 藤沢蒔絵の世界』が名古屋市中区の松坂屋本館6階、和らいふ小路イベントスペースで始まりました。11月1日(火)まで。
 創業は1950年(昭和25年)。初代の藤澤忠雄氏が信州飯山の地場産業である飯山仏壇に蒔絵を施したのが始まりです。飯山仏壇は当時、通産大臣(現経済産業大臣)指定の伝統的工芸品に指定されていました。

蒔絵を施した万華鏡を手にする藤澤社長

 その後、現社長の2代目藤澤一雄氏(63)が承継。新たな蒔絵工芸品の分野に踏み出すため、「信州うるし工房 彩」を開設し、アクセサリーなど小物に蒔絵を施した新商品を次々と開発しています。一般向けの蒔絵体験や国内デパート、海外での展示販売にも積極的に取り組んでいます。
 藤澤社長は工業大学を出ていますが、家業の承継にあたり、東京や金沢などで漆芸の基本やデザインを学び、1998年には経産大臣指定飯山仏壇蒔絵部門の伝統工芸士の認定を受けています。
 展示されている商品に「蒔絵時計」があります。これは、信州の精密機械工業の拠点である諏訪の技術者と2003年(平成15年)に共同開発した日本初の純国産の蒔絵時計(Bi-sai)です。藤澤社長自らデザインし、飯山と石川県輪島の職人さんたちが描いています。山水や鳳凰、昇龍、フクロウなどの絵柄が好まれています。
 ネックレスやブローチ、帯留めなどの蒔絵アクセサリーは女性に人気だそうです。
 信州ならではの作品も多数あります。日本電産サンキョーの高級オルゴールや木曽の漆器、曲げわっぱに蒔絵を施した商品は、信州オリジナルともいえる作品群です。葡萄のつるで編んだ籠にオリジナルの蒔絵の根付けがアクセントになった作品など多彩です。

新作の葡萄のつるで編んだ籠。藤澤蒔絵の根付けがアクセントに

 藤澤社長は「漆も輸入品が多くなってきましたが、あくまで国産漆にこだわり、日本独特の漆工芸を次世代につなげていきたい」と話しています。
 漆器は日本を代表する工芸品です。木曽漆器の曲げわっぱに蒔絵を施し、中に長野県のおいしいお米を入れてふるさと納税の返礼品にできないかなど、藤澤社長のアイデアは膨らみます。
 一方で、漆の7割は中国からの輸入品です。政府は漆の木を植えるプロジェクトを助成しているようですが、樹液を採取する専門家が少なくなり、このままでは宝の持ち腐れになってしまいます。
 木を植えるなら、使うときの人材育成もワンパッケージで考えていきたいものです。
(2022年10月28日)
 

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