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アナログの備えも再確認~災害時の通信手段確保へNTTドコモの訓練で思う

 「ドコモタワー」(高さ168㍍)に何度か上ったことがあります。鉄塔を見上げると、あちこちから空に向かってアンテナが突き出していました。
 この場所はNTTドコモ東海支社が運営するドコモ名古屋ビル(名古屋市東区)の屋上。エレベーターと階段を使って上りきると、高さ約110㍍の屋上からは、防災機能を搭載した鉄塔と眼下に360度の眺望が開けていました。

20191218ドコモタワーnote

(2018年1月24日、ドコモ名古屋ビルで©aratamakimihide)
 3月11日の東日本大震災の日が近づくと、災害への備えを改めて確認することが増えてきます。通信会社も通信を確保するための訓練を欠かさず実施しています。今年2月24日には、陸上自衛隊第10師団が主催する関係機関との協同訓練「南海トラフ地震対処訓練」が春日井駐屯地であり、NTTドコモなど通信各社が参加しています。 
 巨大地震発生によって道路などが寸断され通信の復旧作業が困難になった場合を想定して、自衛隊のヘリコプターに通信機器や復旧要員を乗せて被災地域へ空輸する狙いです。
 訓練当日は通信各社が可搬型衛星エントランス基地局をヘリコプターに運び込み、機材の操作員も実際に乗り込んで離陸、駐屯地周辺を周回して輸送要領を確認しました。
 空だけではありません。2月15日にはNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社が「災害時における通信資機材の海上保安庁船舶への積載訓練」を名古屋港で展開しています。私は2018年1月に取材したことがありますが、風が強く、波も荒いなかで通信各社が非常用基地局のパラボラアンテナや発電機を短時間で運び込んでいました。実際に災害が起これば、離島へ運んで衛星回線から通信を確保することになります。

災害時における通信資機材の海保船舶への積載訓練提供

 東日本大震災の半年後に主な企業の対策をまとめたことがあります。NTTドコモは東北6県で約4900局の基地局が被災し、復旧までに1カ月半かかりました。総務省のまとめでは、東北の広域が浸水したことで、約2万9000局が停波し、原因の85%が停電でした。
 この教訓を踏まえて通信環境を維持する対策が打ち出されています。2019年の台風15号による停電でまたも停波が引き起こされたことから、総務省は2020年6月にガイドラインを改正。通信圏内に自治体庁舎がある基地局は、非常用電源で24時間稼働できるように義務付けられました。もちろん、陸上では各社が移動基地局や携帯電話の充電サービスなどの対応を進めています。
 冒頭の「ドコモタワー」のパラボラアンテナの設備は、半径7㌔・㍍数のエリアをカバーする「大ゾーン基地局」のひとつでした。空陸海から通信手段の確保が進められていますが、個人としては常にスマホやタブレットを充電しておくことを最低限の備えとしています。
 災害時の通信各社の対応に期待しつつ、常に最悪の事態を想定しておくことも必要です。長時間の停電でスマホが使えなくなったらどうするのか? 大事な電話番号を書き出しておき、覚えておくようにしなければ。アナログの備えも心がけています。
(2022年2月28日) 

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