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いつかは月面で農業を~名古屋のスタートアップが脱炭素効果の宙苗(そらなえ)の花壇づくり

 6月猛暑が続く30日、愛知県信用農業協同組合連合会(JA愛知信連)は、温室効果ガス削減と環境美化活動の一環で、名古屋大学発のスタートアップのTOWING(トーイング)の開発した脱炭素効果のある高機能苗「宙苗(そらなえ)」を名古屋市中区の本部前の花壇に植えました。
 キックオフではJA愛知信連の磯村幹夫代表理事常務とTOWINGの西田宏平代表取締役が、「SDGs脱炭素花壇」の看板とともに写真撮影。JAバンクのマスコットキャラクター「よりぞう」も加わりました。
 花壇はJAあいちビル前にあり、国土交通省の管轄です。事前に計画を提出し、幅8・30㍍、奥行き3㍍のメイン花壇と、両脇の幅4・7㍍、幅8㍍の計3区画です。JA愛知信連の若手職員を中心にマリーゴールドなど3種類、計750株の苗を植えました。
 宙苗は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した人工土壌の技術に基づき、TOWINGが高機能な苗として実用化したもので、商標出願中です。
 TOWINGの試算では、1苗あたり約150㌘の二酸化炭素の削減(吸収)が期待できます。これはガソリン車が1㌔走行した場合の排出量になります。
 今回は花の苗ですが、JA愛知信連の担当者は、これからは都市部の畑に脱炭素効果のある野菜の苗なども植えていけるように支援したいと話します。
 道路沿線にある畑に脱炭素の宙苗が増えていけば、人工土壌が通行車両の排ガスを吸収してくれる効果が期待できそうです。地球環境をまもる野菜は、消費者にも歓迎され、名古屋の都市農業の切り札になるという夢も広がります。
 TOWINGの西田さんは、中学生のころから将来は宇宙に関係する仕事をしたいと思っていました。進学した名古屋大学では地球惑星科学を専攻。ここで国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した「高機能ソイル」のことを知ります。多数の小さな穴がある多孔体(たこうたい)に微生物を入れて、さらに有機肥料を加えた土壌です。農業用の土づくりに画期的な変化をもたらすと着眼し、実用化を目指しました。
 今年2月には大手ゼネコンの大林組との共同研究で、月の砂とほぼ同じ成分の「模擬砂」から作った高機能ソイルを使って、コマツナを栽培することに成功しました。
 現在、愛知県刈谷市に5000平方㍍の研究農園を設け、ショウガやイチゴなどを栽培しています。
 2020年秋からは宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが主催の月面基地での農業計画に参加。西田さんが描いた宇宙ビジネスは、月面で野菜を栽培する「宙農(そらのう)」へ向けて動き出しています。

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