見出し画像

津軽三味線全国大会で信州・安曇野の小学6年生金賞~「津軽のカマリ」のこと

 第25回津軽三味線コンクール全国大会の独奏(少年少女・小学生の部)で、安曇野市・穂高南小学校6年生、宮沢莉乃音(りのん)さんが金賞を受賞しました。4月26日に地元の安曇野市役所を表敬訪問し、太田寛市長に優勝を報告しました。
 大会は公益財団法人日本民謡協会(本部・東京)主催、読売新聞社など後援で4月3日、東京・浅草公会堂で開催されました。独奏の少年少女・小学生の部には、事前審査を通過した全国の8人が出場。課題曲は「津軽じょんから節」です。
 宮沢莉乃音さんは4歳から三味線を習い始め、東京へ月2回通ってレッスンを続けています。昨年のコンクールは3位でしたので、今回は念願の優勝を果たすことができました。
 表敬訪問で両親とともに市役所を訪れた莉乃音さんは、津軽じょんがら節を弾き、巧みなばちさばきを披露しました。一緒に練習を続けている妹の愛乃音さん(4年)と詩乃音さん(3年)も加わり、3姉妹での合奏もありました。
 莉乃音さんは将来、プロの演奏家を目指しているといいます。両親は「基本は学生なので、しっかり勉強して、好きな習い事をやってほしい」と話していました。
 津軽三味線で思い出すのは、初代高橋竹山さんの太棹の響きです。30年ほど前、名古屋市の公会堂に独奏を聞きに行ったことがありました。独特の津軽弁の語りで、竹山の世界に引き込まれていったことを今も覚えています。舞台には照明が当たっていたのですが、ばちが勢いよく弦を叩くと、まるで風雪が舞っているかのような錯覚に陥っていました。
 その後、愛弟子の高橋竹与(現・竹山)さんの独奏も聞き、すっかり師弟のファンになっていました。
 初代高橋竹山さんの生涯をたどる映画「津軽のカマリ」を観たのは、2018年11月でした。会社の近くに試写会の小ホールがあることを知り、初めて行って観た作品です。
 竹山さんは1910年に青森県生まれ。幼い頃に病気で視力を失い、生きるために三味線を習って門付けをして歩きました。戦後、津軽民謡を三味線用に編曲して各地を回って独奏を続け、次第に津軽三味線の第一人者としてファンを獲得していきます。「カマリ」というのは、津軽弁で匂いの意味だそうです。
 津軽三味線のコンクールは、日本民謡協会主催のほかにも、いくつかあります。今回のコンクールの独奏(一般の部)では、名古屋市の中村滉己さんが優勝しています。本人の公式サイトをみると、中学3年生のとき出場した第12回津軽三味線日本一決定戦で当時最年少の14歳で日本一の栄冠を手にしています。
 宮沢莉乃音さんは「海外で活躍するプロになりたい」という夢をもっています。こうした若い奏者が競い合い、新たなファン層を広げくれることを期待します。津軽三味線奏者として、それぞれが雰囲気や個性といった「カマリ」を発揮されることを願いながら。
(2022年5月3日)
 表紙写真は安曇野市の公式ホームページから

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?