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熱田神宮に草薙館~名古屋は刀剣の宝庫

 三種の神器のひとつ、草薙剣(くさなぎのつるぎ)をご神体とする名古屋市熱田区の熱田神宮。境内に10月3日「剣の宝庫 草薙館」がオープンしたので、開館に先立つ内覧会で刀剣の数々を拝見してきました。
 草薙館は、境内のほぼ中央にあります。神楽殿を設計した上田徹さんが手がけた建物で、外観は熱田の杜(もり)の雰囲気と調和しています。館内は天井が高く、採光にも木漏れ日がさすような造りがされています。内部の設(しつら)え、それ自体がアートだと感じます。

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 館内に入って目を引くのが、340センチという長さで知られる「真柄(まがら)太郎太刀」と、長さ267センチの「真柄次郎太刀」です。戦国時代の姉川の合戦(1570年)で朝倉方の武将親子が用いたと伝わっています。太郎太刀は重さ約10㌔で、この模造剣の重さを体験できる「刀剣体験コーナー」もあります。
 国宝の短刀「来国俊」をはじめ、重要文化財9振りを含む13振りの刀剣が、それぞれ独立した陳列ケースのなかで輝いています。照明も工夫されていて、刀身がきれいに見えました。
 名古屋をはじめ東海地方は刀剣文化の宝庫です。岐阜県関市は刀鍛冶で有名です。2018年に三重県桑名市の多度大社で営まれた奉納鍛錬。関市の刀匠が白装束姿で玉鋼(たまはがね)熱し、打ち延ばして折りたたむ「折り返し鍛錬」の真剣身に魅了されました。
 この奉納鍛錬を主催した土地活用の東建コーポレーション(名古屋市)は、名古屋市中区に「名古屋刀剣ワールド」を開設します。2020年6月にオープン予定でしたが、感染症拡大のなかで開館を延期し、現在はウェブサイトで収蔵品の国宝や重用美術品の名刀を紹介しています。
 また、徳川美術館(名古屋市東区)は、主な収蔵品だけでも国宝が8振り、重要文化財が19振りあるそうです。尾張徳川家に受け継がれてきた刀剣など大名文化のコレクションとしては国内最大規模です。
 名古屋に三つそろう刀剣の殿堂。なかでも、オープンしたばかりの熱田神宮の草薙館は、苦難を切り拓いた草薙剣に由来した展示館です。開館記念特別名刀展は10月25日までです。
 草薙館の周りにも見所がありました。目の前の「南神池」が、また生まれ変わっていました。また、といったのは、1979年に「南神池が装い一新」といった記事を書いたことを思い出したからです。

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 親亀や子亀が甲羅干しをするのどかな池でした。記者1年生の私にとって、事件事故の取材で疲れた心身を癒やしてくれる場所のひとつでした。
 通っているうちに池の工事が始まったので、早速、遊歩道や菖蒲園ができることを紹介しました。まもなく南神池は、花を愛でながら散策できる回遊型の庭園に生まれ変わったのです。
 そして今度は、草薙館とともに南神池一帯が「くさなぎ広場」としてオシャレになりました。かつては参拝に訪れた年配の方たちが多かったように感じましたが、いまは若いカップルや親子連れが多くなりました。
 名刀を拝観して気持ちが引き締まったあとは、南神池で甲羅干しをしている亀たちにまた、会ってこようと思っています。
(2021年10月9日)

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