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NSL再加入~福和伸夫名古屋大学教授最終講義を聞いて

 NSLというのは、マスメディアと研究者による地震災害軽減に関する懇話会のことです。事務局は名古屋大学減災連携研究センター(名古屋市千種区不老町)にあります。Network for Saving Lives の略称です。
 NSLの創設に尽力された福和伸夫名古屋大学減災連携研究センター教授の最終講義が3月11日、名古屋大学の豊田講堂でありました。防災減災にかける先生の熱弁を拝聴して、私ももう一度、大学の研究者や行政の担当者、そして災害報道で苦心している現役のメディアのみなさんと一緒に防災の広報をしないといけないと感じました。
 NSLは2001年4月に第1回会合が開かれ、現在まで続いています。新聞社、テレビ局が交代で幹事を務め、福和先生らと相談しながらテーマや講師を決めています。
 地震や豪雨災害で取材対応を求められる行政の担当者と、実際に報道の現場で読者や視聴者に効果的に伝えようと苦心しているマスコミとが本音で語り合う場です。
 原則はオフレコですが、深く取材をしたいときには改めて行政や学者に当たるルールになっています。取材する側(マスコミ)は、一刻でも早く情報を得たいと電話攻勢をかけますが、取材される側(行政)は、住民の避難など現場の対応に追われ、次々とかかる電話に対応しきれないという対立関係にあります。そうした災害の舞台裏をお互いに共有することで、次の災害時に協力し合える関係を築くことが期待できます。福和先生のような防災の専門家が加わることで、より中身の濃い話し合いができます。
 大学の研究者も災害時に求められる専門家のコメントについて、いかに読者にわかりやすく話すことが大事かといった気づきもあります。三方が得をするような懇話会だからこそ、意義があるのです。
 会場は幹事社の会議室です。NHK名古屋放送局や名古屋テレビ、CBCテレビなどへ伺いました。テーマによっては70人ほど参加することもあり、そのときは減災連携研究センターのある「減災館」を使います。
 ■地元意識と当事者意識
 福和先生の活動は多岐にわたっています。表紙写真のような地盤と建物による揺れを実験できるペーパークラフトの教材の監修もあります。多彩なしごとのなかで、産官学やマスコミをつなぐ役割が秀逸です。NSLに限らず、中部経済連合会や名古屋商工会議所など経済界に働きかけ、地盤の強固な名古屋市中区三の丸の官庁街を防災司令塔にする「三の丸ルネサンス」の構想などは一例です。
 都市防災は住んでいる人たちが当事者意識を持って連携しなければ、画にかいた餅です。南海トラフ巨大地震に備えるとともに、いまから復興計画を考えておくことも「福和術」で学んだ教えです。
(2022年3月17日)


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