見出し画像

新聞の正月連載に見る2024年~読売新聞地域版から

 激震で明けた2024年。前年から仕込みをしてきた新聞社の地域版企画には、まさかの災害を想定してたものはありませんが、2024年の日本列島を読み解くヒントが満載です。読売新聞の沖縄県を除く46都道府県の地域版をクリックしてみると・・・。

読売新聞の正月地域版から一覧表としてまとめた要旨

 ■地域色ある企画
 地域版ならではのテーマ選びは、他県の読者でも興味がわきます。
 青森版は、豪雪県で活躍する人々の紹介です。タイトルも「冬でもアツく」。元旦号は青森空港の除雪隊「ホワイトインパルス」です。以前、テレビ番組で豪雪の中を隊列を組んで進む除雪車両を見て驚いたことを覚えています。
 記事によると除雪車両10両が隊列を組み、斜めに滑走路の雪を押しのけて進みます。東京ドーム12個分の広さの滑走路や駐機場などに積もる雪を標準40分で除雪。さながら青空にカラフルな雲を描くブルーインパルスが地上に舞い降りたかのようです。
 3日は能登半島地震で休載でしたが、4日は映画「バカ塗りの娘」のモデルとなった伝統工芸品・津軽塗の職人。5日は冬の味覚のアンコウの漁師さん。6日は津軽鉄道の「ストーブ列車」のアテンダント・・・とアツい人々が続いています。
 ■横軸と縦軸
 企画原稿を書くときは、テーマをバラバラにせず、同じ内容でくくっていきます。横串を刺すと言っています。
 今年の横軸のひとつは、パリ五輪・パラリンピック。宮城、茨城、神奈川の県版で県ゆかりのアスリートを取り上げています。五輪にからめてスポーツの魅力を取り上げた山形県版もあります。
 同じく節目をとらえた企画も目白押しです。地方創生事業10年をとらえて記者が群馬県内をルポする「ハツラツ上州」。県土へ鉄道が敷設されてから130年の千葉県は「線路は続く130年」。県内に32路線もあるそうです。
 福井県と石川県は北陸新幹線が敦賀まで延伸する節目。世界遺産登録30周年の京都は「旅のカタチ」。富山県版は黒部宇奈月キャニオンルート開通。佐賀県版は国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会の開催地。長崎県版は長崎スタジアムシティオープン、大分県版はサッカーのトリニータ発足30周年で「スポーツ立県」を企画しています。
 和歌の浦に聖武天皇が訪れてから1300年という和歌山県版の企画。さらに2024年に50歳以上が日本の人口の半分を占めるタイミングをとらえた「Over50」。それぞれ意外性のあるテーマです。
 節目のテーマには、歴史も織り込まれているだけに深みが出ています。
 ■時代を映す連載に期待
 スタートアップを取り上げた東京都の「スター都UP」は、国内で圧倒的に起業件数が多い東京ならではのテーマです。埼玉県版「農 アグリ革新」は、今年が農政の基本法「食料・農業・農村基本法」見直しの年だけにタイムリーです。農政ジャーナリストの会員として、一般紙にスマート農業やコメなどの品種改良が取り上げられるのは消費者が農業への関心を高めるきっかけになると期待しています。
 ■見慣れない「熊台」
 見慣れない言葉もありました。「熊台」です。実は熊本県と台湾のことでした。熊本版「つながる熊台」は、菊陽町に台湾積体電路製造(TSMC)が新工場が稼動するタイミングで、両地域のつながりを過去にさかのぼって取り上げています。
 ■通年のテーマ
 長野県版は移住者ら新しい風を起こす人たちを紹介しています。初回は人口約800人の南信州の「根羽村」に名古屋から移住した青年の話でした。村の移住コーディネーターや古民家を改修した一棟貸しの宿の経営など幅広い活動。お試し移住のアイデアが生かされ、「年平均5人程度だった移住者も、コーディネーター配置後は年約25人に伸びた」(長野県版1月1日)といいます。
 よそ者だった移住者が、新しい視点で地域を活性化させていく。この波動は各地域で広がっています。一般紙が正月紙面以外でも取り上げていく通年のテーマだと思っています。
(2024年1月6日) 
写真は名古屋観光ホテルロビーに正月用に設置された黄金の茶室
※下記のアドレスから正月の新聞の話を読むことができます
https://note.com/aratamakimihide/n/n38fe69c1e30e?sub_rt=share_pw


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?