見出し画像

The Last of Us Part 2をクリアしてとりあえず思った事

The Last of Us Part 2(2020/6/19リリース)をクリア。
噂に違わぬ、いやむしろ噂以上の問題作、名作でした。
賛否で言えば圧倒的賛の立場だけどこれは否の人の気持ちも分かります。
名作ゲームの定義が概ね一般的な分かりやすさや快楽を提供するものだとしたら、本作は全く大衆的でもなければ快楽の提供も断る、といった製作姿勢で作られています。
それを意識高いと受け取るか、製作者のオナニーと取るかは確かに意見の分かれる所。
僕はファミコン以前のマイコン(パソコン)時代のカセットテープの時代やドラクエ以前のゲームブック大好き少年でアドベンチャーゲームは昔から好きだったので本作のストーリーの心意気の部分には非常に感心しました(の割にTLOU2のプレイが一年遅れなのは前作をプレイしたのがつい最近だから)。

本作はプレイした人の好むと好まざるに関わらずレビューの熱量が非常に高い作品です。内容は嫌いでも単に悪口雑言を並べて終わりではなく、「如何にTLOU2が自分にとって受け入れ難いのか」が大変な熱量を持って書かれていることが多いです。

個人的に本作のテーマは「血(と書いて家族と読む)」だと受け止めました。
妊婦が2人出るゲームも珍しいというのもありますが、いくつも擬似家族が出てくるのは意図した物でしょう。
本作はまずジョエルとエリーという前作における主人公コンビの家族観が破綻して回復する物語になっていると思いました。
前作がジョエルとエリーが他人同士から親子同然の絆を描く旅の道連れとその結末を突きつける物語だとしたら、本作はまさにその結末から直接物語は始まります。

(ここからTLOU1、2の完全ネタバレ含みます)

人体に寄生する菌類が世界に蔓延るようになってしまった破滅した世界の有り様(TLOUはゾンビゲーでありポストアポカリプス物です)の責任をジョエルの選択でエリーは背負わされてしまいます。
しかも1のラストでジョエルは真実を話すと宣誓した上でエリーに嘘をついているのですが2の物語が始まる前にその嘘はばれてしまっています。
なので本作ではエリーはジョエルから距離を取った接し方を続けています。
ジョエルもまた娘同然に大切に思っているが仲間でもあり戦士でもあるエリーに対しジョエルなりに敬意と気を使って接している。
そしておそらくこれが駄目だったのだ。
この「他人と接する」ような互いの気の使い方が後々エリーに後悔の念をずっと抱かせ続けてしまう。
エリーにとってもジョエルはかけがえのない恩人であり仲間であり父親だったのだが、気持ちのすれ違ったままでジョエルと死別した事で実際には血の繋がっていない擬似親子の関係に疑問を持ってしまったのではないか。
なので復讐を遂げる事でエリーはジョエルと本当の親子だったのだと証明しようとした…のだと僕は思う。

本作の終盤で仇であるアビーの現在位置をジョエルの弟のトミーから聞かされた時、既に新しい幸せな家庭を築いていたエリーは一度は拒否するが何故か「家族を捨ててまで」再度敵討ちの旅に出る。

このシーンのトミーが秀逸で、
・以前の敵討ちの旅で怪我を負った後遺症でトミー自身は敵討ちにいけない
・TLOU1のジョエル、トミー兄弟はタイプの違う兄弟として描かれていたのが年月を重ねた本作ではジョエルそっくりな風貌になっていく
・なのでエリーからするとジョエルと血の繋がりのある、ジョエルそっくりな男から仇を取れ、と言われている状況にある
・そしてエリーにはジョエルとの血の繋がりがない
・ジョエルと自らの繋がりを証明するためエリーはやりたくもない、目的も見失った復讐ジャンキーとして思考停止の旅に出る

この場面のトミーがまあ鬼畜鬼畜。トミーにはジョエルとの血の繋がりが当然であるとの優位性をエリーに強要していることに自覚的でありつつ自覚していない。しかしこの当然のこととしての傲慢さこそが家族同士だとも言える。ジョエルがエリーに出来なかった家族である事の強要をトミーはエリーにしている。
ここでエリーはこれまでの復讐で傷付いた心が更に分裂してしまった。

戦いを拒否するアビーの(擬似)家族であるレブにナイフを突きつけ戦いを望む復讐ジャンキーエリーは操作(プレイ)していて大変辛かったのだけれども、そんなエリーが最終的な結論として中途半端に戦いを止めたのは「家族って他人同士から始まるものでもあるよね」って事にようやく気が付いたからでは無いだろうか?
出立前に復讐を止める「家族」のディーナともその息子のJJともエリーは血の繋がりはなかったけれどもそれでも自分にとって大切な家族だったじゃないか。
それをアビーとレブの他人同士から生まれた絆を見て血筋だけに拘る必要は無いとようやくエリーは憑き物が落ちたのではないだろうか。

これがThe Last of Us Part 2をプレイしてのとりあえずの感想です。
いやープレイ中は重いわ辛いわ楽しくないわで大変でしたが個人的にはトップクラスで好きなアドベンチャーゲームになりました。
本作はパート1である前作のプレイは必須だと思うので、シリーズとしての評価になります。
ただその1が好きな人程2が受け入れ難くなるのも必然なのでそこはもう絶対意見は割れるでしょう。

前作は2013年のPS3のゲームで、続編が出来るまでに時間がかかったことも影響しているでしょう(なので1をプレイしたのがつい最近の僕はそういう意味では時間経過の期待の膨らみとは無縁なのでこういう評価になりました)。

単にTLOUシリーズとしての評価だけでなく、ゲームとは何時まで何処までプレイヤーに奉仕するべきなのか?といった哲学も含み色々と考えさせられるゲームでした。
大多数の善良なプレーヤーにとって望まれていた続編は同じ味にちょっとトッピングした量の多いやつだと思うので…

最後に。
前作のラスト以降ジョエルはどうすれば良かったのか?というifを考えるとするならば昔気質の頑固親父なら変に理解者振らずに「お前はワシの娘じゃ!ゴタゴタ吐かしたら鉄拳制裁!」くらいグイグイ行けばまた違う選択もあったのかもなあ…とも思いますが、そもそも嘘をついた時点で取り返しがつかないような気もするし、その理解者ぶりや嘘を付くことそのものがジョエルの優しさ(そしてエゴ)なのでそれが出来れば苦労はないよ、なのかもしれません。 

救いのなさにこそある救いに価値があるというメッセージのゲームだと思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?