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映画狂時代

私が20代の頃の一番の娯楽は、映画だった。本当に狂ったように映画を観に行っていて、多いときで月5~6本は観ていた気がする。
1日3本観たときは、後半ほとんど話を覚えていなかった。いや寝ていたと言ったほうがいいかもしれない。

あの頃の映画に対する熱量は半端なかった。休みが自由に取れる職場にいたときは、まず映画サービスデイに休みを入れる、2番館などの短期上映の場合はその期間内で必ず休みを入れる。
などと、まず映画ありきで休日設定をしていたほど。

洋画邦画問わず、その時に観たいと思ったものはほとんど観に行ったかも。
ただややマニアック志向なので、ハリウッド物の大作はほとんど観ない。観ても誰か行きたいと言う人がいたときだけ。
主に単館上映のこじんまりとした作品を好んで観ていたので、行くのはほぼ一人。

観たい作品を選んで、映画館でどこに座るか悩み、チラシを好きなだけ貰ってワクワクしながら上映を待つ。観終わった後、その映画の余韻に浸りながら帰路に着き、その後パンフレットを眺めつつまた作品を思い返し"あ~良かったなあ"と一人ほくそ笑んで一日を終える。
映画を観るそんな一連の動作がとても楽しい。
感想なんて言い合わない。自分のなかで噛みしめて心の内へしまい込んで、でもたま~に思い出してはまた映画館で観たいなぁと思ったりして。

この映画を観る連鎖反応はほとんどチラシが情報源。貰ってきたチラシを眺めては、次は何を見ようと考えるのも楽しい作業。ほとんど自分の勘で作品を選んできたけど、"あれは外れだったな"という作品はあまり無かった気がする。かなりいいチョイス!

なのにあれだけ好きだった映画も、興味が違う方へ移ってからはほとんど観なくなってしまった。
どんな作品が上映されているのかは一応チェックはするけれど、足を運ぶまでは至らない。そんな自分の変わりように、寂しいなと思ったりもするのだけど…。
観たい!と思える作品が無いのか、自分の心持ちが映画にいかないのか。今の私にはどちらも当てはまってしまう。

心の奥底に映画愛はずっと宿っているから、気持ちがそちらへ向いていけばまた映画館へ足を運ぶはず。
それが今。あの頃の気持ちがむくむくと沸いてきているのです、嬉しいことに。今年に入って二本映画を観てから、もう既に次何を見ようかと作品を選び中。またチラシを眺める日々が訪れました。

夢中になって観ていた頃とは大分映画館のシステムも変わり、好きだった単館上映の映画館も無くなってきてしまったけれど、やっぱり映画館で観るという行為はいいなぁとしみじみ思う。
暗くなってパッと映画が始まる瞬間、自分の気持ちがぐっとスクリーンに引き込まれ、あとはそのまま映画の世界へ。
幸せな一時。
なんでこんな楽しい時を何年も無下にしていたのだろう。あの頃気になっていた作品をスクリーンで観ることなんてもう出来ないのに。あ~観ておけば良かったな。