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黒田隼之介が家に置いてきたsumikaの楽曲全解説

おはようございます。

言葉と心が繋ぐものは心の言葉なんですって。

鶏が先か卵が先かみたいな話だけど、この言葉はとあるバンドがとある楽曲で言っていたこと。

だとしたら、『言葉にできない』という言葉を残す。

sumikaのギタリスト、黒田隼之介が急逝した。

本当に質の悪い冗談だと思っていた。
天下のライン様もフェイクニュースに乗っかるんすねって思っていた。
「も~不謹慎だぞw」とか言いたかった。

でもいつまで経ってもドッキリの看板は出てこない。
オフショットで役者の頬が緩みちょけ出すこともない。
嘘じゃなかった。
天下のライン様はやはり天下だった。

曲聴けない日が続いた。
最後の曲『Lost Found.』なんてこれの伏線にしか思えない気がした。
なんならライブ映像は未だに見れない。
特典のバンジージャンプとかも見れない。
絶対明るくてふざけてる映像だけど、それがゆえに泣いてしまうだろう。

あれから約1か月。
sumika自体も活動を始めシングルリリースも決定している。
自分の気持ちの整理もついた。
そして明日は夢であったは浜スタ公演。

私は常々sumikaは黒田作の曲が至高と言い続けていた。
彼の曲はジャンルレスにもかかわらず聴いて「あ、いいなこれ」って思ってクレジットを見たら大体彼作曲の事が多かった。

彼に対する思いはもちろん強いがそれ以上に彼の曲への思いはそれを超える。
哀悼する思いもあるがそれを私が文に起こすのは違う気がする。
それより彼の作った曲の凄さを解説したり、黒田隼之介がsumikaにとって音楽界にとってどれだけ価値のある存在だったかを語る方があってるような気がした。

普段はエゴで文を書いているが今回ばかりは少しだけ、ほんの少しだけでもいいからより多数に届いてほしいという思いが確かにある。

共感してくれたりなんかいいなって思ってもらえたらこれほどうれしいことはありません。
その思いは私ではなく彼とsumikaへと。


リグレット(『I co Y』収録)

解説しょっぱなから『君の音を聴かせてよ』はダメだろ。泣くわ。
ライブの時は割とアコースティックなアレンジが多いが原曲は割とガジャってて強めのギターソロもあり。
歌詞の失恋具合でヘビーな曲のイメージがあるが実際は青春系の歌詞も行けそうなぐらい爽やかロック。
メロはメジャーコードだがサビでメジャーセブンスを用いてほんのり憂い成分を足しているとこがミソ。

rem.(『Vital Aparitment.』収録)

爽やかなのはイントロのみで後はsumika屈指の強振ロック。
歌詞も相変わらずのド失恋ソング。しかもしっかり自分に非があるタイプの。片岡めー悪い男よのお。
おそらくタイトルのremは終わった関係にもかかわらずまだ何とかなるって思ってる自分の浅はかさを浅い睡眠である「レム睡眠」とかけているんだろう。んで実際は終わっているから末尾にドットがついているんかな。
バイタルってキーボード小川が加入後の初アルバムだけどなぜかロック感が増しているという不思議なアルバム。
ミニアルバムだと一番好きかな。

明日晴れるさ(『アンサーパレード』収録)

相当に音数が絞られたミディアムバラード。
個人的には『雨天決行』の前日譚だと思っている。
これもギターソロが激熱で胸を打つ。
メロが前半で終わり後でサビが全部来る変わった構成だけど違和感なく聴けるように繰り返すサビの節回しを少しずつ変えている部分がニクいっすね。
何かに頑張ってる人、何かに頑張れない人はこの曲を聴いてほしい。
これ聴いてダメだったら雨天決行で補完してくれるから実質無敵。

坂道、白を告げて(『SALLY e.p』収録)

あっけらかんロックだけどなぜがキーボードがシンセみたいにミョンミョンしている。
ストーリー性のある歌詞は瑞々しさもありどこか切ない。
数字の言葉遊びもあり彼の曲に片岡の歌詞で命を吹き込む。
「坂道、白を告げて」この意味がわかればよりこの曲が好きになるだろう。

春風(『Dress Farm #3』『Familia』収録)

声を大にして言いますけど過小評価されすぎこの曲。
ゴリゴリにロックだし歌詞も泣ける。
何より自分の性癖に刺さるサビでのテンポダウンが至高。
スピッツの『醒めない』、ラッドの『セツナレンサ』など、盛り上がるべきところで逆に盛り下がる展開がだいすこ。
なんかドラマティックじゃないですか?
そうじゃないですか?

Someday(『Familia』収録)

聴いたらコーヒー屋直行のこの曲。
2分半の楽曲で小曲と言って差し支えないけどなーんかこの気怠くて盛り上がりに欠ける感じが歌詞と相まって癖になり、妻はあんま好きじゃないと言っときながらたまに「さーむでー」と歌っている。
すっかり癖になってる。
ウッドベースと裏拍に少し入るギターがえちえち。

下弦の月(『Fiction e.p』収録)

これはもうサビが最高。
黒田曲の癖であるディミニッシュのお手本のような楽曲。
ディミニッシュを俗な言い方をすれば「不協和音」。それを一部だけ入れてより楽曲をドラマティックにするコードの使い方が彼は上手い。
これも歌詞との親和性が最高でもっとライブでやってほしいなと願っている楽曲。

ホワイトマーチ(『Chime』収録)

JR SKISKI楽曲。
個人の主観かもしれないがバスドラのBPMと心音のBPMが一致してドキドキする。
もしその辺狙ってるんならすげえと思う。
かわいい曲だけど地味にキー高い。

願い(3rdシングル/『AMUSIC』収録)

彼作曲の楽曲で一番のスマッシュヒット
これ正直あんま好きじゃなかったんだけどライブ化けがヤバい。
歌い出しがサビの途中ってすごいな。
これが売れた理由って恋愛詩ってのもあると思うんだけど巧みに挨拶と喜怒哀楽を歌詞に引用している部分かなと思った。
「おはよう」「おやすみ」だけでなく「うれしい」「たのしい」「さびしい」「かなしい」がしっかり台詞として明記されている。
その卑近的な部分の共感がデカかったんだと思います。

ハイヤーグラウンド(3rdシングル/『AMUSIC』収録)

タイトルからして片岡絶対ビートルズ好きだろ。
イントロのシンセのコード感が不安定過ぎて狂いそうになる。
疾走感あるヒロアカにぴったりの曲でsumika最高レベルのCメロが聴ける。

憧憬(Dress farm 2020)

彼のギター好きならこの曲は必聴。
音数の絞られたロッカバラードだけど彼のギターソロが3通り聴ける
特に2番メロ後のギターソロはsumikaの楽曲でもトップレベルに好き。いわゆる泣きのギターソロ。
歌詞も最近の心情とリンクしてマジで好き。
しっかしマジでギター上手いなあ。
旨いなあ。

白昼夢(『AMUSIC』収録)

先に言います。
sumikaの全楽曲で一番好きな曲です。
2021年にリリースされた曲だけれどもiTunes再生回数他の楽曲は大体10回ぐらいなんだけどこの曲だけ123回再生してましたね。
まずsumikaがシューゲイザーをやるとは思わなかった。
そして内省的な歌詞にダークな音像。sumikaらしくないといえばそうだけど本場のシューゲバンドにも楽曲クオリティは引けを取らないと思う。
しかもサビが3回あるんだけどすべてメロディが違う。GLAYのHOWEVERみたい。
総合的に判断して一番好きだし一番聴いた。食らった。
まだライブでやっていない曲。ボーカルとしてもバカみたいにキー高いし仕方ないけどもう彼のギターで聴くことは叶わなくなってしまった。

アルル(『AMUSIC』収録)

あんなドシューゲの後にこんな優しい楽曲来たら三半規管狂う。
しかも作曲者同じという。彼の振り幅の広さがうかがえる。
彼の曲は振り幅大きいけど共通して一抹の切なさがあると思う。
これも例にもれずにどこか切ない。


わすれもの(『AMUSIC』収録)

これはボーカルがキーボードの小川貴之。
彼がメインボーカルをとる楽曲はこれが唯一(『enn.』『一閃』は片岡との掛け合い)。
これは中途加入の小川が歌うべき歌詞のような気がする。
そう思い片岡も彼に託したんだろうな。

New World(『For.』収録)

これ聴いたときガッツポーズしました。
sumikaがスタジアムロックをやったと。
私こういう曲が大好物なもんで、まさかこういうテイストの曲をsumikaで聴け尚且つ彼作曲というのは喝采モンでしょう。
歌詞も挑発的でロックしているし2番メロはMop of Headのデジタル感もありオーセンティックな部分と新しい部分が融合している。
これは是非とも浜スタででっけえ音響かせてほしい。

リタルダンド(『For.』収録)

8月朝、天気は曇り予報だけど今のところ晴れ。気温は34度の猛暑日手前の真夏日。珍しい平日休みでエアコン効いた部屋の換気もかねて窓を開けて微睡んでいたら普通に暑くなってきて、でも窓側まで行く気力もなくて仕方なく扇風機を強にして何とか暑さをしのいでいるとおなかがすいてきたけどあんまがっつりしたのは気分じゃなくて「まあ寝てれば空腹何とかなるっしょ」というマインドで睡眠導入剤としてiTunesに手が伸びそうな曲(実話)。


透明(『For.』収録)

この曲はファンクラブ限定ツアーで最後に披露された楽曲で、作詞にも黒田が関わっている楽曲。
サビの「愛している」のリフレインが印象的なミドルバラード。
ストレートが故にごまかしがきかない彼ららしい愛情表現に富んだ楽曲と言えるでしょう。

Lost Found.(『For.』収録)

彼の残した最後の楽曲。
「死と再生」をテーマにした楽曲で、6分越えの大作。
オアシスのライブ見て着想を得たらしいが、まさしく『Don't look back in anger』のようなスタジアムでの合唱が目に浮かぶような楽曲である。
New WorldではじまりLost Found.で終わる『For.』というアルバム。
アメリカンなスタジアムロックで始まりUKのスタジアムロックで終わる
こんな振り幅の大きい作曲家はそうそういない。
この曲がレクイエムになってしまったのかもしれないが、ここから始めようという強い意志がある悲しくも力強い楽曲である。


Starting Over

最初、この記事のタイトルは『黒田隼之介が遺したsumikaの楽曲全解説』だった。
けれど『遺した』というニュアンスで過剰に悲しむことも過剰に美化することもなんか違うなと思った。
彼の死に関わらず彼の楽曲は素晴らしい。

明日は横浜スタジアム公演。
彼の死は大きいものだったけど、それでも活動を続けるという美しい選択をした彼らの公演が大成功するように遠方から彼らを応援しています。
きっと彼も、遠方より応援しているでしょう。

それでは。





追記 2023.5.15

ロックの高揚感をベースにドラマチックなストリングス、そこに合唱が入り最後は全部込み込みの大サビのカタルシス、、、3分半にsumikaを詰め込んで尚且つ新鮮さもある。

確信しました。
これからも彼ら4人は無敵です。


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