見出し画像

激安の殿堂ドン・キホーテを久しぶりに覗いてみたら、考えが変わった件。

 地元にあるドン・キホーテが移転オープンするそうで、一時閉店セールを開催していた。なら在庫処分で安くなるのでは? と少しだけ覗いてみた。何年ぶりだろうか。百貨店の居抜きとして開店したのがもう20年近く前で、その時には足を運んだ。確か、何も買わなかったと思う。それからの訪問回数をカウントしたら、下手すれば両手でも余る程度だろう。

 そもそもドン・キホーテにはほとんど足を運んでいない。他のスーパーやホムセン、家電量販店やドラッグストアが軒を連ねる中で、ドンキで買う理由が見当たらなかったのだ。
 そしてドンキといえば「圧縮陳列」という売り場スタイルが特徴的だったが、あれもそこまでに好きにはなれなかった。売り場の画は面白いが、逆に情報量が多いと感じてしまい、あの中からお目当てのモノを探す方が面倒だ、と思ったのだろう。

 それでも「セール」という言葉に惹かれて覗きに行った。

 これは居抜きとなった百貨店ともお別れをするためである。昭和末期に作られ、街の中心部にあるデパートとして長らく地元でも有名なショッピングの場となっていた。自分もしょっちゅう足を運んでいたが、郊外に大型店舗が出来るに連れて客足は鈍った。ついにはイオンが進出した結果とどめを刺された。自分も20代になって車を使うようになってからはすっかりご無沙汰だったので、そりゃ潰れるわ、と思わずにはいられなかった。

 ドンキはそこへひょいと入ってきた。百貨店が店を畳み、中心部なのにスーパーの空白地帯となったところへ参入したのだから、その周辺に住む方にとっては大切な店だったろうし、何より「ドンキ」という癖の強い店なので、それなりにお客は入り続けていたようである。
 しかし施設自体に寿命が来ていた。築40年以上という設備はさすがに古さを感じた。屋内駐車場に入った途端「ここは昭和か?」と思えるくらいに何も変わってなかったのを覚えている。とうとうテナント元も改装よりは解体の道を選んだようだ。跡地は自治体が買い取り、大学のキャンパス等を含めた複合施設になるらしい。

 そうなる前にドンキも含めて見届けておこうか、と中へ入った。
 屋内駐車場は相変わらずの昭和感だった。しかしエレベーターを降りていざ売り場に入ると、かつての印象とは大分変わっていた。

 思っていた以上に「スーパーマーケット」であり「ホムセン」であり「家電量販店」でもあったのだ。
 とりわけスーパーとしての要素が充実していて、生鮮食料品も普通に扱っている。それ以外の食料関係も品揃えは豊富だ。他のスーパーと違うのは、それがドンキ独自の圧縮陳列だということくらい。その中から、どんなのが売ってるんだ? どれだけ安いんだ? と探すのはなかなか楽しい。ペヤングはどうかな、と思っていたらあの「極激辛」が並んでいた。まだあったんかい! ペヤング好きだけどさすがにこれは手を出せない。
 ホムセンも家電もそれは同じだった。ドンキのオリジナルブランド品もズラッと並んでいた。登場時に話題を呼んだチューナーレスTVどころか、ドンキ仕様のトゥルースリーパーまでもが。後者の価格は税込みでも1万円ちょい。同様のニトリ製品より少し安いか。一瞬迷うくらいの魅力はあったように思える。 
 
 それからも店内を巡回してみると、なるほど確かに面白い。ドンキ自ら「宝探し」と称する理由も分かった。この圧縮陳列も、とにかくジャンルを問わず山程揃えた、と目に見えて分かる仕様なのだ。至る所に貼られたポップも、このギュウギュウに詰め込んだ店内でお気に入りのやつを探してちょうだいな、と言わんばかり。
 それらを眺めていたら、あっという間に1時間近く滞在していた。そういうことか、と悟った。一時閉店するドンキで、そのの面白さに今更気付かされるとは思わなかった。

 結局、その店では何も買わなかったが、ドンキに対する見方は変わった。そりゃ人気も出るよ、と。他の街にあるドンキでの入店渋滞を目撃した際は「いくら安いからってここで時間潰れちゃねぇ」と冷ややかに見てたが、今となっては「そりゃ入りたいよな、ああいう楽しい雰囲気の店なら」と思えるように。なので移転先のドンキも、おそらく賑わうことだろう。

 ただその移転先というのが、少し前に書いたイオンに通じる道のすぐそばなのが気になる。絶対混むに決まってるだろ、こんなの! しばらくあの道は避けた方がよさそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?