「ラーマーヤナ ラーマ王子伝説」が横浜シネマノヴェチェントに還ってきた!
「ラーマーヤナ ラーマ王子伝説」が「旗艦・基館」に帰還!
浅野哲哉が、本作に宿る悠久の過去と未来を語る!
4年ぶりに故郷に帰ってきた気分です。
振り返れば、2018年9月1日、日印共作長編アニメーション映画「ラーマーヤナ ラーマ王子伝説」のフィルムによる初のロングラン上映の初日。わずか28席の小さな映画館「シネマノヴェチェント」を初めて訪れ、その何とも言えない温かい雰囲気の室内空間に魅了されました。
30年前の1992年に本作を完成させたにもかかわらず、本作の企画・製作プロデュースをされた故酒向雄豪氏宅に大切に保管されていた8巻のフィルムが、重厚なフィルム映写機を通して初めてスクリーンに映し出された時の感動が昨日のように思い出されます。
インドの自然が忠実に描かれた背景はまさに「もののけ姫」!小動物の可愛らしさは「トトロ」!戦闘シーンやモブシーンも迫力満点!数々の飛翔シーンは「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」を彷彿とさせる本作は、当時の日本の一流のアニメーター総勢450名が一枚一枚丹念に描きこんだ12万数千枚のセル画で構成されています。
あらゆる映画作品に精通したシネマノヴェチェントの支配人曰く「この作品には力がある。テンポ良く展開される第一級のアドベンチャー映画であり、手書きセル画時代の温もりが宿るジャパニメーション(日本製アニメーションの総称)の傑作!」と絶賛して下さいました。
古代インドの神話『ラーマーヤナ』の魅力を余すことなく表現した本作を鑑賞した後、本作に関わる様々なゲストを招いて、約1年間のロングラン上映中に合計10回の特別イベントが開催されました。僕がファシリテーターを務め、本作の知られざるメイキングストーリーを軸にゲストと共に語り尽くし、人気の「マサラ・ワーラー」による本格インド料理のケータリングを楽しみながらの懇親会も楽しかったです。
【横浜シネマノヴェチェント:トークイベント上映会の履歴】
第1回 2018年9月1日(土)
『インドを食べる』の浅野哲哉さんと『偶然の装丁家』の矢萩多聞さん
酒向雄豪氏と親しいインド仲間のお二人が、酒向氏との出会い、この映画が作られたそもそものきっかけなど、作品内容と製作者の酒向氏について語り、25周年後のリリース初日を大いに盛り上げました。
第2回 2018年9月24日(月)
浅野哲哉さんとマサラワーラーさんのインド料理食べさせられ放題。
マサラワーラー(武田尋善・画家と鹿島信治・ミュージシャン)
インドを旅した3名の芸術家たちの、旅、探検、映画、音楽、食との出会い。
マサラワーラーさんの登場で、映画館がそのままインド世界にトリップ~。
バナナの葉の上に、次々とカラフルな南インド料理がふるまわれ、参加者の皆さま大満足。
第3回 2018年11月3日(土)
浅野哲哉さんと制作プロデューサー、アニメ界の重鎮、石黒 育(めぐむ)さん。
マサラワーラーさん
一休さんの父ともいわれる動画工房の石黒 育さんは日本アニメ業界で活躍されてきたアニメーター、動画工房の初代社長。酒向氏の企画を完成させるという大変な使命を貫徹。アニメ制作現場のお話が展開されました。
そして再び、大好評のマサラワーラーさんのインド料理食べさせられ放題。
第4回 2018年12月9日(日)
日印交流シリーズ第1弾:浅野哲哉さんとディスカバーインディアクラブ副会長の金子延康さん。
マサラワーラーさん
横浜市でインドとの交流を担い、さらにディスカバーインディアを仲間と立ち上げインドとの交流をライフワークとして精力的に活動している金子さんが登壇。
実は「ラーマ―ヤナ」は1997年、横浜ランドマークタワーのホールで金子ささんにより上映されました!金子さんがこだわって築いてきたインドと日本の交流、つながりインフラ構築のお話が展開されました。マサラワーラーさんのミールスも大盛況でした
第5回 2019年2月4日(土)
シネマノヴェチェントの寄席千九百亭(桃月庵白酒師匠)
(桃月庵白酒師匠、石黒育さん、シネマノヴェチェント館長箕輪さんの対談、マサラワーラーさんのミールス)
落語と映画と対談とマサラワーラーさんのミールスと贅沢三昧のコラボイベント。落語とアニメとインド料理とそれぞれ個性の強いエレメントが見事に融和された大盛況なイベント、お見事でした。
第6回 2019年3月30日(土)
日印交流シリーズ第2弾:浅野哲哉さんと平本謙一郎さんの対談。
東日本大震災で宮城県女川町で活動した「インド国家災害対応部隊NDRF」の通訳として日印の橋渡しをされた平本謙一郎さんから、これまで語られたことのないインド隊による救援活動の体験談をお話いただきました。
第7回 2019年4月29日(月)平成最後のイベント上映
浅野哲哉さん、アニメーションの制作統括を担った石黒育さんをゲストにお迎えし、まだまだ語りつくせない「ラーマーヤナ」製作秘話、日本のアニメーションについて、そして今後の展望についてのお話を伺います。
映画上映とトークショーの後は、大好評のマサラワーラーさんの南インド料理シリーズ。今回は新たにインドのごちそうたきごみご飯、ビリヤニがふるまわれます。
第8回 2019年6月2日(日)特別イベント
映画上映と講演「インド哲学から観たラーマーヤナ」
ご案内:浅野哲哉さん 講演:ムニンドラ・K・パンダ先生
この度は、新たな試みとして『ラーマーヤナ』をより深く理解するために、インド哲学の教師ムニンドラ・パンダ先生をお迎えして解説していただくことになりました。先生の定評あるわかりやすい解説で、神話への理解を飛躍的に深めることができ、その深淵なメッセージは、きっとよりよい生き方のヒントを与えて下さることでしょう。
太古から語り継がれてきた「マハーバーラタ」と「ラーマーヤナ」はインド人の心の糧と言われています。また、インドのみならず東南アジアでも彫刻、美術、舞踊のテーマとして語り継がれています。さて、この神話は一体何を説いてきたのでしょうか。なぜインドの人々にとってこれほどまでに重要なのでしょうか。この真髄にふれる解説を先生は、登場人物の名前の意味から解き明かしてゆきます。
第9回 8月18日(日)特別イベント
映画上映と講演「インド哲学から観たラーマーヤナ第2弾」
6月は新たな試みとしてインド哲学の教師ムニンドラ・パンダ先生をお迎えして「ラーマーヤナ」をインド哲学の観点から解説いただきました。大好評のため、続編シリーズとして8月18日もパンダ先生に解説いただきます。
ご案内:浅野哲哉さん 講演:ムニンドラ・K・パンダ先生
インド料理ユニット:マサラワーラーによる南インド料理
ムニンドラ・K・パンダ先生
インド出身。インド哲学を30年以上学び、インド、日本、欧州各国にて講演を行う。 現在は、東京にて会社を営みながら、インド哲学を教え、 インド関連行事や儀礼祝祭の運営に携わりアドバイスを行っている。
マサラワーラー
インド料理を出張提供している、知る人ぞ知る芸術家ユニット。
画家の武田尋善(たけだひろよし)さんとシタールなどを演奏するミュージシャンの鹿島信治(かしましんじ)さんによる本格インド料理は定評あり!
2019年9月15日の夜、スニール・ダットの長崎・広島平和行進のすべてのお膳立てをした法華仏教国際交流協会の石井英雄上人、澁谷幸道上人、安藤正道上人、中島大成上人と品川のホテルで会食した際、当時写真撮影を担当していた中島上人から、たくさんの写真をお借りしました。
第10回 2019年9月22日(日)最終回イベント
映画上映と講演「スニール・ダット氏の長崎・広島平和行進」
浅野哲哉さん 林明さん(弘前大学准教授)
製作関係者との対談: アニメ統括 石黒育さん他
上映後は、ゲストを囲んで隣接のレストランでの懇親会
2018年9月からのシネマノヴェチェントでの上映もいよいよ最終回。
最後のイベントは、製作発起人・顧問のスニール・ダット氏の平和行進特集です。インド映画界のスーパースター俳優、社会活動家、政治家であるスニール・ダット氏(インド映画「SANJU」の主人公の父)と、日本の『ラーマーヤナ』製作グループが共に行ったもう一つの活動が1988年の「長崎・広島平和行進」です。
その行進を共に実現したのが、日本山妙法寺をはじめ日蓮宗のお寺、僧侶、賛同者達でした。このご縁にも、インドと日本の精神的な出会いがありました。藤井日達上人とマハートマ・ガンディーの出会いです。「殺生するなかれ」という仏の教えとガンディーの非暴力は、実は同じことを目指しています。スニール・ダット氏の平和行進はこの二人の理想を体現したものともいえるでしょう。この分野に詳しく、また藤井日達上人が創設した日印サルボダヤ交友会の理事でもある弘前大学准教授の林明先生をお招きしてお話を伺います。最終回のため、製作関係者(アニメ制作統括の石黒育さん他)にもご参加いただきます。
2019年9月30日 ついについに最終上映!
今回2022年10月1日ご予約は、こちらへ
監督ラーム・モハン氏が逝去
ところが、2019年9月30日の最終上映で一段落した直後の10 月11日に、本作のインド側の監督ラーム・モハン氏が逝去されました。
「インド・アニメーションの父」と讃えられ、1994年にインドの国民栄誉賞パドマ・シュリー賞を受賞されたラーム・モハン氏は「この作品はインドのアニメ界に衝撃的な影響を与えました。私はもっと多くの日本人にこの作品の重要性を知ってほしいのです。インドの神話とボリウッドがアニメ技術の優れた日本と共に仕上げた奇跡のような出来事がこの美しい作品の存在なのです」と語り、シネマノヴェチェントでの上映のキッカケともなりました。
明けて2020年、新型コロナ感染のパンデミックが忍び寄る頃、故ラーム・モハン監督への追悼も込めて、本作の日印協賛上映会を開催。
日本では1月10日に東京外国語大学の大ホールで、インドではインド工科大学チェンナイ校を皮切りにインド各地でDVDビデオ上映されました。
2020年1月10日(金)10 Jan(Fri) 2020 18:00
東京外国語大学 アゴラ・グローバル プロメテウス・ホール
2020年1月12日(日)IIT(インド工科大学)マドラス校・学園祭「Saarang」の「Anime Fest」アニメ祭にて上映(チェンナイ)
2月11日にはムンバイで「ラームモハン追悼上映会」が開かれ、本作の制作統括をされた伝説のアニメーター石黒 育氏と製作プロデューサーの吉居憲治氏、さらに本作のコーディネーターを務めたネール大学教授のプレム・モトワニ氏も参列しました。
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】
石黒氏はその後も約20日間に及ぶインド講演旅行を行ないました。新型コロナ惨禍を間一髪で免れて、無事に講演旅行を完遂できたことは、ラーマ神のご加護に他なりません。(以下、フェイスブックより抜粋)
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】全日程
Feb. 12th : by/at Whistling Woods International in association with Studio Ekonte (Mumbai)
Feb. 13th : by Friends Of All at Alliance Française d'Ahmedabad (Ahmedabad)
Feb. 13th : by Friends Of All at IIT Gandhinagar (Gandhinagar)
Feb. 14th : by Friends Of All at Madana-Gadh, Palanpur Taluka, Banaskantha District, Gujarat
Feb. 15th : by/at Daiichi Japanese Language Solutions (Nagpur)
Feb. 16th : by/at Coscon Nagpur 2020 (Nagpur)
Feb. 17th : by/at NID (National Institute of Design), Bengaluru
Feb. 17th : by Animaniax at IISc (The Indian Institute of Science), Bengaluru
Feb. 18th : by/at Srishti Institute of Art, Design & Technology (Bengaluru)
Feb. 18th : by Pop Circuit at Kuuraku Japanese restaurant (Chennai)
Feb. 26th : by Media & Entertainment Skills Council (MESC) at The Japan Foundation, New Delhi (Delhi)
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】@Nagpur 2020年2月16日
2月16日にナグプールで開催された石黒氏のトークセッションの様子です。
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】@Bengaluru
2月17日、南インド・カルナータカ州都=ベンガルール(バンガロール)のNID Bengaluru:デザイン系国立最高学府(芸大のような感じ)のベンガルール校での講演の様子です。
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】@Chennai
2月18日夜にチェンナイで熱く語る石黒氏の様子です。
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】@Delhi
いよいよ2月26日!デリーで石黒氏の最終特別イベントが開催されます!
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】@Varanasi 2020年2月
『ラーマーヤナ/ラーマ王子伝説』の制作デスクを務め、現在上映実行委員会の大御所。そしてあの名作アニメ『一休さん』の総作画監督を務めた石黒さん!
超ハードスケジュールをこなして、南インド・チェンナイから北インドの聖地ヴァラナシで数日間の旅を楽しんだようです。
数点の写真(現地からご本人が送信)をこちらでシェアさせて頂きますね!ヴァラナシの雰囲気が伝わってきます😍
ご本人から送られてきた一休宗純の歌!
『有漏路(うろじ)より無漏路(むろじ)へ帰る一休み 雨ふらばふれ 風ふかば吹け』
http://jiun-zen.blogspot.com/2017/08/blog-post_5.html
संकोच की दुनिया से
समझ की दुनिया को पाना है तो
आत्मज्ञान के लिए थोड़ा आराम करो
बारिश होती है, तो होने दो
हवा चलती है, तो चलने दो
(翻訳:川根 友さん🥰🥰🥰)
友さん、速攻の翻訳をありがとうございます!!
【ラーマに導かれて:石黒 育・初インド紀行】@Delhi 2020年2月28日
2月26日、14:00 トークイベント by Media & Entertainment Skills Council (MESC) 国際交流基金ニューデリー日本文化センター
聖地ヴァラナシでしばしの充電を終えた石黒さんは、デリーに飛び、今回最後のイベントに臨みました。
石黒氏曰く「昨日デリーの国際交流基金内ホールで今回締めくくりの講演会、サールナートの一休さん」・・🥰
本作の恩師モトワニ氏が日本政府から旭日中綬章を受賞!
そして、待望のデジタル化が実現!
世界中がロックダウンや自粛の嵐に見舞われ続けた2020年11月3日、本作のコーディネーターを長年務められたニューデリーのジャワハルラル・ネール大学教授のプレム・モトワニ氏が、日本とインドの学術交流と相互理解の促進に貢献したことを受けて、日本政府から旭日中綬章を受賞されました。
実はその直後の11月18日に、本作の4Kデジタル・リマスター版完成記念試写会が限られた関係者を招いて開催されました。コロナ禍の最中で、エッセンシャルワーカーの僕は、残念ながら参加できませんでした。
ともあれ、ついに念願のデジタル化が実現したのです!
2022年、コロナ惨禍が続く中、次々と上映会が開催!
しかし、コロナ惨禍がその後も続き、その事実を知る人は極めて少ないまま一年以上が過ぎ去り、公の場でお披露目されたのは2022年2月4日、東京・インド大使館VCC講堂での上映会(ストリーミング配信)でした。
Special Screening at Embassy of India, Tokyo for the anime film Ramayana on Feb. 4th 2022
さらに2月14日から2週間にわたってインドで開催されたオンラインフェスティバルや、3月4日から3日間、デリーで開催されたリアルな日本映画祭(国際交流基金主催)では、本作が映えあるクロージングフィルムとして選ばれ、5月31日にはムンバイ国際映画祭(MIFF)にて上映されました。
日本映画祭(国際交流基金主催)トレーラー
Ramayana 4K Digital Remaster in cinema | Audience Impressions at Japan Film Festival India 2022
故ラーム・モハン監督夫人のスピーチ:Ms. Sheila Rao's speech for "Ramayana: The Legend of Prince Rama" at MIFF 2022
ユニークな国内イベントとしては「躍動するラーマーヤナの世界」(主催・企画:まちかど俱楽部)と題してインド舞踊や伝統音楽と共に東京、那覇、京都、北九州で上映。現在進行中です!!
詳細はこちらへ
https://www.akiraio.com/news
オームラウト監督による『ラーマーヤナ』のスペクタル実写映画「Adipurush」
そんな折、元来のフィルム上映とイベントを遂行するために、本作の「旗艦・基館」である横浜シネマノヴェチェントに還ってきたのです。
今年は、インド独立75周年・日印外交関係樹立70周年です。インドでは10月頃がお祭りのピークを迎え『ラーマーヤナ』が最も注目されるシーズンが始まります。来年1月には、青年の頃本作を観てインスパイアされたオームラウト監督による『ラーマーヤナ』のスペクタル実写映画「Adipurush」が封切りされる予定です。
本作「ラーマーヤナ ラーマ王子伝説」は、故ラーム・モハン監督が「奇跡のような出来事がこの美しい作品の存在」と評したように、黎明期のはるか1980年代から日印の様々な人物の出会いと事象を、まるでガンガの悠久の流れのごとく呑み込みながら、この世にあまたの「創造の発芽」を促しています。
それは、デジタル化された今もなお続いているのです。
10月1日、そんな本作に宿る悠久の過去と未来を語りたいと思います。
上映実行委員会 浅野哲哉 2022年9月10日(中秋の名月) 記
今回2022年10月1日ご予約は、こちらへ
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