最新戦法の事情【豪華版】(2019年6月・居飛車編)
どうも、あらきっぺです。
タイトルに記載している通り、プロ棋界の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。今回は相居飛車編です。
なお、前回の内容はこちらからどうぞ。
当記事の注意事項については、こちらをご覧くださいませ。
最新戦法の事情 居飛車編
(2019.5/1~5/31)
調査対象局は63局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。
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◆角換わり◆
13局出現。出現率は4月から37%→20%と大きく下がりました。原因はいくつか考えられ、その中の一つとして後手の作戦が充実していることが挙げられます。
後手の作戦で人気を誇っているのは、基本形に誘導する将棋と、[△9三歩・△3一玉型]に組む将棋です。前回は基本形の将棋を重点的に解説したので、今回は[△9三歩・△3一玉型]の将棋にフォーカスを当てます。(第1図)
2019.5.16~17 第77期名人戦七番勝負第4局 ▲豊島将之二冠VS△佐藤天彦名人戦から抜粋。
後手の作戦の趣旨は、9筋の位を取らせる代償に先攻することにあります。先手は平凡な駒組みをすると、後手の猛攻を浴びることになります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
そこで、豊島二冠は工夫した駒組みを展開します。第1図から▲3八金が珍しい一手。後手は自然に△4四歩▲5六銀△3一玉と陣形整備を進みますが、そこから▲4八金と手待ちしたのが面白い構想でした。(第2図)
4八には一手で移動できるところなので、先手は手損している計算になります。ですが、第2図では互いに駒組みが飽和状態になりつつあるので、プラスに作用する手が存在しない可能性があります。ならば、あえて手損するほうがより良い駒組みなのでは? と主張している訳ですね。
佐藤名人は堂々と△2二玉と上がりますが、この手は玉が戦場に近づくリスクを持っています。先手はそれを咎めるべく、▲4五歩で仕掛けを決行します。(途中図)
歩がぶつかったときは、取る手から考えるのがセオリーです。なので、本譜は△4五同歩と応じました。以下、▲同桂△4四銀▲4六歩△6五歩までは妥当な進行でしょう。部分的には定跡化された手順ですね。(第3図)
さて。話の肝は、この局面をどう評価するかです。先手は2筋の歩を交換する権利を手にしましたが、次に△6四角を打たれると打開する手段が難しく、千日手の懸念がチラつきます。
後手としては局面を膠着状態に出来そうな期待はありますが、「9筋の位を取らせる代償に先攻する」という、本来の趣旨とは違う方向にベクトルが向いているので、これで満足かと問われると、頷きにくいところもあるように感じます。
要するに、第3図は互いに理想を実現していないので、共に不満を抱えている局面だと考えられます。
また、この仕掛け方は、途中図の局面から後手に違う変化へと誘導される懸念もあります。(途中図)
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