最新戦法の事情 【居飛車編】(2021年2・3月合併号 豪華版)
どうも、あらきっぺです。
タイトルに記載している通り、相居飛車の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。
なお、当記事の注意事項については、こちらをご覧くださいませ。
前回の記事は、こちらからどうぞ。
最新戦法の事情 居飛車編
(2021.1/1~2/28)
調査対象局は176局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。
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◆角換わり◆
~先手が試行錯誤している~
42局出現。今回の期間では、一番多く指された戦法でした。
角換わりと言えば、腰掛け銀が最も王道の作戦ですね。なので、先手は基本形の将棋で良ければ、何も悩むことはありません。
ですが、現環境で基本形の将棋に持ち込むと、△6三銀と引かれたときに先手は良さを求めにくいという事情があります。
先手は打開に困るという訳ではないのですが、リードを奪うとなると容易ではありません。それゆえ、現環境ではこの形を先手が避けている傾向があるのです。詳しい理由につきましては、以下の記事をご覧くださいませ。
なので、このところの先手は基本形を目指していません。代わりに有力株として浮上しているのが、この指し方です。(第1図)
ご覧のように、まだ駒組みの形が定まっていない段階で▲1六歩を指すのが最近の流行りですね。従来では、こんなに早く端歩を突くことはありませんでした。これは一体どういう狙いなのでしょう?
後手は△1四歩と歩調を合わせるのが自然ですね。ただ端歩を突き合っただけに見えますが、この交換が入ると先手は、次のような局面を目指して動いてきます。(理想1)
[▲3八銀・▲4九金型]の構えで、颯爽と桂を跳んでいくのが優秀な作戦です。後手の駒組みが整う前に仕掛けることで、リードを奪ってしまおうという訳ですね。根底には、[△6二金・△8一飛型]に組ませないという趣意があります。
一見、こんな仕掛けでは攻めが細く頼りないようですが、端を攻める含みがあるので先手の仕掛けは成立しています。詳しい内容は、以下の記事をご参照ください。
また、他にはこういった作戦も有力な選択肢です。(理想2)
これは居玉で仕掛けているので、相当に突飛ですね。しかし、結論から述べると、この局面は後手が大いに危険です。
この仕掛けは、1筋の突き合いが入っていないと攻めが細いのですが、逆にこれが入っていると、先手の攻めはぐっと威力が上がります。将来、端から手を作る余地があることが大きいですね。
なお、有名どころの対局としては、第5期叡王戦七番勝負第8局 ▲豊島将之竜王VS△永瀬拓矢叡王が挙げられます。(棋譜はこちら)
その対局は、先手が仕掛けから圧倒するという内容でした。この作戦の優秀性を示す一局だったと言えるでしょう。
このように、後手は早い段階で1筋の突き合いが入ると、先手からの速攻を警戒しなければいけません。そこで、近頃では、より慎重に駒組みを進めるようになりました。(第2図)
先手が桂ポンの速攻策を見せてきた場合は、図のように△5二金型に構えるのが堅実な姿勢です。こうすれば中央が堅いので、▲4五桂と跳ばれても怖くありません。
ただ、この手を指すと、後手はスムーズに[△6二金・△8一飛型]には組めないですね。よって、先手はそれに満足して腰掛け銀の将棋に戻してきます。つまり、▲4七銀△7三桂▲2九飛という手順です。
前述したように、先手の作戦は[△6二金・△8一飛型]に組ませないことが趣旨でしたね。なので、△5二金型に組んでもらえれば既にミッションは達成しているのです。猪突猛進に攻め込むだけではないところが、この作戦の優秀たる所以です。(第3図)
さて、ここから後手は△6二金▲4八金△8一飛と組むのが自然です。こうすれば、一手損ながら理想形である[△6二金・△8一飛型]に組めますね。
なお、これは筆者が「一手パス待機策」と呼称している指し方です。これも後手にとっては有力な作戦の一つではあります。ただ、先手はあくまで基本形の将棋を嫌がっているのであり、「一手パス待機策」なら相手をしても構いません。なので、その進行なら先手に不満はないと言えるでしょう。
なので、この局面になると先手は作戦が成功していると考えられていたのですが、ここで後手は思わぬアイデアを捻り出します。△6二金▲4八金に、ふわっと△8四飛と浮くのが面白い工夫ですね。(第4図)
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