最新戦法の事情【豪華版】(2020年2月号・居飛車編)
どうも、あらきっぺです。
タイトルに記載している通り、プロ棋界の将棋から居飛車の最新戦法の事情を分析したいと思います。
なお、当記事の注意事項については、こちらをご覧くださいませ。
最新戦法の事情 居飛車編
(2020.1/1~1/31)
調査対象局は95局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。
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◆角換わり◆
25局出現。
相変わらず基本形から△5二玉→△4二玉と玉を往復する作戦が最多数でしたが、出現数は5局です。昨年の10月では3割の出現率だったので、減少傾向にありますね。これは、▲4五桂と跳ねて行く「攻撃志向型」が有力であることが要因の一つだと考えられます。
これで後手が潰れている訳では無いのですが、先手は一方的に攻める展開に持ち込めるので、実戦的な勝ちやすさを握っていることは確かです。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
そこで、後手は違う形で先手の攻めを待ち構える動きが出ています。今回は、「一手パス待機策」について掘り下げてみましょう。
一手パス待機策とは、キャプションで示したように、意図的に手損をして基本形から一手パスした状態で待機する指し方のことです。あえて敵に手を渡し、先手が余分に指した手をマイナスに作用させる狙いがあります。具体的な解説は、こちらの記事を参照してください。
さて。ここから先手は大まかに分けると、以下の三つの選択肢があります。
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(1)▲7九玉型で▲4五桂と跳ねる
(2)▲8八玉型で▲4五桂と跳ねる
(3)銀矢倉を作る
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まずは、(1)の▲7九玉△5二玉▲4五桂と仕掛ける手を見ていきましょう。(第1図)
2020.1.8 第33期竜王戦2組ランキング戦 ▲三枚堂達也七段VS△糸谷哲郎八戦から抜粋。
これは攻撃志向型と瓜二つの局面ですね。ただ、後手玉の位置が5二へ移動していることが違います。これがどのような影響を及ぼすのでしょうか。
攻撃志向型の場合、後手は△2二銀と引く手が定跡でした。ですが、この場合は後手玉の位置が5二なので、△4四銀と上がる手が成立します。その理由は後ほど明らかになるので、まずは実戦の進行を追いましょう。(第2図)
先手はもちろん▲2四歩△同歩▲同飛で2筋の歩を交換しますが、このとき△1三角と迎撃できるのが後手の自慢になります。(途中図)
先手は横歩を取ることはできますが、それを指すと簡単に飛車が捕まってしまいます。よって、ここは▲2九飛と撤退するよりありませんが、△4六角で歩を刈り取られると、4五の桂が不安定ですね。(第3図)
さて。実を言うと、この△1三角という反撃は、後手玉が4二のときでも指すことが出来る技ではありました。
しかし、△4二玉型だと△4五銀直▲同銀△同銀のあとに▲6三銀と放り込まれる攻め筋があるので、後手は旨味がないのです。けれども、この形ならその心配は無用ですね。つまり、通常形よりも守備力が高いので△1三角というカウンターが決行しやすいのです。
第3図は後手陣の隙が少なく、先手は損な条件で攻めさせられている印象を受けます。難しいところはありますが、先手は好きこのんで選ぶ変化ではないと言えるでしょう。
改めて、冒頭の局面に戻ります。
次に、▲7九玉△5二玉▲8八玉△4二玉▲6七銀で銀矢倉を作るプランの話をします。(第4図)
2020.1.19放映 第68回NHK杯3回戦第6局 ▲広瀬章人八段VS△稲葉陽八段戦から抜粋。
これは、手得を囲いの強化に活かすという趣旨ですね。しかし、銀を引くと攻撃力が落ちるという弊害があり、後手はそれを咎めに来ます。具体的には△5五銀で攻めを催促してくる手が厄介ですね。詳しくは、以下の記事を参照してください。
銀矢倉を作るプランは玉が堅いので魅力的ではあるのですが、現状、先手はこの△5五銀に手を焼いており、なかなか成果が上がっていないのが実情です。後手としては恐れるに足りない変化という印象ですね。
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