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背徳的な悦びに目覚めてしまった(1610文字)

トイレが壊れたのである。

修理を頼んだら、工事が必要と言われ、しかし来てもらえるまで数日掛かるようで、つまり僕と妻はトイレ難民になることが決定した。

昼間はよそのトイレを使用させていただけても、夜間はこれ、どうにもならない。

妻は、持病があり、ただでさえトイレが近いのである。

ということで、Amazonで購入した。

非常用トイレである。

お小水を固める凝固剤を別に買い、

さらに、朝までブツを保管すべく『におわない袋』を購入した。

非常用トイレは色が選べたので、モスグリーンとブラックのツートーンを選んだ。

すでに持っていたコンテナと同じ配色だったから。

左がコンテナ、右が非常用トイレ。

このコンテナ、蓋のふちに物差しとして使える刻みがついていたりして、つまり本来は道具箱かなんかに使うものかと思うのだけど、左右のクリップで蓋をしっかり固定し、中身を密封できるし、

このクリップでパチンと止まります。

丸洗いもできるので、中にビニールを設置し、生ゴミ等用のゴミ箱として使用していた。

3つ買っていて、縦に並べて重ねていた。カチッとスタッキングできる形状なのだ。移動も簡単。キッチンに配置しても実にかわいらしかった。

「こういうのをゴミ箱にしようって発想は主婦にはないよ」と妻。「ナイスアイディアだよ」

今回、これに活躍してもらうことにした。

『におわない袋』に入れたあと、さらにコンテナに入れて密封し、大切に(笑)保管することにしたのである。

空気清浄機の前にアルミシートを敷き、そこをトイレットスペースと定めた。

室内に誕生したトイレットスペース。

どうかな?

モスグリーンのコンテナと観葉植物に寄り添われた非常用トイレ。

「かわいい!」

と妻は一目惚れ。

――まずは僕が座ってみた。

「踏み台にできるほど頑丈」との触れ込み通り、薄い壁4つで立ち上がっている形状であるにも関わらず実にしっかりしている。

いいかもしれない、と思った。キャンプのときや、あるいは被災してしまったようなとき、このトイレは重宝する可能性が大である。

使い方は簡単。

お弁当箱みたいな平たさに畳まれていた本体を、パチンパチンとワンタッチ×4回でキューブに組み上げる。

上蓋を開けると便座になっている。

蓋を開けると便座が現れる。

いったん便座をパカッと外し、

中に付属の黒袋、ないしは市販の45リットル黒袋を広げて設置。

便座をまた被せると袋は固定される。

蓋を背中側に倒したまま用を足す。

足したら凝固剤を1袋振り掛ける。

蓋をして、しばし放っておく。

数十秒であら不思議、中のブツはゼリー状に固まっている。

便座を外し、袋を回収、口を縛る。

別に購入した『におわない袋』に入れてまた口を縛る。

コンテナに入れて、蓋をしっかりロックしたら完了。

実に簡単。

しかも、

「おっもしろーい!」

と喜ぶ妻。

『におわない袋』は本当ににおわない。

不衛生な行為をしている気がまったくしない。

こうなると、もはやエンターテイメントである。

いつにもましてお茶を飲み、いつにもまして用を足す妻。

「あたしもうフツーのトイレじゃ満足できないよ!」

出しやすいらしい(笑)

身長158センチの妻には、通常の便座位置が高く感じられるようなのだ。

トイレじゃない場所で出すアウトドア感覚が爽快なのかもしれない。

オーストラリアを縦走したときの毎朝の野××を思い出して、僕も、モスグリーンのキューブに出すのがだんだん楽しくなってきてしまった。

用を足すと、空気清浄機のにおい感知センサーがレッドになる。

蓋を閉めてもまだイエローが灯っている。

しかし『におわない袋』に入れると、おお、グリーンに復帰するではないか。

で、そのまんまずっとグリーン。

『におわない袋』おそるべし。

コンテナいらんな、とも思ったのだが絵的にかわいいので近くに配置しておく。

なんてグリーンなパラダイス!

観葉植物を眺めながら、トイレじゃない場所で用を足す。

半端ない開放感。

背徳的な悦びに目覚めてしまった。


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