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自身と対話する静寂なひととき「鈴木大拙館」

僕が大好きな谷口吉生の建築の一つが金沢にあります。兼六園のさらに奥にあるこの建物の名前は「鈴木大拙館」、禅を世界に広めた仏教哲学者・鈴木大拙さんの考えを知ることができる施設です。

建物をぐるっと回るとエントランスがあります

ZENの思想を世界に広めた偉大な仏教哲学者

恥ずかしながら僕は鈴木大拙さんのことは知らなかったのですが、禅という概念を言葉にして体系化したことが大きな偉業であったようです。博物館ではありますが、展示物はさほど多くなく、とてもシンプルでした。各々が自身で思考するよう、あえてこのような設計になっているらしいです。

頭を空っぽにできる「思慮空間」

この博物館の特徴として、極限までミニマルに磨きあげられた長い廊下で各部屋が繋がれています。神社の参道のように、徐々に俗世間から離れ、頭の中までシンプルになっていくようです。僕が行った時は他に誰もいなかったので、世界に僕しかいないかのような静けさがありました。

シンプルで薄暗い長廊下

外に出ると水面が広がっており、真ん中にポツンとある四角い建物。寺院の住職が生活する方丈をイメージしてつくられており、「思慮空間棟」と呼ばれています。平面も立面も正方形でできており、薄い屋根は全く存在感がなく浮遊しています。

展示室を出ると広がる水面と思慮空間棟
庇のある廊下が展示室と思慮空間棟を繋ぐ

この建物の中に畳が敷き込まれたベンチが並べられています。本来はここで坐禅を組むのですが、ここではベンチに座って外を眺めながら想いに耽ることができます。天井からは光が降り注ぎ、部屋の中に小宇宙がつくられています。

建物の中にあらわれる小宇宙
外を眺めていると頭が空っぽに
水面にはたまにボコボコ泡がでてくる

徹底的につくりこまれたディテール

建物はシンプルにつくるのが1番難しいと言われています。不要なものを徹底的に排除するための天井への設備埋込、内樋による屋根のミニマル化、漆喰とスチール枠の取り合い、絞り込まれた素材の選定、建物のひとつひとつに工夫がなされていて、見ていてとても楽しかったです。

天井の目地割に合わせた設備埋込
建具とスチール枠の綺麗な納まり
色々な素材が使われているが色が同じなので統一感がある


鈴木大拙館は兼六園から歩いていける距離にありますので少し足を伸ばしていくと散歩がてらとても楽しめます。歩くのは嫌という方は金沢市内にレンタサイクルが完備されているので、そちらを利用するのもおすすめです!


鈴木大拙館
石川県金沢市本多町3-4-20

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