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郷土紙という超ローカル新聞(連載10)仲良しクラブに加入?

【他紙記者との出会い】

連載9までは順調に毎日投稿していたのですが、第10回で2日休んでしまいました。
ネタはあるのですが、まとめていませんでした。
来週以降は週2本平均のペースになると思います。

郷土紙の取材、特に新人の場合は他紙の記者といっしょになる場面がけっこうあります。
行政機関や団体などの「発表もの」の取材に行かされることが多いからです。
まずはこういう場所に出かけて各市町の担当者らに顔を覚えてもらうことから始まります。
私もお店取材と予告原稿のタイピングを経てようやくそのような取材に出かけることになりました。

私のいる本郷日報(仮称)は、比較的小さな新聞社のため、編集局内に社会部とか経済部、政治部、運動部といった部署がありません。編集局長、デスクの下に「本郷市政担当(兼副編集局長)」とか「経済担当(同)」「警察・消防担当」「文化担当」「スポーツ担当」などというように分かれていました。担当といっても1人ではなく2~5人なので班というような概念ですね。
私の最初の担当は、事件事故のベタ記事や生活関連、エリア内の自治体や団体が主催するイベントの取材でした。新人の一般的なコースです。

全国紙や県紙のような普通の新聞社の場合、新人記者は3カ月から半年くらい研修を受けた後、地方の支局に配属されるようです。事件事故の取材、警察署や消防本部に話を聞く、いわゆる「サツ回り」から始めると聞いています。
記事の書き方、取材の基本を覚えるのにいちばん適している分野だからです。
今回は、この部分について深堀りしないので端折ります。


【とりあえず名刺交換】

編集局長に指示されたとおり、本郷市役所(仮称)の地下駐車場に車を停めて、市役所本庁舎隣のビルに向かいます。ビル入口の表示版には、市の外郭団体っぽい名前がずらりと並んでいました。めざすは4階の本郷市国際交流協会(仮称)。
ここで、某友好国の姉妹都市提携25周年記念セレモニーを取材することが今回のミッション。地方都市ならよくあるイベントの一つです。主催者から資料がもらえるし、取材対象もなんでもしゃべってくれるいちばん簡単な案件です。しいていえば、記事で名前と肩書に注意するくらいです。

受付で名刺を出すと、きょうの式次第と参加者リストなどの資料を渡され「中へどうぞ」と通されます。
「本郷日報」と書かれた腕章にカメラとノート、ペンという姿は、誰がみてもちょっと怪しい新聞記者だとわかります。あ、昭和の劇画雑誌に出てくるような記者っぽいハンティングキャップはかぶっていませんよ。
少しウロウロしていると、予想どおり主催者らしき人が近づいてきました。
まじめ一筋46年というような雰囲気の方とさっそく名刺交換。肩書が課長ということは、おそらくこのセレモニーの現場の責任者。勝手にそう推測して「本郷日報の新人記者様です」。
いやいやいや。
いくら私が図々しい人間でも自分に「様」はつけません。
振り返ってみれば、さほどていねいでない態度であった可能性はあります。
おそらくそうです。ごめんなさい。

物腰柔らかな課長さんは、そんなことも気にせずにこやかにこのセレモニーの趣旨と大まかな進行についてレクチャーしてくれました。そして、本郷市国際交流協会の会長(おそらく市役所からの天下り)を紹介してくれます。
ここでも名刺交換。さらに理事長、常任理事、広報担当…
と、何人かと名刺交換が続きました。
顔を覚えてもらうまでは、名刺交換が頻繁に続きます。
取材先が初対面ということも多いので、名刺はたくさん持っていないといけません。
「かばんに常に1箱(100枚)ストックしておけ」という編集局長のアドバイスに改めて納得しました。

しばらくすると、私と同じような持ち物、いかにも新聞記者という人が現れました。
軽く会釈をすると、近づいてきて名刺をくれました。ライバル郷土紙「南遠浜新聞(仮称)」です。簡単なあいさつや世間話、これまでの流れを教えてもらうなどしていると南遠浜新聞の記者の名前を呼びながらもう一人やってきました。今度は、私が先に名刺を出してみます。県紙の本郷支局の記者でした。

【みんな一緒に】

式典が始まると、主催者である本郷市国際交流協会の会長あいさつから始まり、本郷市長、遠浜県(仮称)のまあまあえらい人(課長級)らが順番に登場します。そして姉妹都市の副市長が紹介されました。
郷土紙の記者は、それぞれが式典であいさつした人を順番にほぼ全員撮ります。今回は、県紙の記者も。正面から、右から、左から、全景を遠くから…
写真撮影では、取材陣がみんないっしょに動くこともあるのでちょっと滑稽です。
記事に載るのは1枚、せいぜい2枚なんですが、いろいろな理由で複数枚、別アングルの写真が必要になります。「資料として」「別の角度の記事や年末の回顧ものを書くときに使い回す」「紙面の掲載位置により人物の角度が変わる」などなど。また、人物によっては、これが後で大きく役に立つときもあります。

とはいってもテレビの記者会見で、よく聞こえるカメラのシャッター音はちょっと異様ですよね。スポーツの場面、例えば野球のバッティングとかバスケットのシュートのような速い動きを連写で追うのならわかります。総理大臣や知事がゆっくり歩いてくるのをここまで連写しなくても… と思うことは多々あります。
いい笑顔、時にはわざと変な顔を使うためなんですけど、テレビの向こうの視聴者、少なくとも私は、この音がけっこう気になります。

【いつものメンバー】

遠浜県南部地域は、小さなイベントだと郷土紙2紙と県紙の3紙がだいたい取材にやってきます。絵になりそうな場合は、地元のケーブルテレビも参加します。少し大きなイベントや発表、会見でようやく通信社2社が顔を出します。全国紙やテレビ局が顔を出す場面は、あまり多くありません。

この日の式典は、ライバル紙の南遠浜新聞と県紙「遠浜新報(仮称)」にケーブルテレビ「ホンゴーネット(同)」のクルーが集まりました。人事異動や退職などで担当が変わらない限り、基本的に地元のイベントは「いつものメンバー」が顔を揃えることになるようです。
ライバル紙といえど、競うのは記事の内容とスクープ、販売力だけ。現場は仲良くが基本みたいです。
このあたりは、規模の大小問わずです。全国紙の記者クラブも記者同士は仲が良い… 表面上は争いがないようです。そうですよね。

ほかの業界でもそうですが、日本の会社員文化は、現場レベルだと仲がいい傾向にありますよね。
コトの良し悪しはともかく、この地域を取材するメンバーの1人に仲間入りしました。
記者経験が長くなり、取材する分野が変わってくると笑顔で話しながら互いに探り合うことが増えてきます。しかし、イベント、式典取材なら記事の内容はてにをはの違いとポイントに持ってくる視点が記者によって少々違うくらい(ここは大事なんですけどね)。翌日の紙面で一喜一憂ということはありません。


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