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郷土紙という超ローカル新聞(連載1)

発行部数1万部の新聞


斜陽産業、オワコンといわれて久しいのが新聞社。その業界内で中小どころか零細、吹けば飛ぶ、まさに顕微鏡でなければ見つけられないような発行部数1万部クラスの小さな新聞社があります。郷土紙、地域紙などと呼ばれている超ローカル新聞社です。

郷土紙の多くは、県内の4分の1とか5分の1くらいの地域、いわゆる県東部や県南部あるいは旧〇〇藩地区などといった狭い地域を対象に発行しています。人口規模は違いますが、東京で例えると城南地区(港、品川、目黒、大田区)とか多摩北部のような狭いエリアです。
イメージとして人口30~60万人くらい、中心都市の人口が20~40万人の小さく狭い地域が取材・発行対象エリアです。地元のポータルサイトのような感じといいますか、40代後半以上の人なら、タウン誌の新聞版といったほうがわかりやすいでしょうか。

意外なことに郷土紙は、日本各地に存在します。

東京を基準にみている人には、読売、朝日などの全国紙や日経などの経済紙が新聞で、地方紙といえば首都圏で発行されている神奈川新聞、千葉日報、埼玉新聞くらいでしょうか。
東京在住でも高校まで地方にいた人は、静岡新聞や岩手日報など県名に新聞または日報などの名称がつく県内全域をカバーする新聞を読んだことがあるかもしれません。
ここでも郷土紙を目にしたことがある人は少数派ではないかと思います。

地方紙は、発行部数でいえばおおむね20~40万部くらい(それより少ない所も多いところもあります)で、県内の世帯普及率が50~60%(参考:都道府県別統計とランキングで見る県民性)というデータもあるので、全国紙よりも読まれている地域も多いです。


郷土紙激戦区が今も


前置きが長くなりました。
ネットのない昭和の時代、自分が住んでいる地域のより細かなニュースが知りたいと思う人の欲求を満たすべく郷土紙が戦後、各地にたくさん生まれました。
実際のところは、当時の感覚で新聞発行事業は儲かると思われていたのかもしれません。

しかし郷土紙は、対象エリアの狭さイコール読者の少なさにつながります。悲しいかな、結果的に発行部数に応じた低収入になってしまいます。このため、21世紀に向かうにつれ…いや、昭和後期にはかなりの郷土紙は姿を消していきました。

そんな中でも長野県をはじめ一部の地域では、地域に2紙、3紙が競合するような郷土紙激戦区が今もあります。

誰が読むのか、なぜネットで情報を得られる時代に一つの地域に複数の郷土紙が存在するのか。
この先、こんなことをじっくりお伝えできればと思います。

私は、ある地域の郷土紙で記者として数年ではありますが在籍していました。
全国紙、県紙に加え郷土紙にもライバル紙があるような、新聞がかなり読まれている(読まれていた?)地域です。

まだ新聞がなんとか生存しているうちに、郷土紙という超ローカルニュース発行体が存在し、どのような活動をしていたのかということを情報があまり古くならないうちにと書こうと思いました。

元全国紙、元県紙(地方紙)の記者という人は大勢いて、さまざまなところで情報発信をしています。
多くの人が新聞社の内幕を知る時代になりました。
しかしながら、全国的にはあまり日の当たらない郷土紙、マスコミのような「マス」ではないメディアについては、あまり知られていません。
おそらく、わざわざ書くほどでもないと思っているOB・OGが多いのと、今でもその地域で暮らしている場合、書いてしまうと差し障りのある内容が多いからではないかと思います。

私の場合も地域や社名をそのまま出してしまうと、問題になることも出てくる可能性もゼロではありませんので、次々回以降、固有名詞や地域などを仮名、架空のに置き換え、具体的な内容も一部ボカしながら郷土紙を発行する新聞社について紹介していきます。

ちなみに次回は、郷土紙はどんな記事を書いているのか、存在意義は? などを書いていく予定です。

※可能な限り日刊をめざしますが、おおむね週1~2回程度の更新の予定です。

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