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缶蹴りをリアルに想像してみた結果

空き缶を見ていたら、無性に缶蹴りがしたくなった午後8時。

実際にやってくれる相手も遊べる場所もないので、脳内一人遊びを開始してみることにした。

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ワタシが一番楽しいポジションを取らねば誰が取る?!ということで、最初の缶キックの役目をいただくことにする。


よっしゃいくでぇ~!

気合十分に、掛け声を響かせながら足首をぐるぐると回す。なんなら、腕もぐるぐる首をごきごきならしながら、地面に置かれた缶をじっと見る。

缶を蹴るなんて、久しぶりだな~。今は缶と言えば潰す一択だし、ゴミ置き場まで運ぶときに、がっちゃがっちゃと音が鳴るのがご近所に申し訳ないんくらいしか思い入れがないよね…。

缶よ、君に恨みはないが、思いっきり蹴らしてもらうよ!


たったったったっ…

助走距離は十分だ。いつものアスファルトとは違う、砂の感触を足の裏で感じながら缶までの距離を詰める。

たたたっ

よし、いっけぇーーーー!!


カッキーン!

と爽快な音を立てつつ、缶はきれいな放物線を描きながら、飛行機雲のように青空を切りながら向こうの方へ跳んでいく。


予定だった。


そう、予定は未定である。


缶は飛んでは行かなかった。

しかし、蹴る勢いだけはあったようで、振り切った右足の風圧を受けてコロコロと転がっている。

コロコロと転がった缶は、座り込んだワタシの横に落ち着いた…

運動不足である上に、何かを蹴り上げる動作なんかもう長らくしていない老体に、フルパワーのキックはちょっと荷が重かったようだ。右足の付け根が痛い。この感覚は、筋がおかしくなってしまったに違いない。

傷む右足を体の方へ引き寄せると、なんだかわからないけど、涙が出てきた。


痛い…。無理はしてはいけないお年頃だったね…
ゴメン…


滲み出る涙を袖口で拭きつつ、ふと転がっている缶に目をやる。空き缶だけに、使用済みの缶。なのでヤツのプルタブはしっかりと取られていた。


わはーん


とでも言いたげな、あの何とも言えない「笑い顔」に見つめられ、切なさがワタシの心の中を吹きすさぶのであった。

‐‐end‐‐


あの空き缶の「顔」が、もう一段憎たらしくなった金曜の夜。


(*'▽') 皆さんいかがお過ごしですか?


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