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お客様の中にカレーにバナナを入れて成功された方はいらっしゃいませんか?

さぁ、今日はお待ちかね、カレーにバナナを入れた日の話をしよう(←

「吹き出物」の事をまだ「ニキビ」と呼べていたあの頃の話。
あの日、お昼のテレビで「カレーの隠し味特集」なるものを見たワタシは、晩御飯にカレーが食べたくなり、作ることに決めた。

当時のワタシが知っていたカレーの隠し味は、メジャーどころの「リンゴ」「蜂蜜」「珈琲」「ケチャップ」「チーズ」「マヨネーズ」あたり。

でも、これらの隠し味は知っていただけで、試したことがあるのは珈琲とチーズだけだった。珈琲はインスタントコーヒーを小さじ一杯くらい、チーズもスライスチーズ1枚くらい入れるとコクが増す。らしい。

らしいというのは、ワタシの舌ではなんとなく違うことはわかるんだけど「コク出たよね!」と大きな声で言えるほどの自信がないからである。

「何を入れてもカレーはカレー」
「カレーにすればなんでも美味い」

これは本当に名言だと思う。言いはじめた人天才。マジで。


とまぁ、それは置いといて。

その日はバナナを入れるつもり予定なんてさらさら無かった。

しかし、いつも通りにカレーを作ったのに、その日のカレーはなぜだかやけに辛かった。いつものメーカーのルーを使ったはずなのに、味見で一口食べてみたところ、いつもは感じられないくらいの辛さを感じた。異様に辛かった。深層心理で「たまには辛いカレーにしよう!」と思っていたのが無意識の行動に現れ、手が勝手に中辛と辛口を入れ間違えてしまったのか……。

理由はよくわからないし、記憶も定かではない(←
でも、あの日のカレーはとてつもなく辛かったのだ。


そしてあの頃、家人は帰ってくるのが非常に遅かったので、夕飯は別々に食べるのが日常だったので、その日もいつも通り、ワタシはお先にひとりで夕飯を食べた。
カレーが辛いことは既にわかっていたので、辛さを誤魔化すためにスライスチーズを乗せて。

食器を洗いながら、このカレーを食べる家人を想像し、この辛いカレーを何も考えずにパクパクと食べてしまったら……。なんてことがふと頭によぎる。

家人が苦しむ前に「今日のカレー辛いで?」とひとこと直接伝えてあげたい。まだ若かったワタシの心は、辛いカレーを家人に食べさせることに心が痛んだのだ。

しかし、ワタシはロングスリーパー。

家人が帰ってくる前に寝てしまわないと、次の朝起きることが出来ない体質である。そうしないと本気で翌日使い物にならなくなってしまうのだ。

なので、伝えることは多分無理。だとすると残された方法はひとつ。なんとかこの辛いカレーを中和するのだ!

初めはチーズを鍋に入れようかな?と思ったけど、ちょっとコッテリしすぎるかもしれないと思いなおす。日付が変わってから食べる晩ごはんとしては、胃に厳しいような。
週末ならまだしも、明日に響くとかわいそう。

もっといい方法……

リンゴも蜂蜜も在庫がない。

んー。

そんなふうに回らない頭を一生懸命回していたところ、ふと視界の隅にバナナの存在が確認された。

あ、バナナあるやん☆

バナナを見た瞬間、ワタシはお昼に見たテレビを思い出す。


「カレーの隠し味特集」で堂々1位!

「カレーの隠し味にバナナを入れると辛みが抑えられてコクも増すよ☆」



「バナナを入れると辛みが抑えられ…」

こ れ だ ! ! !


早速ワタシはカレー鍋に皮を剥いたバナナを躊躇することなく丸ごと投入した。
普通に考えたら「隠し味」なのだから、少量のバナナを細かく潰したりしてから入れるのが正解だろう。しかし「いいこと思いついた!」モードのワタシには、そんなことを考える脳みそは残っていない。

バナナ イン !

しかも大きめバナナを2本。
大盤振る舞いだ。

その後、オタマでぐるぐると鍋をかきまぜるが、バナナの形はなかなか無くならない。

おかしい。
これでは、カレーの具がバナナ。隠し味がバナナではなく、バナナが具。

それはさすがに違う気がする。もっと混ぜてバナナの痕跡を消してしまおう!

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる

バナナは崩れ、何とか形は無くなってきた。やれば出来る子YDK!は、当時まだ発信されていなかったけど、まさにそんな気分だった。

大 満 足 。

と満足感に浸れたのはほんの少しの時間だけ。

バナナの形は無くなったけど、なんだかバナナの破片がめちゃくちゃ大量にカレーに浮かんでいる。ピザ用に売られている細かいチーズをカレーなべに投入した感じといえばわかってもらえるだろうか。あんな感じ。

見た目はとてつもなく怪しく、カレーのニオイはするもののカレーだとは思えない出来栄えだ。

恐る恐る味見をしてみたところ、グツグツと火を入れまくっていたので熱すぎて味がしない。しかも舌をヤケドしてしまったので味見の続行は不可能だ。

後は野となれ山となれ……。


すべてを忘れ、布団に入りウトウトとしていると、家人が帰ってきた。

今思えば、ちゃんと起きていられたのはバナナパワーだったのかもしれない。バナナはすごい。

「お帰り~。今日はカレーやで」
「りょうかーい」

お風呂から上がった家人が、晩御飯を食べようとカレーの入った鍋をのぞき込んだ後、布団にくるまっているワタシの方へとペタペタと近寄ってきた。

「カレー???」
「カレー。」

「なんかいっぱい浮いてるで?」

いっぱい浮いてるって。うん。その通り。

「カレーやで。めちゃくちゃ辛かったから、バナナ入れといたで。テレビでバナナを隠し味で入れたら、辛み無くなるって言ってたから。まあ、騙されたと思って食べてみて」

「う・・・うん」

しぶしぶとカレーを盛り付けた家人は、恐る恐るスプーンを口に運びカレーを食べ始めた。

「バナナ入りどう?美味しい?テレビでめちゃくちゃおすすめって言ってたけど」


「・・・騙されたわ・・・」

その後、家人はお茶碗にご飯をよそい、ふりかけをかけて食べ始めた。

「隠し味にバナナ、オススメ!って言ってたのにおかしいなー。どんな感じ?」

と聞くと

「まずはカレーの味が来て、その後バナナ。そしてその後、鼻からバナナの香りが抜けていく。カレー、バナナ!バナナ~〜っていう感じの味」

わかったようなわからなかったような。
とりあえず、後味と鼻に抜ける香りがバナナ過ぎてダメだったようだ。バナナ好きなのに、そこはアカンのか(←

「後、隠し味に使うって言ったら、ちょっとだけなんじゃないん?バナナ多すぎちゃう?どれだけ入れたん?」

「え?丸ごと2本やで?」

「それ、隠し味の量じゃない。」

うん。知ってる。


ような気がする。

その後、深夜のリビングで「バナナはあかん」「カレーにバナナはあかん」と言われ続けたあの日の思い出。


あれから十ウン年が経過した。
にも関わらず、今だにカレーの日には

「バナナ入りのカレーはあかんで」

「今日のカレーバナナ入ってない?」

「(子に)カレーにバナナ入れたらあかんで」

「バナナカレーの鼻から抜けるバナナ感、あれを超えるものはないな」

と、何度も何度も家人はしつこく言い続けてくる。

後にも先にもヤバイ料理を作り出したのはアレ1回だけなのに、未だに月2ペースで訴えてくる家人。


あまりにもしつこいので、今度家人のカレーにだけバナナを入れてやろうかと思ってたり思ってなかったりするのはここだけの話。


少量のバナナだったら隠し味として成功するのかな?

成功した方、適量を教えてください。
よろしくお願いします。


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