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もみじからはじまる焼き芋の話

朝の布団の吸引力が日に日に強くなってきたので、ワタシの布団がダイソンへと変わる日まであと少し。


ちょっと違うな

だからこれはあっちに置いておくことにして、秋と言えば紅葉。紅葉と言えば落ち葉。落ち葉と言えば焼き芋ってことで。今日は焼き芋のお話。

最後に落ち葉で焼いた焼き芋を食べたのは中学校3年生の学活の時間。

当時の担任は生徒目線な先生で、よく言えば「熱血」悪く言えば「面倒くさい」先生だった。自称「ASKA(飛鳥涼)」。自称と言うだけあってそれなりのASKAっぷりだったけど、かなり自信を持っていたと思われる。でも声はおっさん。

最後の学活(5・6限)に体育館と運動場半分を確保してきた我が担任は、お昼が終わる頃に

「今日の5時間目は体育館シューズを持って朝礼台の前に集合」

と、宣言した。あの時の担任は、先生というよりはクラスのリーダー。まぁ、普段から先生だけど、正義感を振り回すウザい近所の兄ちゃんみたいな感じだったのでいつもどおりと言えばいつも通りだったともいう。

5時間目のチャイムがなり、クラス全員が朝礼台の前でガサガサしている所に嬉しそうな顔をして現れた担任は

「今日の5・6時間目は体育館と運動場半分、どこで遊んでもええぞ!あと、あそこの焼却炉で焼き芋焼くから、まずはその辺の枯葉集めてこい」

とよくわからないことを言い出した。

2時間フリーって何するん…。それに枯葉って言われても、グラウンドには葉っぱなんて落ちてないし。体育館裏だって木は数本しかない上に落ち葉はもうあらかた片付けられてるのにコイツは何を言っているんだ…?

みんなで顔を合わせて「2時間?マジで?枯葉?どこ?校舎裏?あったっけ?」とざわついていると「とりあえず拾ってこい!」と強制的に解散させられた。

うーん。困ったなぁ。とりあえず、みんなでぞろぞろと一列になり中庭をウロウロした後、校舎裏を練り歩く。

「あ、あれでええんちゃうん?」

先頭を歩いていた佐藤(仮名)が大きな声で叫んで立ち止まった。佐藤(仮名)は、体育館裏の民家との仕切りとして建てられているブロック塀にもたれかけさせてあった剪定用ゴミ袋を指さしている。

「え?あれはあかんのちゃう?」

「ええやんええやん。とりあえず持っていこうぜ」

佐藤とその仲間たちは、木や葉っぱの詰まった剪定用ゴミ袋を背負うとえっさほいさと焼却炉まで走っていった。あれだけ大きな袋、重いし枝が突き刺さって痛かろうに…。

「枯れてるし、ええんちゃうか。とりあえずみんな戻ろうぜ」

誰かの掛け声に従って、佐藤(仮名)の後を追うように、またぞろぞろとみんなで焼却炉まで一列に並んで歩いた。運動会の練習であれだけ「隊列が汚い」と2時間運動場をぐるぐる歩かされたメンバーとは思えない整い具合だ。やればできる子 YDK ってこういうことよね。

「先生持ってきたでー」
「おぅ。ってどっから持ってきてんそれ」
「あっちに置いてあったで」
「… 返してきといてくれや …」
「持ってこいって言うたやん」
「すまんな。元あったところに返してきてくれ」
「ここ置いとくわな!」

佐藤(仮名)はまじめなヤツではない。そう。大人の言う事に素直に従うタイプではないので、袋を置いてどこかへ走り去って行った。

「すまんが、伊藤(仮名)コレ戻してきてくれへんか?」
「はーい」

伊藤(仮名)はさすが学級委員だけあって素直だ。いいやつだ。

「ていうか、先生もう火ぃついてるんちゃうん?」
「ほんまやん」
「葉っぱいらんやん」
「すまんすまん。葉っぱなんか落ちてへんやろ?言うてみただけや」

「うーわっ最悪」
「XXXXX」
「”ピーーーー”」

お年頃の子供たちは容赦なく先生に暴言を吐きながら、思い思いの場所に散っていった。

そこから芋が焼けるまでの間「暇やなぁ」といろんなところで文句を言っていたこと以外は覚えていない。

そもそも40人ちょっとしかいないのに、体育館と運動場半分という広い面積を与えられても有効活用できるわけもなく。小学生の頃だったら楽しくみんなで遊べただろうに、中3ともなるとしょうもない事をするとき以外は団結力なんてあるわけもなく。

担任が思い描いていた状況ではないんだろうなぁと言う事はわかったけど、かといってそんな理想をかなえてあげようと思うほどみんな大人でもなく。

「芋やけたぞー。おらん奴呼んでこいー」

の号令で集合するまでの時間は長かった。

でも、あの時食べた芋はめちゃくちゃ美味しかった。そんな焼き芋の思い出。


で、こないだサツマイモを買ったので焼き芋を作った。ワタシはトースターで30分ばかし焼く方法がお気に入りなので、いつも通りそうやって作った焼き芋を子と一緒に食べる。

「いただきまーす」

まず芋にかぶりついたのは子。

「どうよ?甘い?」

「いものあじがする」


いもやからな。

「甘い?」

「いも」


いもやからな。

「いもが肉の味したら嫌やろ」

「いや、そうちゃうねん。食べてみたらわかるから」


一口食べる。

「いもやな」

「いもやろ」

「いもやわ」


その日のサツマイモは、なぜだかジャガイモの味がした。

(ノД`)・゜・。 


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