方方(Fang Fang)さんの武漢日記に触発されて :12月18日
昨日(17日)東京都の陽性者数が822名になったというニュースが流れ、メディアが大騒ぎをしたので、久しぶりに「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」を見てみた。日々の詳細なデータが公開されているが、これらを見て改めて、TV等の表面的な報道に踊らされず、データを見ることの重要性を再認識した。
今更ながら理解したこと
まず、822という数のなかには、”都外からの検体持ち込み”27が含まれる、ということを知った。最近、有償でPCR検査を行う医療機関が出てきている。彼らが採取した検体を都内の医療機関に送って検査・分析した結果が東京都の患者発生数に含まれているのである。27/822で約3%という割合なので、様々な判断に影響を及ぼすほどではないかもしれないが、この比率が大きくなれば、調査・分類の仕方として議論を生むだろう。
そして、感染経路である。822のうち350が濃厚接触者であり、残り472はまだ調査中だが、その350の内訳が次のグラフで示されている。
即ち40%強は家庭内感染、20%が介護施設・医療機関など、であり、話題の会食、接待を伴う飲食はそれぞれ6.7%と2.9%でしかない。ニュースのたびに飲食店が取り上げられ、営業時間を22時までに規制する措置が再び取られるが、実はクラスタとしては小さい方になる。これら約10%を更に少なくするために予算を使うより、むしろ40%の家庭内感染を少なく抑えるための施策を呼びかけたほうが効果的ではないだろうか? 大した知恵は思い浮かばないが、家庭の中でもマスクをするとか、帰宅時の手洗いを徹底するとか。 方方さんの武漢日記によれば、武漢の人々は困難の中でも知恵を出して助け合った。日本人も、自分を守り他人を守るために、自身の生活行動様式を更に見直すことは出来るのだと信じたい。少なくとも自分自身は心がける。
何処まで次世代にツケを回せるか?
東京都の報道発表資料によれば、営業時間短縮に関わる協力金として飲食事業者に対し、一律100万円を支給するそうだ。国の20年度予算も当初102.7兆円だったのが、コロナ対策で175.7兆円まで積み上がった。これらを賄うために、新規国債発行は当初32.6兆円だったのが112兆円まで増えている。無論、国難に対処するためのお金は必要だが、これが全て次世代への借金としてツケが先送りされる。前述のように、協力支援金を出して飲食店の営業時間を短縮してもらわなくても、利用者である我々が、気をつけながら飲食をし、バカ騒ぎしなければ良いことだ。
正確な数字ではないが、昨年時点で確か国民一人当たり800万円ほどの負債を抱えているはずだ。オリンピックの延期やコロナ対策で、明らかにこの金額は増える。これだけの借金を何とかするには、政府はいずれインフレにするしか無いだろう。所得が連動して伸びれば良いが、そうでなければ、それまでの蓄えも紙くずとなり、次世代は物価高に苦労することになる。子や孫の世代にこれ以上の借金のツケを回すのには忸怩たる思いがある。
経験値の共有
中国での感染症発見からほぼ1年が経過している。その間に我々は様々な経験値を積み上げたはずだ。たとえば、方方氏の2月28日の日記には ”劉良(華中科技大学同済医学院法医学科主任)教授のチームが困難な状況下で新型コロナ肺炎による死亡者の遺体を病理解剖し、研究した”とある。この研究結果は中国国内で発表され、他国にも共有されているのだろうか?
ジョンズ・ホプキンス大学が提供するCOVID19 Dashboardによれば、中国では3月以降の陽性者数は極めて少ない。「封じ込め」が出来たのだとすると、60日間の武漢の封鎖だけで実現できたのだろうか? 政治体制が異なるので彼らの経験は参考には出来ない、と単純に思い込んでしまって良いものか?
幸いにしてワクチン接種もイギリス、アメリカで動き出した。ワクチンや治療法/治療薬の流通も勿論大事だが、日常生活の中で工夫した様々な知恵も、国をまたいで流通してほしい。武漢日記が様々な言語に翻訳されているのは素晴らしいことだ。
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