13. DEATH / オリジナルタロットカード解説
オリジナルタロット版のカードに込めた物語
日が傾いてきた。
明かりをともすには少し早い夕暮れ、少し先に人影が見えた。
『ここだ、ここ』
『ここだな、ここだ』
死神が立て札を立てている。
その姿をみて、愚者はさっき出逢った吊るされた男を咄嗟におもった。
「あの・・・もしかしてあの男の人しんじゃったの・・・?」
『誰の事?今日はもうリストに誰も載ってないけど』
愚者はほっとした。
「じゃあ何してるの?」
『お前、ここ通るだろ?立て看板だよ』
そういうと立て看板をポンポンと死神は叩いた。
愚者は立て看板に書かれた文字を読み上げる。
「・・・天国・・・地獄・・・」
愚者は看板に書かれた地獄が指している方向が気になった。
「僕が来た道地獄だけど・・」
『そりゃここからそっち行けばそうなる』
「・・・じゃあ先に進めば天国なの?」
『そうなるね。もっともどっちに進むのも自由だけどさ・・ん?どうした』
死神は話を止めて愚者の顔色を窺った。
意気消沈しているかのようで肩をがっくり落としている。
「・・・進む以外ないの?僕疲れたんだ」
愚者の言葉にふっと微笑んだ死神。どこからかランプを取り出した。
傍にいたカラスがマッチを取り出して羽根にこすり火をつける。
『じゃあここで休んでいけばいい。じきに日が落ちる。明かりを置いてってあげるよ。もし地獄に進んでも必ずここにはたどり付くから目印にもなる。』
そういいながら立て札にランプを置いて死神は去っていった。
穏やかな光があたりに広がり始めた。
小さなランプなのに不思議とあたたかい。
立て札に背もたれて、愚者は心行くまで休むことにした。
タロットカードにおける『死神』の意味
タロットカード本来の意味に加えて、私版のオリジナルタロットの解釈も載せています。広義では同じ意味ですので、どちらを採用してもらっても構いません。ピンときたものを受け取ってください。
タロットカード本来の『死神』の意味
オリジナルタロット版『死神』の意味
これは私独自の解釈なので少し飛躍してる部分があります。
愚者が『自分を知ろう』と自分と向き合うことを決め、自分の中に飛び込んでいく旅です。その旅路の途中で、色んなことを思い出してきた愚者、それらを内包するように色んなものが計らいとして表れ始めます。次に現れたのは『死神』でした。
死神は『魂の行く末』を伝える存在だと私は考えます。
日本の神様で言えば出雲の神様でしょうか。
経験を重ねることは人としての成長に繋がります。
苦しいこともあれば楽しいこともありますが『経験』という観点から言えば全て同じ『経験』でしかありません。
苦しいことを経験すれば、その値が大きくなり人としてより成長できますし、同じ苦しいことがあった時に経験則が活き初回ほど苦労をすることもなくなります。
新たな経験を避けることは成長から遠ざかるだけでなく、新しい喜びを得ることもありません。成長しどんどん経験していくことで喜びに満ちた世界にいける、それを『天国』だと死神は教えてくれているのです。だから過去に戻ることを『地獄』としてるんですね。
ただ過去の経験から得る学びは非常に多いため、戻ることを単純に否定しているわけではありません。過去に忘れ物があるのなら取りに行くべきだと考えます。
過去の忘れ物というのは、私的には置いてきた自分の感情ですね。
愚者は運命の輪が回るまで過去の気持ちを思い出してきました。
それは自分が忘れてきたり、わざと置いてきた感情だったりです。
辛かったこと悲しかったこと悔しかったことを素直に受け止めることはとても勇気がいることです。ましてやもう見たくないと過去においてきた感情です、今更蓋など開けたくないでしょう。
それでも過去に忘れたものとして取りに行く。その行為は自分の心にあいた穴を埋めるための行為だと考えます。穴が開いていたらどんな楽しいことも嬉しいことも穴からどんどん流れ落ちて充たされることはありません。
そうして苦しい地獄の過去へ戻った時、再び前を向いて歩いていけるようにとここだよと立て看板を立ててくれてもいるのです。
やさしい死神なんです。
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2024年4月2日
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