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パイロットの適性と車の適性の違い

こんにちは、あらいぐま機長です。
今日はパイロットの適性と車の運転の適性と関係があるのか考えていきたいと思います。

これってパイロットの志望の方や、実機訓練に入る前の訓練生には気になるところなんじゃないかな?

実は僕もこれ気にしたことがあるんですよ。

日本での座学訓練が終わって、ハワイで実機訓練が始まる前はちゃんと飛行機を操縦できるか不安で、無駄に家の車を借りてドライブして、バックミラーとスピードとかを交互にスキャンして、『よし完璧!』みたいに練習をしていたことがあります。

それで実際はどうなの?というところなんですけど、正直あんまり関係ないんじゃないかなーという気がします。

まずちょっとここで整理しておきたいんですけど、僕は『パイロットの適性』と『飛行機の操縦適性』は必ずしも一致しないと思っています。

プロのパイロットでなくてもプロ並みに操縦が上手い人もいるかもしれませんよね。

純粋にエアラインパイロットの適性ということであれば、まずは社会人としての適性が必要です。

他にも『パイロットにはこういう能力が必要ですよ』っていうのが国際民間航空条約、ICAOという組織が体型的にまとめていて、日本の民間パイロットの教育にも取り入れられているんですよ

その話はまた今度するとして、今日は『飛行機を操縦する適性』のことに限ってお話ししましょう。

飛行機を操縦する適性とは?というと大層に聞こえますが、どういうものがあると思いますか?ちょっと考えてみましょう。

あくまで僕の独断と偏見なんですけど、4つくらい思いつきました。


精密なコントロールを行う能力

これはイメージつきやすいですよね。
飛行機を望む方向に動かすために操縦桿を動かして、飛行機の動きをモニターして微調整、そしてまたモニターというコントロールのループを素早く回せる人は精密に飛行機をコントロールすることができます。

これってスポーツでもテレビゲームでもなんでも一緒ですよね。僕の同期ではみんなで一緒にマリオカートでよく遊んでたんですけど、フライトが上手い人はマリオカートも得意でした。スポーツも万能な、ゴリラくんです!

状況認識能力

これはあんまり聞いたことのない言葉かもしれません。
状況認識とは『今自分はどういう状態なのか?』というのを正確に把握することなんですけど、飛行機の姿勢や速度、高度がちゃんとあっているのか。

また近くに他の飛行機がいて、今あっちにターンしたら危ないなぁとか、自分は今どこを飛んでいて、もう少しで入っちゃいけない空域に入っちゃいそうだなぁとか。
飛行機の操縦って、まず『自分が今どういう状態か』っていうの把握することがとっても重要なんですよ。それを把握できて初めて未来どうなっていくかが想像できます。その未来が悪い方向に向かわないように先に手を打っておくというのはパイロットにとってめちゃくちゃ大事な能力です。

飛行機の操縦って、やっぱり動きがめちゃくちゃ早いから状況が悪くなってからじゃリカバーが難しいんですよ。トレーニングエリアとかでエアワークの練習をしていて、他の訓練機と正面に相対してしまうことを『ヘッドオン』というんですけど、ヘッドオンしてしまうとチェックでは一発でフェイルです。飛行禁止エリアに入るのも一発フェイルです。でも空に境界線は引かれていません。

だからスティープターンなんかの難しい操縦をしながらも頭のキャパの一部は状況認識に回しておかないと、どれだけうまく操縦ができてもパイロットになることはできません。

マルチタスク能力

これは聞いたことがある人が多いんじゃないかな?
飛行機の操縦は3次元空間でのコントロールが必要なので、高度、速度、進路を基本に、上昇中や旋回中は上昇率やバンク角なんかも同時に操作しなければなりません。

コックピットの計器

目の前にたくさんある計器を素早くスキャンして、重要なものから優先順位をつけて修正操作を取らないといけないんですよね。

これは結構難しいです。高度を合わせようと頑張っている間に進路がずれちゃってる…というのはあるあるですね!

また操縦と同時にATCや他のトラフィックの位置を把握したりと、同時にいろんなことを考えなければなりません。前を飛ぶ飛行機のスピードが遅いなら、自分も速度を落としておかないとどんどん接近してしまいます。

昔空港にアプローチ中の小型機に後ろからスピードの速い大型機が追突して小型機がバラバラになってしまったっていう事故まであるんですよ。

緊急対応能力

これも忘れがちですがとっても大切な能力です。
トラブルや非常事態が発生した際に、迅速に何が起こっているのか判断して、対応できなければなりません。

これもやっぱり難しいことで、実際にどう対応するかはあらかじめ勉強しておくものなんですけど、予想外のことが起こるとフリーズしてしまうとかは困ります。
どんな時も落ち着いて、冷静に行動できなければいけません。

以上の能力で、車と飛行機の違いは?

他にも考えると色々出てきそうですけど、とりあえずそんなもんでしょうか。車の運転と見比べてみてどうですかね?

確かに、似ている部分はありますよね。車の運転も精密なハンドリングができると運転が上手くなります。でも車で操縦するのはハンドルの右か左とアクセルとブレーキの4つですね。

飛行機の場合は操縦桿の右左、押し込む、引くの4つ。ラダーの2つ。スラストレバーは単発機だと1つで合計7つのインプットが必要です。また車と違って回転が入るのでモニターするのはそれ以上の数になります。車の運転が上手ければ飛行機もうまくできるかといえば…ちょっと微妙な気がしますね。

次に状況認識はどうでしょうか。車の運転も状況認識は大事そうです。

スピードが出過ぎていないかとか、後ろの車はちょっと近いよなとか知っていないといけないですよね。
また目的地と現在地の関係も気にして、到着時間なんかも考えながらスピードを調整したりしますね。交差点であの車飛び出してこないかな…とかも必要な情報です。これはどっちもどっちな気がしますね。

じゃあマルチタスクはどうでしょうか?車の場合、運転しながら携帯電話は…禁止されていますよね。これは危ないからです。

他にも運転中にテレビを見るのは禁止されていますが、道路交通法ではドライバーにマルチタスクをかけないようになっています。

これは元々人間がマルチタスクに弱いからなんですよ。人間の脳はシングルタスク向きと言われていて、同時に別々のことをやるのが苦手です。だからしょうがないんですよね。

でもパイロットはそれを訓練してできるようにならなければなりません。ここは車の運転と大きく違うところで、パイロットの訓練生が訓練でつまづいてしまうところでもあります。

最後の緊急事態の対処はどうでしょう?車にもトラブルは時々ありますが、飛行機のトラブルとは大きな違いがあるんですよ。なんだかわかりますか?

それは『飛行機は止まれない』ということなんですよ。車の場合は路肩に寄せて停まってハザードを焚いてしまえばある程度安全です。

でも飛行機の場合はそれができません。時速1000km近くのスピードでずっと飛び続けた上で、パイロットは緊急事態への対処を行う必要があります。これは飛行機と車の運転の大きな違いかなと思います。

こうやって考えていくと、似ているところはあれど違うところの方が多いので、

『あんまり関係ないんじゃない?』

というのが僕の意見でした!

最後まで読んでくれてありがとうございます!
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