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2/24:かくれんぼ

 洗濯物を片付けてリビングに戻ると、しぐれがいなかった。
 さっきまで着ていたものがテレビの前に落ちていたので、仔猫の姿になっているのだろう。

 やれやれ。

 岳はため息を吐いた。
 しぐれは時々、いや、わりと頻繁に、岳を訓練したがる。具体的にはかくれんぼだ。部屋の中のどこかにいるしぐれを見つけ出せたら訓練終了である。

「おーい、しぐれー」
 岳はこたつ布団をめくった。
 いない。

「ここか」
 ソファの下、裏。いない。
 エアコンの上、いない。

「……どこだ?」
 本棚の上、下、隙間。見当たらない。

 仔猫のしぐれは岳の手の上でくつろげる程度の大きさだ。大抵の隙間には入り込める。
 しかも、探す側は踏んづけたりしないように細心の注意を払わないといけない。あんな小さなものを岳がうっかり踏んでしまったら。
 良くて内臓破裂、最悪……。

 頭によぎった想像図を慌てて消し去り、岳はソファの上のクッションをどかした。

「……本当にどこにいるんだ」
 リビングにいることは間違いない。
 探し回って困っている岳を見て、こっそり「きしし」と笑っているはずだ。

 なまいき仔猫め、なんてかわ、いや、平常心。

 最終手段はローラー作戦だ。部屋の隅から順に、障害物を退かしてチェックしていく他ない。

 ついでに埃も取っておくか。

 岳は柄を超ロングに付け替えたコロコロクリーナーを持ってきた。

   ×   ×   ×

 が。

「……降参だ、しぐれ!」
 隅から隅まで、埃は取れたが仔猫はいない。ホットカーペットの上敷までひっくり返したのにだ。

 岳は諦めてホールドアップした。

 み


 がさっという音。
 息を飲んで見たのはこたつの上のボックスティッシュだ。ずっとこたつの天板の上にあった。
 灰色の仔猫がティッシュの引き出し口からあたまを出した。


 完敗。


(NK)

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