2/12:なでなで
お昼寝から目を覚ましたしぐれに水分補給をさせて、ひと段落。岳はつま先だけこたつにいれて、ソファに腰を落ち着けた。
疲れた。
任務なら大抵のことはこなせると思っていたが、家事はきつい。面倒臭いし細かい。幼児への気遣いもあるからなおさらだ。
しぐれは言葉が通じる分、他の幼児よりはマシなんだろうとはわかっているが、疲れるものは疲れる。
深くため息を吐き出すと、しぐれが岳を見た。
「岳、四十肩ですか?」
「お前、どこでそんな単語覚えてきたんだ」
「林さんが言ってました」
林さんは近所のスーパーのお惣菜売り場のスタッフだ。しぐれが一番好きな時雨煮を作ってくれる人でもある。簡単にいうと、しぐれは彼女のことがとても好きなのだ。
「肩、なでなでしてあげますね」
言葉とともに、しぐれがソファに登ってきた。座っている岳の肩に掴まって立つ。
「転ぶなよ」
「だいじょうぶですよ。しぐれは優秀なミューミントですよ」
ちょっとムッとして言うが、とがった口は幼児でしかない。かわいいものだ。
「すまんすまん」
「二回言うのは本気じゃないんですよ。謝罪は一回で」
「すまん」
しぐれの追求は厳しいので、白旗は早めにあげる。
「なでなでしますよ。痛くなくなれーなくなれー」
豆まきみたいな呪文(?)で、小さなてのひらが岳の肩をゆっくり撫ではじめた。
くすぐったい。しぐれがやってくれることはほぼ全部がくすぐったい。
岳は緩みそうな頬を内側から噛み締めた。
平常心、平常心。
(NK)
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