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聞き分けの良い母親

週に2回、小児科の先生からの説明がある日がある。

つい昨日のこと。

👨‍⚕️「端的に言うと、👶くんの甲状腺機能に亢進が認められました。臨床症状は昨日から出てきて、体が真っ赤になって汗ばんだり、頻脈になったりしてました。今は抗甲状腺薬とβブロッカーの投与を開始しています。βブロッカーは新生児の血糖を下げるので慎重投与しながら、血糖測定もしています。」と。

あれだけ見た目は元気だったし、一度ミラクルを起こした子だから、ちょっと楽観してしまってて、現実を突きつけられた感じ。
わかってたはずなのにショックだった。

TRAb10がカットオフのところで、私のTRAbは30近くあったし、治療しても20はあった。
やっぱり何もないわけないよね。
可哀想なことをした。呑気に一応退院の服なんか持っていっててバカみたい。

いや、周りも👶の生命力に期待してたし、一応退院の服持ってきて下さいって言われてた。
終始一貫して、リスクの認識が的確だったのは内分泌内科と小児科の先生だけだった。
産科の先生も、看護師さんもみんなこの子の見た目の元気さに騙されていた。

ミルクもよく飲んで、顔色もよくて、元気です…って、きっとお腹が空いて仕方なかったんだよね。
同じ症状が出ていた私にはわかる。
代謝が上がり過ぎて、食べずにはいられなかったし、夜中も起きてずっと食べていた。
顔色も良くて肌もツルツルになった。代謝が良過ぎたから。
それを周りには元気と捉えられて、いっぱい仕事を任されたりもした。


言葉を話さない元気そうに見える赤ちゃんは、専門家以外はわからない。
本当に危なかった。
何も気づかずに転院していなかったら、多分母子共々命はなかったし、出産を超えられたとしても、私は体の不調を訴えることができるが、子どもは泣くしかできない。
産んでから何も気づかず、何もしてあげられず、ある日突然、子どもがシぬ運命もあったのかと思うと生きた心地がしなかった。
速やかに治療をしなければ致死率も高め。
新生児バセドウ病の発症は、バセドウ病の妊婦の中でも1〜2%だというが、一体何人の子どもが犠牲になってきたんだろう…

産後1週間は私の飲んでいた薬が胎児に残っていたから問題がなかっただけで、それが抜けたから、一気にきたみたい。

数値はT3もT4も、振り切って計測不可。
特にT3は症状を出すホルモンだからしんどくないはずがない。
私でもこんな悪い数値になったことはないし、こんな小さな体でこの数値は可哀想で、信じられなくて、何回も数値を見直した。でも数値は変わらなかった。

とりあえず、投薬が始まって、今のところ心臓にも問題は出ていないよう。
胎児の時はもっとTRAbが高かったし、心臓にも問題が出てきていたので、あの頃よりかは状況がいいと見ていいのか?少なくとも、あの頃に早産で出すより幾分かマシなんだと思った。
あの頃は早く出してあげたいなんて思ってたけど、実は正産期に入ってすぐ出せた今が1番良い時期だったのかもしれない。

病院もこういう時の対応ができるからここに転院してきた。
できることはやっているし、手厚くしてもらっている。

説明を聞いて、いくつか質問もして、小児科の先生との面談が終わった。
"わかりました。"
"大丈夫です。"
"ありがとうございました。"
"よろしくお願いします。"

…聞き分けの良い母親面をした。

本当は泣きたかったけど、感情をころす術は不妊治療で鍛えられたし、小児科の先生は他のご家族の方にも説明しないといけないし、時間もそんなに取れるわけではない。
私を慰める為の時間は、子どもを助ける時間に使って欲しい。

窓越しで面会した。
コロナじゃなかったら触れたのに。
私に次の妊娠なんてないのに。
このまま触れられずに、GCUでこの子の新生児期終わってしまうのかな?
いや、命が助かるなら何でもいい。会わないことで感染が防げるなら何でも我慢する。
いろんな感情で揺れた。

👶は呼びかけると、タイミングよく笑ったり、返事をしたかのように声を出したりしていた。
…寝てるのに笑
かわいいなぁ…
触りたいなぁ…

いつ退院できるんだろう。
数値が振り切ってたら、大人ならめちゃくちゃ時間をかけて治療する必要がある。
でも、もう私から切り離されているので偶然子どももバセドウ病ではない限り、TRAbは下がる一方だし、6ヶ月で完全に私の影響は消える。
子どもは基本的に良くも悪くも変化が早い。6ヶ月入院ってことはないと思うけど、どういう基準で退院になるんだろう…

症例数が少なくて調べても出てこなかった。
個人差もすごくあるみたい。今後のことがわからなくて不安…。


今日はだいぶ回復して、近所に買い物に行けた。
まだ歯茎や瞼の裏は真っ白だけど、ちょっと顔色が戻ってきて、頻脈もマシになってきている。
地元の知り合いや友達には絶対に会いたくなかった。
軽い挨拶だけならいい。
最近どうしてるの?仕事は?子どもは?いつまで実家いるの?…秘密にする気はないけど、いろいろと事情が…深くて…。
コソコソしながら下を向いて、ゆっくり歩いた。
まだ早くは歩けない。


駐車場にいるガードマンに早く歩け!と言われた。
店の中にある専門店に入ると、重たいカゴを手渡しされた。
早く歩いてくる人にはぶつかられそうになり、慌てて避けるといろいろ痛かった。

若いってだけで、目に見えないってだけで、こんな目に遭うなんて…。
今までお腹が大きかったから、みんな気を遣っていてくれてたんだな…。

不妊治療をして、見たくもなかったマタニティマーク。
妊娠初期はいきなりこれが私の味方になるなんて戸惑いしかなくて、あまりいい感情を持っていなかった。
気がついたらカバンから外すのが嫌になってたね。
妊娠中は守ってくれてありがとう。
お腹に愛しい命があった日々はもう終わり。

あの愛しい子はどこに行ったんだろう…
私は確かにあの時出産したはずなのに、何で育児をしていないんだろう…

胎動と動画を見たり、NSTの動画を見たり、子どもの写真・動画を見て過ごした。
最初で最後の新生児期なのになぁ、会いたいけど、会えない原因を作ったのは紛れもなく私。

本当はめちゃくちゃ寂しいけど、聞き分けの良い母親面しちゃった。
いつもそうだ。
買い物に行った時ももっと痛そうで、しんどそうな顔をすれば良かった。


不妊治療をしていた時に、急に子どものアイコンに変わる人を見ては、気を落とすこともあった。この年齢だし、同級生の中にもそろそろ流産や死産、不妊などを経験してる人も増えてくることでしょう。
それに妊娠報告も出産報告も殆どの人にはしていない。
なのでLINEなど他人に見られるアイコンはそのまま。

でも私の携帯のロック画面をあの子にした。

ミルクを飲んでる時に、つぶらな瞳でこっちをじっと見てくる顔が好きだった。
入院中、呼吸苦で不眠だった頃に深夜のGCUで、何度その顔に癒されて、助けてもらったかわからない。
帰ったら夫にこの顔を撮ってもらおうと思ってたのに…

窓越し面会をした時に、看護師さんに抱っこされたままミルクを飲んで、私の好きなあの顔でこっちを見てくれていい写真が撮れた。
それをロック画面に設定。
携帯を見る度に気持ちが安らいだ。

早く元気になって3人で暮らしたい。
待ってるからね👶









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