見出し画像

他人の価値観

僕たちが選べなかったことを選びなおすために…続きで、どうしても言いたいことがあったのを思い出した。
自分の記録を目的としていたが、少なからず記事を読んで下さっている方もいらっしゃるので、是非読んで欲しい。誰にも起こりうることなので。

他人の人生に責任も持たないくせに自分の価値観を押し付けるの人が無理だと散々連呼して、そういった人たちがある人を追い詰めた事実を知って欲しい。

職業柄、人生の転機にある人と接することが多かった。当事者含めて家族も。
話はだいぶ昔の話になるが、どうしても他人の無責任な言葉が産んだ悲劇を紹介したい。

私が超急性期の病院で働いていた時の話だ。CICU、つまり心臓系のICUでの出来事だ。

心不全のおばあちゃんと、その娘さんの話。

おばあちゃんは何度も入退院を繰り返しており、娘さんともそれなりによく話していた。
毎回CICUに入る程の心不全を繰り返しており、状態も悪くあまり動けない。運動負荷もかけられない。
足も元々(何だったか忘れたけど)歩けず、リハビリでめちゃくちゃ介助して数m歩行器で歩く程度で、疲れも出るし全く実用性はない。
でも頭はしっかりしており、トイレに行きたいと訴えはあるため、ポータブルトイレ(ベッドサイドにつけられる簡易トイレ)を使用していた。

入退院を繰り返すうちにポータブルトイレに移ることさえも全介助が必要になっていった。
加えて、かなり体重があり、娘さん1人ではだいぶ辛いことが予想できた。

日本の医療自体、少子高齢化で受け入れ先があまりなく、在宅を推している。
娘さん自身もお母さんの介護を頑張りたい、施設にやるのは可哀想だと、在宅サービスを整えてなんとかやっていた。

その日、またそのおばあちゃんが入院してきた。
危ない状態だったが回復し、近くに娘さんが見えたので声をかけた。(もう顔見知りなので)
軽く挨拶して、「だいぶ回復されて一般病棟に移れてよかったですね。」と言った瞬間、号泣された。

「ごめんなさい。おばあちゃんのこと覚えててくれてこんなに良くしてもらってるのに…。ごめんなさい。私、今回こそシんでくれるんじゃないかと思って期待してしまってたんです。」

辛いだろうなと思っていたので、驚きはなかった。仕事なので早急に対処しないとなという気持ちが強かった。(一通り話を聞き、すぐMSWに報告し、施設退院となった。)


よくよく話を聞くと、介護にはだいぶ前から限界を感じていたが、親戚中や兄弟たちからも、おばあちゃんを施設にやるなんて!親不孝者!と言われていたそう…

これだけ泣かれて謝られたのは初めてだったが、こういう立場の人は結構いる。

こんなに良くしてもらって…という言葉はまずありがたく受け取るが、私たちは仕事なので当然良くします。
お金をもらって決められた時間を働いてるので、ずっと一緒に生活しておばあちゃんを支えている娘さんみたいに朝から夜通しずっとということはありません。私たちは交代制でやってます。
実際に生活する家族が1番しんどいことはよく分かっています。

絶対に責めることはありません。

また、私たちは病態も想像できます。
心不全の患者は、だいたい心臓や肺に水が溜まり、だいたい利尿剤が出される。そして、簡単に説明すると寝た体勢で腎血流が回復するので、夜間頻尿になりやすい。
このおばあちゃんはしっかりしていて、トイレには行きたいと希望がある。
このことがどういうことかというと、この娘さん夜ほとんど寝てません。トイレ介助してるからです。
また、それだけやってれば良いわけでもなく、娘さん自身の生活もあります。

心身共に疲れ果てている時に、当事者でもない親戚や兄弟たちの勝手な価値観で責められたらどうでしょう?
ケアマネジャーに相談する、周りに相談する…普通の状態なら出来たことが、おそらく病んで視野が狭くなり対応できず、ここまでこの人を追い詰めたんでしょう。
おばあちゃんと娘さんの関係は良好だったはずだ。だからおばあちゃんの介護がしたいと頑張ってたのだ。
それが今ではシんで欲しいと願ってしまい、自分もその罪悪感で壊れてしまいそうになる程追い詰められて…

仲の良い親子がこんな関係になるのは悲劇だ。
嫌になった時にサービスを増やしたり、ショートステイ、施設も検討できればここまでの関係性にはならなかったはずだ。

当事者でもないのに、周りがとやかく言う問題ではない。くどいようだが、他人の人生(この娘さんの人生)に責任も持てないくせに自分の価値観(施設に入れるのは親不孝だ)を押し付けるべきでないのだ。
誰か1人でも娘さんの辛さに寄り添い、ケアマネジャーに相談しよう、そんなにしんどいなら施設も考えようと言ってくれてたら何か変わったのかもしれない。

実際には金銭的な理由で難しい人もいる。ことあたりの問題は少子高齢化が進むから、まだまだ続きそうで、解決方法も一つではないから難しい。



長いけど、心不全関連で…
がんは緩和ケアが認められているが、末期の心不全は認められていない。(だいぶ活動されてるので今後は認められてくると思うが)
見てきた側からいうと、めちゃくちゃ苦しそうです。最後はだいたいの人が苦しみながら…です。
最後の苦しみを実際に見たことない人が法律作ってるんだから仕方ないのかもだけど、尊厳死・安楽死に関しても同じように価値観の押し付けは行わず、本人の意志に従えたらと私は思う。
シ=悪と捉えているのは割と日本だけのような気がする。
ヨーロッパや北欧は宗教観もあると思うが、割と受け入れている。
胃瘻造設もせず、だいたい食べれなくなったら人間はそのまま自然に…という日本とは異なった考えが多い。

それだけシを受け入れない国なのに自サツ率が1番高いのはまた不思議な話…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?