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今日の科学 7月5日 クローン羊のドリーが生まれた日

1996年7月5日は、スコットランドのロスリン研究所でクローン羊のドリーが生まれた日です。ドリーは、ある羊の体細胞から遺伝情報を格納している核を取り出し、別の羊の卵細胞に移植した体細胞クローン技術によって生まれた最初の哺乳動物です。

地球上の生物は、DNA上に記された遺伝情報を親から子に、伝えていくことで何世代も命をつないでいきます。脊椎動物のように有性生殖をする生物は、DNAの組み替えが起こり、子は親とは違うDNAを持つことになります。このようにして生物は遺伝的な多様性を維持してきました。

それに対して体細胞クローンは、ある生物の体細胞(皮膚や臓器などの細胞)からDNAを格納している核を取り出し、他の個体の生殖細胞を移植してつくられた生物です。体細胞の核を移植する際は、他の個体の生殖細胞の核は取り除きます。

ドリーは、6歳のメスの羊の乳腺細胞から取り出した核を生殖細胞に移植し、生まれました。DNAはもとの羊とまったく同じで、遺伝的にはもとの羊のコピーとなります。体細胞クローンは、1975年にイギリスのジョン・ガードンがイモリで成功していましたが、哺乳類では難しいと考えられていました。

しかし、哺乳類である羊の体細胞クローンが成功したことで、世界の人たちはとても驚きました。さらに、人間の体細胞クローンも可能ではないかという議論が巻き起こりました。ヒトのクローンをつくることは、人間の尊厳に関わる問題であり、倫理、哲学、宗教、文化、法律など、様々な側面から禁止すべきという判断がされています。

また、ドリーは6歳と、若くして死亡したため、クローン動物短命説もささやかれましたが、寿命は普通の動物と同じであることが確認されています。

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