黒木優太獲得の話

ファンフェスティバル翌日の11月24日、昼過ぎに突然オリックスとのトレードが成立と発表された。吉田輝星がオリックスへ、黒木優太が日本ハムへそれぞれ移籍する事になる。

ファーストインプレッションとしては「夢を追わずに実利を取りに行ったな」という印象だ。吉田はまだ23歳とはいえ175cmと小柄な上に平均145キロ程度で、一軍で51登板した昨季でさえK/9は5.68と平均を遥かに下回っていた。

契約更改での発言通り平均150キロ近くまで持っていければ面白いが、身体的スペックや投球フォームからそう簡単にはいかない。ならばトレードバリューがあるうちに一軍で投げられる投手に替えてしまおうという事だろう。


さて、黒木の話だ。彼は16年ドラフト2巡目指名を受けて1年目にいきなり55登板するも、19年にトミー・ジョン(TJ)手術を受けて22年にようやく一軍復帰を果たした投手だ。

プロ入りしてから昨季まで一軍通算121登板は全ては救援だったが、昨オフに先発転向を志願。今季一軍では4先発/8救援とどちらでも起用されている。

ただ、一軍で最も長く投げたのは救援時の4.2回で、先発時はいずれも5回のマウンドに上がらず60-90球で交代している。二軍でも開幕直後の4月末に7.0回を投げて以降は最長で3.1回までだ。

新庄剛志監督のコメントを見るにまずは先発として期待している様だ。まずは長いイニングを投げる想定で作って貰って、春季キャンプの競争次第でロングリリーフに回る可能性もあるだろう。


[22年] 投球回 26.2┃防御率 2.36┃FIP 3.61
[23年] 投球回 26.0┃防御率 6.58┃FIP 4.10

こちらが黒木の直近2シーズンの一軍での成績だが、投球回はほぼ同じで防御率が大きく悪化しているものの、FIPを見るとそこまで差はない。

22年のBABIP .233/LOB% 84.7→23年のBABIP .388/LOB% 63.6という数字を見るに、(流石に25.0回程度で運の要素が強く)上振れと下振れを引いた感がある。

今季の二軍成績を見ても47.0回で41奪三振/9与四球/3被HRと素晴らしい結果を残しており、充分に一軍レベルで投げられる投手だと思う。

それよりも気になるのがGO/AO 0.61→2.43と、昨季はフライ系だったのが今季は極端なゴロ系に転身している事だ。ここまでガラッと変わるのは偶然ではなく“意思”を感じる。

[フォーシーム] 53% → 43%
[カットボール] 0% → 14%
[スライダー] 11% → 8%
[フォーク] 27% → 22%
[ナックルカーブ] 9% → 13%

という事で球種の割合を調べてみたが、非常に分かりやすかった。TJ手術前も含めて投げていなかったカットボールをレパートリーに加え、少しだがゴロを打たせやすいナックルカーブの割合を増やしている。

ストレートの球速は先発・ロング中心の今季が平均145キロ・最速152キロ、リリーフ専念の昨季が147キロ・最速153キロだ。速球派としては確かに物足りないが、ゴロ投手であれば悪くない水準と言える。


今季リーグ3位の163.1回を投げた加藤貴之が残留したものの、依然として上沢直之が抜ける予定の170.0回(今季リーグ最多)は空いたままだ。仮に交渉中の山崎福也を獲得出来たとしても、今季130.1回なのでまだ40.0回近く足りない。

ここから大物の助っ人先発投手も獲得すると予想しているが、もちろん候補は1人でも多い方が良い。価値としては間違いなく「先発投手>>>救援投手」なので、6歳差というのを加味しても悪くないチョイスだったと思う。

また、ご存じの通り本拠地のエスコンフィールド北海道はそれほど広くない上に、このオフに内野の天然芝を削る事になっている。内野手が守りやすくなるなら、フライ系の吉田よりもゴロ系の黒木の方がフィットするだろう。

正式発表を待って記事を挙げる予定だが、契約合意したと先日報道があった新助っ人候補のパトリック・マーフィーもマイナー時代から一貫してゴロが多い投手である。

本拠地の特徴が変わると共に獲得する選手のタイプも変わるのだろうか?その辺りを気にしながら、このオフの補強を見ていきたい。

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