アンドリュー・スティーブンソン獲得の話

つい先日アニュラス・ザバラの獲得が発表されたばかりだが、早くも次の新助っ人選手の発表があった。MLB通算273試合に出場している29歳のアンドリュー・スティーブンソンである。

21年にはワシントン・ナショナルズで109試合に出場したものの、昨季はMLBでの出場無し。今季はミネソタ・ツインズとマイナー契約を結び、9月にようやく昇格すると25試合に出場した。

年俸は1.1億円+出来高の1年契約との事だが、アメリカでの報道によると25年のクラブオプションが付いており満額では(2年総額)3.4億円になる様だ。背番号は6番

再契約が発表されているアリエル・マルティネス、正式発表はないものの保有者リストに名前があり代理人が契約を仄めかしていたブライアン・ロドリゲス、そして今月契約したパトリック・マーフィーとザバラに次いで5人目となる。


▶ スペック

ここではMLBでのstatcastのデータを使って書いていこうと思う。まず使うのは“スプリントスピード”という指標だ。これは「走塁時に最速で秒速何ft(フィート)で走ったか」というものでMLB平均は27.0ftとされている。 ※1ft=30.48cm。

スティーブンソンは今季29.2ftを記録しており、これはジョー・アデル(29.0)よりも速くフェルナンド・タティスJr.(29.3)に匹敵する数字だ。614人中41位で上位7%以内に入っているのでMLB屈指の俊足と言って良い。

ただし、明確に肩は弱点だ。こちらも“アームストレングス”という「送球時に最速で時速何mph(マイル)のボールを投げたか」というもので今季CFを守った選手のMLB平均は89.4mphである。 ※1mph=1.6km

今季のスティーブンソンは29度投げる機会があって最速80.5mph、遡っても21年は114度で最速82.1mphだ。NPBレベルでも肩の強くなかった吉田正尚でも最速90.5mph出している事を考えるとかなり厳しいだろう。

それでもMLB通算で345.2イニングCFを守ってDRS +4/UZR +2.5/OAA +1と各守備指標でプラスを生んでいるので、やはり守備のレベルは高そうである。

一方の打撃で言うと、MLB通算で打球の平均速度は88.4mphとMLB平均と全く同じ。ただ打球の平均角度が7.1°とMLB平均の12.2°を大きく下回っている。

今季3A級でのデータを見ても87.9mph/9.3°と印象はあまり変わらない。「良い打球は打てているが角度が付けられずゴロが多い」傾向があると言える。


▶ 今季3A成績

[試 合] 106
[打 席] 470
[安 打] 132
[二塁打]   23
[三塁打]     7
[本塁打]   16
[打 点]   57
[三 振]   97
[四 球]   42
[盗 塁]   44
[打 率]   .317
[出塁率]   .394
[長打率]   .522

やはり目を引くのは盗塁数だ。今季は44盗塁で成功率89.8%、昨季も39盗塁で成功率84.8%を記録している。盗塁の損益分岐点は70%程度と言われているので、充分過ぎるほど武器になるだろう。

そして、MLBでは6シーズン通算489打席で8HRの彼がほぼ同じ打席数で2倍の16HRを放っているのも興味深い。しかも、15年にドラフト指名されてから二桁HRが一度も無かったのに、昨季から2年連続16HRなのだ。

NPBの投手のレベルもかなり高いので3Aと同じ様に行くとは思わないものの、走守でプラスを見込めるだけに二桁前後打てる様ならかなり魅力的である。打率.280/出塁率.340/長打率.410あたりで纏めてくれれば最高だ。

ただ、気になるのは左投手とあまり対戦していない事だ。今季は成績がほとんど変わらなかったものの、昨季は3Aで右投手に対して440打席で打率.297/15HR/OPS.877も、左投手に対しては164打席で打率.230/1HR/OPS.596なので苦手意識があるのかもしれない。


▶ トータル

おそらく来季のスタメンを考えた事がある方であれば分かるだろうが、(順番はともかく)清宮幸太郎-万波中正-アリエル・マルティネス-野村佑希らが並ぶ中軸はすんなり決まるものの、現有戦力だと1番打者を選ぶのは難しかった。

昨季首位打者の松本剛が最も収まりは良いが、今季成績は打率.266/出塁率.332/長打率.333はお世辞にも良いとは言えない。彼の復調には当然期待しているものの、候補は多いに越した事はない。

特に今季の日本ハムで100打席以上立った左打者で最もOPSが高いのが清宮(.734)、次点がNPBへのアジャストに苦労していた加藤豪将(.614)なので左打者というのもチーム事情にフィットする。

CFにしても似た様なもので今季最も出場イニングが多かった五十幡亮汰が.521、次点の江越大賀が.577と守備での大きなプラスを半減させる様な打撃だった。

いくら守備の要のセンターラインと言えど、CやSSと違いCFに関しては打撃での貢献が無いと厳しい。とはいえ今季は他の選択肢が少なかったので新助っ人の加入はかなり嬉しい。

[1] A.スティーブンソン CF 
[2] 松本剛 LF 
[3] 清宮幸太郎 1B 
[4] 万波中正 RF 
[5] A.マルティネス DH
[6] 野村佑希 3B
[7] 奈良間大己 2B
[8] 伏見寅威 C
[9] 上川畑大悟 SS

1B/3Bと2B/SSの位置は逆になるかもしれないが、スタメンのイメージはこんな感じだろうか。もしスティーブンソンが左を苦にする様であれば、松本剛をCFに回して右の今川優馬郡司裕也を入れても良い。

山﨑福也の入団会見時に新庄剛志監督がしたコメントを信じるなら、まだ投手と野手それぞれ1人ずつ助っ人を獲得する可能性がある。うまくいけば今季よりも大幅にグレードアップした顔触れで開幕出来るかもしれない。

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