アニュラス・ザバラ獲得の話

先日のパトリック・マーフィーに続き、新助っ人投手の獲得が発表された。190cm/117kgの巨体リリーバー、アニュラス・ザバラである。年俸は1.1億円+出来高で、背番号は42番

ザバラは14年にシアトル・マリナーズと契約すると、ロサンゼルス・ドジャースシンシナティ・レッズフィラデルフィア・フィリーズと渡り歩き、22年にマイアミ・マーリンズで念願のMLBデビュー(2登板)。

今季は3月に6チーム目の所属となるデトロイト・タイガースとマイナー契約を結んだものの、MLB昇格は果たす事が出来ず1年通して傘下3Aでプレーしている。


▶ スペック

彼の武器は何といってもフォーシームだ。マイナーのスタットキャストを見ると、今季の平均球速は158.5キロを叩き出している。とにかく速く、圧のあるボールを投げる。

※少しだけ平均155.8キロのシンカーを投げているが投げ分けているかが微妙。スリークォーター気味の投球フォームなので、フォーシームのシュート成分が多いだけではないかと思っている。

そしてスライダー判定される事もある平均136.0キロのカーブ、決め球になるのはこのボールだろう。左打者に対しては平均146.6キロのチェンジアップも投げている。


▶ 今季3A成績

[登 板] 53
[投球回] 65.2
[被安打] 51
[奪三振] 103
[与四球] 49
[被HR] 2
[失 点] 36
[防御率] 4.25

ご覧の通り、ものすごい量の三振を奪いながら、ものすごい量の四球を与えている。与四球に至ってはほぼ被安打と変わらない数だ。これがどれくらいの水準かというと…

今季パ・リーグの主なリリーバーでK/9(9.0回平均で三振をいくつ奪うか)が最も良かったのは松本裕樹の11.49なのに対してザバラは14.12。一方のBB/9(9.0回平均で四球をいくつ与えるか)が最も悪かったのが宇田川優希の5.91なのに対してザバラは6.72である。

ただ、その球威ゆえか長打を滅多に許しておらず、被打率.210に対して被長打率は.292(ISO .082)と素晴らしい。被HRも今季はたったの2本のみなので、FIPは3.39と意外に良い。

アウトの半分以上が奪三振となかなかフィールド内に打たせず、走者は許すものの単打と四球ばかりなので各駅停車でなかなかホームには還さない…そんな投手だろうか。

ただ、ネックなのはマイナー通算244登板/368.1回でワイルドピッチが70回盗塁阻止率が13.5%(10/74)とランナーケアが絶望的な事だ。いくら長打を許さなくても楽々と進塁を許しては意味が無い。

FIPの割に防御率が1点近く悪いのはおそらくこの辺りに原因がありそうだ。NPBは間違いなくこのあたりを突いてくる筈なので、何とか多少でも改善して欲しいところ。


▶ トータル

クリアしなければならない課題はあるものの…ザバラの加入は日本ハム投手陣に新風を巻き起こす可能性がある。NPBとMLBでは環境が違うので一概には言えないが、今季日本ハムには彼の平均球速(158.5キロ)を出した投手はいないのだ。

【参考】
田中正義
 Max157キロ (平均150キロ)
生田目翼 Max156キロ (平均151キロ)
C.ポンセ   Max156キロ (平均150キロ)
北山亘基 Max155キロ (平均147キロ)
山本拓実 Max154キロ (平均148キロ)

※2023年のみ

更に言えば日本ハムには奪三振能力の高い投手が少ない。今季20.0回以上投げて最もK/9が優秀なのはベテランの宮西尚生(9.13)で、次点はクローザーの田中正義(8.94)だ。

かわすタイプが多い日本ハムのブルペンで、力勝負出来るザバラという選択肢が増えるのは大きい。田中正がフォークが決め球なのに対し、ザバラはカーブなので共存もまったく問題無いだろう。

個人的には「リミッターが壊れたマイケル・クロッタ」というイメージを持っている。入団後にどれだけ制御出来る様になるのか、経験豊富な建山義紀コーチや武田久コーチらに期待したい。

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