アプローチの話

中田翔が居なくなった今…いや、居た時ですら「日本ハムの打者と言えば?」と聞かれれば、多くのファンが西川遥輝近藤健介の名を挙げるのではないだろうか?

SABRで見れば決して傑出した打者ではない中田がシーズン100打点超えを度も記録しているのは、その前を打つ彼らのお陰と言っても過言では無い。

今さらここで紹介するまでもなく、どちらもNPB最高クラスのコンタクト能力と選球眼を有している左打者だ。

※とりあえず話がややこしくなるので、今季の西川の成績は横に置いておこう。きっと来季は復調してくれるはず。

どちらも侍JAPAN(強化試合含む)やオールスターに選出された経験があり、チームの顔として申し分無い存在である。

しかし、それでもまだ「2人はポテンシャルを発揮しきれていない」と感じるのはファンの贔屓目ではない…だろう。おそらく。


とりあえず守備の事は別にいい、2人の持ち味である打撃の事だ。前述の様に優秀な打者ではあるものの“超一流”の域にはあと一歩届いていない。

そして、その原因は彼らの売りであるはずの選球眼、四球の多さに起因するものではないだろうか?

そもそも四球の価値が大きく上がったのはSABRが普及してからで、NPBにおいてはそれほど昔の話ではない。なぜ評価されるかと言えば「安打は実力以外の多くの要素が絡む」からだ。

あるシーズンに高打率を残しても翌シーズンにそれを維持するのはかなり難しい。それに比べれば四球を選ぶ能力は波が少ない。つまり四球の多い打者は長い目で見て計算しやすい打者という事になる。

もっと短いスパンで見ても不調時に何も出来ず4打数無安打で終わるのか四球を1つもぎ取るかで、チームへの貢献度も閉幕時のシーズン成績も大きく変わるだろう。


ただ、いくらコンスタントに四球を選び出塁してもファンの心にはあまり響かない。ファンが見たいのはボールを4球見送って一塁へゆっくり歩く姿ではないからだ。

皆さんはJoey Vottoをご存知だろうか?CINの生え抜きで10年シーズンはリーグMVPに輝き、全盛期は毎年の様に打率.300/30HR/100四球近い数字を記録する理想的な左打者だった。

※余談だが流石にここ数年はやや衰えが見られたものの、38歳になる今季は再びMLBトップクラスの成績を残している。

これだけ確実性と長打力を両立している打者でさえかつては「チャンスでも四球ばかりで走者を還さない」と批判を受けていたのである。西川のキャリアベストが10HR、近藤は9HRと一度も二桁HRを打てていない。

彼らが30HRを打てるとは流石に言えないが15HR…本拠地が札幌ドームという頃を考慮しても毎年コンスタントに二桁HRを打てるパワーは有しているはず。

カウント3-0はともかく3-1ですら(下手すれば3-2でも)バットがピクリともしない場面をよく見るが、「四球待ちで追い込まれたら逆方向に軽打」ならば長打が出ないのも当然だろう。

選球とは本来なら好球必打、ハードヒットする事を目的としているのにも関わらず、今の彼らは四球を選ぶ事が目的になっているとすら感じる。端的に言うと積極的な選球ではなく消極的な選球だ。

なにも長打はHRだけじゃない、西川の疾走感のある三塁打近藤の技ありの二塁打をもっと見せて欲しい。長打が増えれば相手バッテリーが警戒してボール球が増え、結果として四球も増える。

現役時代は常にフルスイングしながら打率・出塁率争いを繰り広げてきた、小笠原道大コーチという最高の教材もすぐ近くにいる。

記録だけでなくそのプレースタイルで記憶にも残った“ガッツ”の様に、ファンの心を打つプレーヤーになって貰いたい。彼らならなれるはずだ。

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