「加藤豪将でポジれ」の話

今年の日本ハムの指名について各媒体のドラフト採点では「平均~やや上」程度が多く、世間的にはそれなりに評価されている様だ。 ※あまり当てにするものでもないが

しかし、ファンの評価はそれほど良くない。最大の争点となっているのはNYM傘下3A級に所属する加藤豪将を3巡目で指名した事だろう。

このnoteで事前に行った指名予想でも6巡目だった様に「下位指名でも獲れる」と思っていたからだ。それでもファンの下馬評はあくまで外から見たものだ。

例えば立教大の山田健太を代わりに3巡目指名していれば(僕も含め)良い指名だと高評価していただろうが、他11チームは下位ですら指名する気は無かった。

ドラフト後には大渕スカウト部長が他チームとの駆け引きがあった事を認めている。「5-6巡目では残っていない」と判断したのだろう。

ちなみに、日本ハムの3-4巡目の後に指名された選手だと、門脇誠は良い選手だが昨年指名した水野達稀と同い年な上に、カタログスペックが似通っているので指名しにくい選手だった。

田中幹也(中日)も噂の通り順位縛りがあったのならこちらではどうしようも無かった事だろうし、無かったなら“単純にどこも評価が低かった”という事だ。

それ以外に「加藤豪より欲しかった」と言える選手は居ない。今年のドラフトでどうしても即戦力の二遊間が欲しければ、ここで指名するのはある程度理解出来る。 


25歳以上の選手を指名すると稼働年数の事を指摘されがちだが…18歳(高卒)で指名しようが、22歳(大卒)で指名されようが、お試し期間ではなく戦力として一軍で複数年プレー出来る選手などほんの一握りだ。

加藤豪に関してはとりあえず来季から5シーズン一軍戦力になってくれれば良いと思っている。それでもまだ32歳と老け込む年ではないし、7シーズンで国内FA権を取得してもまだ34歳である。

遡ると日本ハムは04年ドラフトで事前にテスト入団を受けていたMICHEALを4巡目で指名している。加藤と同じくMLBでプレーしていた選手で、指名時は27歳だった。

※当時のルールでは自由枠を使わないチームは2巡目の指名権が無かったため、4巡目といいつつチームとしては3人目の指名となる

彼は日本ハムの他にもロッテの入団テストを受けていたため順位を繰り上げて指名したというが、今この指名に不満を感じる人は居ないだろう。

08年ドラフト外れ外れ1位で指名した多田野数人にしてもそうだ。マイナー時代に監督と選手の関係だったマーティ・ブラウン監督率いる広島が興味を示していた。

多田野の成績は1位指名として特筆すべきものではなかったが、同年に他チームが1位指名した選手達と比較すると良くやってくれた。加藤豪も数年後に評価されている可能性は決して低くない。

また、SNSで積極的にファンと交流したりチームメイトにも良い影響を与えている伊藤大海今川優馬とタイプも似ており、マイナー最下層から10年かけてMLBの舞台に立った彼の経験を若手達に伝えてくれる事にも期待だ。


さて、ここらは肝心の成績について書いていこうと思う。20年にマイナーリーグ中止があったので対象は21-22年シーズンとする。

まずは守備面について。膨大なデータが無料で見られるMLBだが、UZRやDRSなどの守備指標はマイナーリーグだと公開されていない。

しかし、Baseball Prospectusが公開している守備指標“FRAA”は比較的信頼出来るとされている。ポジション別ではなくトータルの数字しか分からないのが難点だが。

加藤豪の3A級でのFRAAは21年が-3.9・22年が+0.1だ。守備指標は元々揺れが大きいのでこれくらいは許容範囲内ではある

…が、各年のポジション別出場機会を調べてみたところ印象が変わった。こちらをご覧いただきたい。

2021年FRAA -3.9
[1B] 41試合 / 288.1回
[2B] 43試合 / 327.0回
[3B] 02試合 / 017.0回
[LF] 22試合 / 148.1回
[RF] 01試合 / 002.1回

2022年FRAA +0.1
[1B] 10試合 / 068.0回
[2B] 67試合 / 570.2回
[3B] 01試合 / 006.0回
[LF] 05試合 / 043.0回

22年は2Bでの出場が80%超だったが、21年は2Bよりも1B/LFでの出場が多かった。1BはともかくLFはそれまでに通算10試合しか経験していない。

ひとまず2Bに関しては無難に守れるのではないだろうか?来季から本拠地が天然芝のエスコンフィールド北海道になるが、それに慣れているのも大きい。

1B/LFと(19年までは守る事の多かった)3Bをどの程度守れるのかがカギになるだろう。若い選手が多いだけにユーティリティ性能は大事な要素だ。

ちなみに、今季加入したアリスメンディ・アルカンタラのFRAAは昨季が-5.6・19年が+3.8と、加藤豪以上に波のある数字になっている。


続いて打撃について。こちらが21-22年の3A級での打席数とスラッシュラインである。おまけにマイナー通算も併記した。

【年 度】打席/打率/出塁率/長打率
【2021】0402/.306/.388/.474
【2022】0329/.219/.305/.377
【通 算】3331/.255/.353/.387

21年は好調・22年は不調、そしてマイナー通算はその中間くらいと非常に分かりやすい結果が出ている。マイナー通算IsoDが.100近くあり、MLBの舞台でも僅か11打席で3つの四球を選んでいる四球奪取能力が持ち味だ。

待球を嫌いカウント3-0からでもスイングする事を求める監督との組み合わせはさておき、コンスタントに四球を選べる打者は不調時でも最低限の貢献をしてくれる。

キャリアベストでも11HRと長打力はそこまで無い。打球の割合を見てもフライよりゴロが多く、数年前からのトレンド“フライボール・レボリューション”は取り入れていない様だ。

ただ、動きの少ないシンプルな打撃フォームながら捉えた打球は目を見張るものがある。20だ30だとは言わないが、NPBで15HR前後打てる能力は充分あるのではないか。


と、ここまで色々書いてきたが、要するにドラフト終了後に投稿したnoteのこの一文なのだ。

日本人登録の助っ人を獲得した」と考えれば納得できなくもない。

2B中心に複数ポジションを守れて、19年も含め3A級通算OPS.793の結果を残している今季MLBデビューした28歳」は普通に助っ人として通用するレベルなのである。

その上、(アメリカ育ちながら)日本語で問題なくコミュニケーションが取れて、助っ人枠を使う必要が無いのだからもっと評価されて然るべきだと思う。

来季の助っ人陣容はコディ・ポンセコナー・メネズが既に契約を更新し、ここまで帰国していないならジョン・ガントも契約だろう。投手はこの3人を基本線にしていると考えて良い。

となると、一軍助っ人5枠のうち野手に割けるのは2人。1億円超で契約したアルカンタラが確定なら一軍に置ける野手助っ人はもう1枠しかない…が、それに加えて加藤豪が居る。

アルカンタラと加藤豪にユーティリティ性能があるおかげでスタメンの柔軟性はかなり高まったので、打線の軸になるスラッガーを獲得出来れば面白いラインナップになりそうだ。

本当に偶然だがこのnoteを投稿した本日(10月27日)NYMがリリースしたため、これから球団側と本格的な交渉に入る。おそらくは無事に入団してくれるだろう、新球場でプレーする姿を見るのが楽しみでならない。

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