ジェームス・マーベル獲得の話

交流戦最終日となる6月19日、29歳のジェームス・マーベル(James Marvel)の獲得が発表された、背番号は「31」との事。先月のアレン・ハンソンに続いて2人目の途中加入となる。

彼は15年ドラフトでピッツバーグ・パイレーツに36巡目(全体1087位)で指名されると、19年にMLBデビューを果たすも4登板で結果を残す事が出来ず、その後はマイナー暮らしが続いていた。

昨年はフィラデルフィア・フィリーズの3Aで、今年は独立リーグで1登板した後にテキサス・レンジャーズとマイナー契約を結び3Aで投げていた。※今月11日にリリース


▶ マイナー通算7シーズン

[登板] 158 [投球回] 762.2 [防御率] 4.22
[K/9] 6.67 [BB/9] 2.80 [HR/9] 0.73

マーベルは簡単に言えば「193cmの長身から平均145キロの速球とチェンジアップ・カーブを低めにコントロールよく集めてゴロを打たせる投手」だが、彼の最大の特徴は“スピン量”だ。

速球は(1分あたり)2200回転が平均とされており、それが多ければ多いほど注目されがちだ。18日に登板したカーター・スチュワートは2700回転超を記録したというが、今季のマーベルはなんと1854回転しかないのである。

大事なのは「スピン量が多い事」ではなく「平均から離れている事」である。ここまで少ない投手はかなり稀で、その特徴を存分に活かした投球が出来れば大きな武器になるのだ。

彼の速球やチェンジアップは縦方向の変化が大きい…つまりボールがよく沈むためマイナー通算GO/AO 1.40と非常にゴロが多く、(アメリカでは)高校生並みの平均球速にも関わらず長打を防げている。


さて、問題はSNSでも言われているが直近の成績が良くないという事だ。今季だけなら「サンプルが少ないから」でスルー出来るが、良いと言えるのはMLBデビューを果たした19年まで遡る。

▶ 2023シーズン(3A)

[登板] 4 [投球回] 17.1 [防御率] 8.31
[K/9] 5.63 [BB/9] 4.50 [HR/9] 0.38

▶ 2022シーズン(3A)

[登板] 35 [投球回] 93.2 [防御率] 6.05
[K/9] 5.96 [BB/9] 2.98 [HR/9] 0.77

▶ 2021シーズン(3A)

[登板] 25 [投球回] 131.2 [防御率] 5.26
[K/9] 6.70 [BB/9] 3.69 [HR/9] 1.44

▶ 2019シーズン(3A)

[登板] 11 [投球回] 60.2 [防御率] 2.67
[K/9] 7.86 [BB/9] 3.26 [HR/9] 0.59

※20年はマイナーリーグ中止

そこでstatcastで19年と23年の投球スタイルを比較すると、いくつか変化が見られたので箇条書きしてみる。

【1】速球
19年はシンカーを32.9%・フォーシームを20.8%と投げ分けていたが、23年はシンカーが3.9%とほぼ投げなくなりフォーシームを31.7%まで増やしている。ちなみに今年は(誤判定でなければ)カッターも3.4%投げている

【2】チェンジアップ
19年には19.9%しか使わなかったが、23年は29.9%と割合を大きく増やしている。また、元々136キロだった平均球速が139キロになり、スピン量も200回転ほど多くなっている。

【3】カーブ
元々は縦変化も大きいボールだったが、横変化はそのままに縦変化が少なくなっている。こちらも平均球速が128キロから130キロと僅かながら上がっている。映像を観てもほぼスライダーだ。

個人的には以前のシンカー主体の投球に戻して貰いたい。“打たせて取る”という事はバットに当てられるボールなので、出せる手札は1枚でも多い方が良いだろう。コンタクト重視のNPBなら尚の事である。

今季投げているカッターも使えそうなら本格的にレパートリーに加えるべきだと思う。19-21年に西武でプレーしたザック・ニールの様になってくれたら最高だ。


シーズン途中に加入した助っ人がすぐに結果を残し、翌年の契約を勝ち取るのはかなり難しい。ただ、今季のレンジャーズの3Aには筒香嘉智がいて、金子千尋特命コーチもマイナーに出入りしている。おまけに(3Aの)ヘッドコーチは元ロッテのチェイス・ランビンだ。

あらかじめNPBの情報は仕入れている可能性は高いだろうし、20-21年にパイレーツの3Aで同僚だった1つ年下のコディ・ポンセがチームにいるのも心強い。

そのポンセが再来日したとはいえ依然として投手陣に故障者が多いので、単純に投手の頭数が増えただけでも助かる。ましてや現時点で一軍に助っ人投手が1人もいないのだ。

(薄情な書き方だが)この格の投手なら通用しなければオフに後腐れなく自由契約すれば良いし、通用する様なら今オフに起こり得る「加藤貴之と上沢直之のW流失」のダメージを軽減出来る。

日本の独立リーグにいたハンソンとは異なり合流まで暫く時間はかかるだろうが、少しでも早くチームに貢献して欲しいものだ。※6/20 9:45修正
既に鎌ヶ谷に合流している様だ

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