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春の妖精たち(Spring Ephemeral)

寒さが少しずつ緩んで暖かな日差しが冬の冷たい空気を押し出すころ、日本では淡い花の季節が始まります。ぱっと華やいで、またぱっと散りゆく桜は世の儚さを見事に体現している美しい花と言えるでしょう。

そんな儚き存在だからこそ、また愛されるもの。
桜は日本の慣習とも相まって、3月や4月の『別れと出会いの季節』に見事にマッチしているからこそ、愛されているのかもしれません。

そんな桜の季節よりも少し早い、早春の儚き花々。
それが『春の妖精』とも称される春植物、スプリング・エフェメラル
今回はそんな寒さにもめげずに我々に春をいち早く告げてくれる愛おしい山野草たちの紹介。

『スプリング・エフェメラル』とは

スプリング・エフェメラル(春植物)とは早春に土から顔を出して花が咲き、夏まで葉をつけ、その後は再び地下で過ごす一連の山野草の仲間。

とても色彩豊かに咲き、寒さに負けないように地下に根茎や球根をもつものも多く、小柄ながらも生命力に満ち溢れたとても大きな存在です。

フクジュソウ

福寿草、Adonis ramosa、キンポウゲ科フクジュソウ属の多年草。
フクジュソウは細かくは4種類に分けられるそうですが、エダウチフクジュソウを一般的に『フクジュソウ』と単に呼ぶらしいですが、スプリング・エフェメラルの中では一目散に咲き出す最もポピュラーな山野草です。

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日が昇りだすと日光を集めるためお椀型に花を開き、その黄色に美しく咲く様は名前のとおり福をもたらしてくれるよう。
花言葉は『幸せを招く』『永遠の幸福』。

野山に咲く黄色い花はたいへん美しく目立ちますが、埼玉県秩父地方でみられる固有種『秩父紅』は幻のフクジュソウとも言われオレンジ色に咲き鑑賞者を楽しませてくれます。

セツブンソウ

節分草、Eranthis pinnatifida、キンポウゲ科セツブンソウ属の多年草。
2月に真っ先に咲き始めるセツブンソウは日本固有種であり、本州の石灰岩帯を好む傾向があります。

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寒さが残る早春に可憐で健気に咲くセツブンソウは人気が非常に高く私も大好きな花ですが、残念ながら乱獲や環境の変化によって今では希少な春植物で環境省のレッドリストに入っています。
花言葉は『微笑み』『人間嫌い』など。

アズマイチゲ

東一華、Anemone raddeana、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。
高さ15~20㎝ほどで、白い花弁は3,4㎝で実はセツブンソウと同様に萼片にあたります。主に日本全国の落葉樹林などの山林、草地に生えます。
アズマは『東』で関東の意。

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よく似た『キクザキイチゲ』は本種の葉が深く切れ込んでますが、アズマイチゲは深い切れ込みはなく、さらに花の中心部が紫色になっています。花は酷似していますが葉の形が大きく違い、私はキリっとした印象のキクザキイチゲ、ふわっと柔らかい印象のアズマイチゲとして記憶しています。

カタクリ

片栗、Erythronium japonicum、ユリ科カタクリ属の多年草。
高さ10~15㎝ほどで、薄紫や桃色の花が下向きに咲く。なかには『シロバナカタクリ』という白い花をつけるものもあります。カタクリの咲く林床にはニリンソウやアズマイチゲなども咲くことが多く、春の美しい共演が鑑賞者を楽しませてくれます。

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花言葉は『初恋』。カタクリは下向きに花が咲くことから、『恥じらいによりうまく自分の気持ちを伝えられない乙女』を連想させることから。
うつむいて咲くにということでほかに『寂しさに耐える』という花言葉もあります。

そのほかのスプリング・エフェメラル

上記で取り上げた他にもたくさんの種類があります。

・キンポウゲ科…キクザキイチゲ、ユキワリイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウなど
・ケシ科…ムラサキケマン、エゾエンゴサクなど
・ユリ科…キバノアマナ、ヒロハノアマナなど

スプリング・エフェメラルでない春の山野草

スプリング・エフェメラルは雪解けとともに咲く春植物ですが、同じ時期に花を咲かせる山野草でもスプリング・エフェメラルに含まれないものもあります。

同じような時期に咲くので間違いやすいのですが、あくまでスプリング・エフェメラルは新緑や夏の間はもう地上部は枯れて、地面の中でじっとしている植物。

雪割草として知られるミスミソウをはじめとして、ザゼンソウやシュンラン、クマガイソウ、ミヤマカタバミなどは夏の間も葉を茂らせています。

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