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オレンジな日に思い出す高校時代の本当のお話


夕日でオレンジ色な 放課後の音楽室でピアノを弾いていたら
そのオレンジより派手な 金髪の武彦が入ってきた
隣のクラスでたまにしか見かけない彼は
何に怒っているのかいつも 怖い顔して
友だちと一緒にいても 笑った顔を見たことがなかった

音楽室に入って来た彼は 何も言わずに すぅっとピアノの横に来て
じーっと私がピアノを弾くのを見てた
話したことないし戸惑っていると
「ねぇ アレ弾ける?」 「は、はい」
(確か一個上だっけ?? あんまり学校来ないんだよねこの人)
リクエストに応えて弾いた曲は
彼の見た目からは想像できなかった

ちら、と横を見ると 頬杖をつきながら私を見つめる目
(え 笑ってる・・・)
見たことが無いやさしい顔で
金髪が光に透けて天使みたいに 微笑んでた

思わず指が止まり 気がつくと彼の顔が目の前に
ほんの一瞬だったKISSは とても甘くて長い時間に感じられた
「ありがとうな」私を抱きしめる手が暖かかった
部屋を出て行く後姿に 「行かないで」って気持ちになったのは
なぜだか涙が止まらなかったのは
彼が居なくなることを予感していたからなのだろうか

次の朝 彼がこの世界から消えたことを聞かされた

あのとき彼になにがあったのかはわからないけど
私は良い想い出になれたのかな
そうだといいな

------今日みたいなオレンジの日に思い出す高校時代の本当のお話

イラスト作者: 歩夢さん


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