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コロナ下の葬式(曹志編)

 第9期(1998年-2003年)の全国人民代表大会常務委員会副委員長を務めた曹志が、7月1日に亡くなった。故人には何ら知識もなく、また興味もないが、新コロ以降初となる副国級の葬式なので、念入りに内容を確認しておく必要がある。

 まず、中国共産党大物御用達となっている八宝山革命公墓での葬式開催なのに、「中共中央の委託」で代表者のみが参列している点が興味深い。

 今回の代表者は栗戦書だ。現在の全国人大常務委委員長なので彼が最適だろう。

 不完全ではあるが、過去に「中共中央の委託」で常務委員が葬式に参列した例をいくつか見つけた。

 2005年に巴金が上海で亡くなった際、駆けつけたのは当時全国政協主席の賈慶林だった。全国政協副主席を4期務めた故人には、賈慶林がふさわしい。

 2008年1月に開催された張立昌の葬式で、習近平、王剛、李源潮、令計画が参列している。張立昌は天津市委書記を前年退いたばかりだった。任期中から体調がよろしくなかったのだろう。

 胡錦濤のサポートで、お見舞いにも行かせていた王剛、王の後任で中央辦公室主任の令計画、そして総書記後継者の習近平など、豪華メンバーだ。

 2019年3月に開催された毛致用、9月に行われた葉選平の葬式では、いずれも汪洋が参列している。前者は両会の開催中だったが、副国級の葬式は両会に優先することがわかる。

 毛が第9期全国政協副主席、また葉が同期の第一副政協主席であったことを考慮すると、汪以上の適任者はいない。

 今回と異なるのは、葬式が上海市、天津市、湖南省で開催された点だ。

 リスクヘッジの観点からだと思うが、常務委員が複数で地方に出かけることはまずない。第19期中央委員会の発足と同時に、常務委員が第1回党大会の聖地を訪れるべく、上海に全員で出かけたことがあったが、これを除けば2人以上で北京を離れたのは2回くらいしか記憶がない。

 なので、地方で副国級以上の葬式があった場合、今後も同じように「中共中央の委託」を受けた代表者が葬式に参列するものと思われる。

 鄧小平の散骨に、胡錦濤が委託を受けて同席しているが、これはヘリかセスナに乗る必要があったので、スペース的な問題だから仕方がない。北京開催で代表のみが参列するのは初めてではないか。

 趙紫陽の葬式にはこれまた賈慶林が参列しているが、当人の扱いが微妙なためか党中央の委託ではなく「代表中央領導同志」なので、除外しておく。党中央の総意ではないとも読めるからだ。

 次に栗戦書と遺族の距離が遠い。

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 通常であれば遺族と握手して回るのが常だが、今回は距離を取ってお悔やみを述べ、遺族が抱拳で応えている。映像で最初に話しかけられている遺族は耳が遠いのか、お言葉を聞き漏らすまいと顔を栗に近づけている。

 いうまでもなく、どちらも新コロ対策だ。栗戦書や遺族はもちろん、映像に出てくる列席者まで全てマスクを着用している。

 天津でも、湖南でもなく、住まいから10キロ先の葬式にも出ないとか、北京市は領導が外出を控えるような状況にあると言えるのではないか。それくらい、北京開催の葬式なのに「中共中央の委託」は珍しい。

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 なお、江沢民と胡錦濤は仲良くお花を出していた。昨年、李鵬の葬式に外地からお花を送っていた胡錦濤が元気になったことは喜ばしい。

 つい2、3日前に開催された申紀蘭の葬式では、江沢民の名前は出てこず、不義理な奴めと思っていたところなので、まずは喜ばしい。


==参考消息==
https://tv.cctv.com/2020/07/01/VIDEc6LIfJaLh1aG2UDIkeU8200701.shtml
https://tv.cctv.com/2020/07/03/VIDEWVRjGQA31CA05H5aJsBV200703.shtml
http://news.southcn.com/china/zgkx/200501290239.htm
http://www.shanghai.gov.cn/nw2/nw2314/nw2315/nw4411/u21aw124285.html
http://news.sina.com.cn/o/2008-01-17/072913275340s.shtml
http://news.sina.com.cn/c/2010-03-09/212517190853s.shtml
http://tv.cctv.com/2019/03/09/VIDE3TYnA4MaU8oMlxDVcZ6C190309.shtml

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