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【オタクとの遭遇】

あおと 高1  50Fr

中2男子からの体験希望。
どんな子かをスイムレコードで調べると50mのベストタイムは30秒。
100mは1分1秒。
ん?なにこのラップ。
興味を惹かれて体験をオッケーした。

当日やたらヒョロ長い男の子が母と一緒にやってきた。
スイミングには所属せず部活しかしていないらしい。
冬はとりあえず走ってたと。

一通り話をし、流れを説明した。
「目標はある?」
と、何気なく聞いたら、
「僕、全中に行きたいです。」
まっすぐ、目を見て真剣に言ってきた。
あまりにも真剣だったから更に興味を惹かれた。
「全国大会ってのはそんな簡単じゃないよ?今11月。あと8ヶ月で50mを5秒上げないとね!」
「はい!わかりました!!」

あら、、わかったのね。。。
複雑な心境のまま彼の泳ぎを見たら、ど素人。
でも、なんか浮いてるし手が長い。
よし、やるか!

それから半年後の県中学総体で彼は50m自由形を25秒2で泳ぐ。そして惜しくも全中を逃し、人目も憚らず大号泣することとなる。
本人、あまりにショックすぎて、
「コーチ、俺高校でテニス部に入る」
って言った時は、、、申し訳ないが少し笑ってしまった。
真っ直ぐ真剣でよろしい!

「でもさー、高1で国体行ったらさー、インスタ荒れるよ?モテまくるよ?」
と伝えてからは水泳一筋となる。

そして高1の夏、国体標準まであと0.2秒。
ライバルは2人。
たった1枠をかけて争うことになる。
勝たないかんなぁ。。

しかし、僕には作戦がある。
彼は日本一飛び込みが下手くそな25秒なのだ。
去年の6月のスタートは手をこめかみの位置で挟んでキレイなストリームラインを予め組んでから飛んだ。
「コーチ、こっちの方が飛びやすい🎵」
「う、うん。。」

そんなド素人を今年の6月中旬から集中的に鍛え抜いた。
と、言ってもただ蹴り方を教え込んだだけだけど。しかも初歩的な【親指を最後まで引っ掛けてから蹴る】ってことだけ。
そして、彼は25m通過のアベレージが0.4秒上がった。
「いけるー!これなら23秒は出ます!!」
「お、おう、確かに…」

オタクは素晴らしい。
彼に出会ってから僕の中でオタクの評価爆上がり。
たとえ、
五等分の花嫁の映画を見たその日に号泣しながらプールサイドを歩いてきて、僕の前で泣き崩れたとしても。
大切なレースの入場ポーズがジョジョ立ちだったとしても。
それでも、自分の意見をストレートに表現し、誰にでも分け隔てなく接し、人目を憚らず号泣するその素直さと純粋さとレベチな妄想力が素晴らしい。

さぁ、国体獲るぞ!
インスタは荒れんけどな。
あれはウソや…ごめん。

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