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クリスマスソングのBGM、禁止で。

 クリスマスソングが嫌い。

 自分がクリスマスを楽しみにできるほど恋愛経験が豊かではないというのもあるのだけど、決まった時期に決まった需要で消費される音楽にあんまり関心が持てないというのが何よりも大きな理由である。

 11月下旬から12月25日にかけての街は、付和雷同を極限まで煮詰めたような様相を呈している。カフェ、薬局、デパート、ラーメン屋とどこを通ってもクリスマスソングが流れている。どこへ行ってもみながみな決まったクリスマスソングを一定期間エンドレスに流し続けている状況下では、それが人々の心の中に甘酸っぱい思い出を想起させるようなどんな優れた楽曲であっても、何も感情が湧かなくなる(ごめん、キャリー、達郎、由実)。

 ところで流行をいくつかの要素に分けるとするなら、そのうちの一つには確実に「暴力」が入ってくると思う。

 流行は、キャッチーなフレーズの定型句や恐怖の感情を使って一定期間、人々の思考の一角を占有してしまう。そしてその輪の中に入る気がない人間を、罪の意識もなしに仲間はずれにしてしまうのだ。何かがブームになっている時、その流行に乗れている人同士は決まったフレーズを使って面白おかしく会話ができるが、乗っていない人には自分たちが息を吐くように使っているフレーズについていちいち説明しないといけなくなる。すると会話が面倒臭くなるので、分断が生まれる。そういえば1年半ほど前だったか、日本中が「全集中」という言葉を使っていたな。私は忘れていないぞ。周りの人間が発するそのセリフをずっと半笑いで黙って聞いてたからな。

 まあ厳密に言えばクリスマスは流行ではないのだが、クリスマスソングに対してさすがに食傷気味になってしまっていたので、少しぼやいてしまった。店で流れるクリスマスソングや流行歌の何が罪深いって、多くの場合、それが流したくて流されているわけでもなく、聴きたくて聴かれているわけでもないってところなんだと思う。「無難なチョイス」を狙ってとりあえず流されているものを、食事や買い物のために訪れた客が聞き流しているだけ。どこまでも主体性がない消費のされ方をしているうちに、私のように気が短い人はうんざりしてしまう。『All I Want For Chrismas Is You』も、『恋人がサンタクロース』も時々思い出したように聴けばすごくいい曲なのに。

 

 

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