ひとりごと 〜街の風景〜

電車の車窓から外をぼんやりと眺めていたら、
駅のホームで電車を待つ女性の姿に目がいった。

女性は小さなバッグの持ち手を両手で抱えて
ひたすらに正面を見据えるポーズをとっている。
電車を待つ人間のポーズとしては、
別段変わったことはないように見受けられるが、
しかしよく考えてみると
そのような「電車の待ち方」は
今の時代には何か違和感を感じてしまう。

「その違和感」はなんなのだろう。
「何かが懐しく、新鮮に見える」なぜなのだろう。

そうだ、それは携帯電話がかつてなかった時代の
「待ち人を待ちわびる待ち合わせ」のポーズだ。

その昔、人々は老若男女を問わず
待ち合わせ時にはひたすらに姿勢を正し、
遠くに焦点を合わせ「ひたすらに待つ」という行為をしたもの。

特に思い浮かぶのは、
若い女の子が小さなバッグの持ち手を両手でしっかりと握りしめ、
そわそわとしながらデートか何かの待ち合わせをしている光景。
初々しい、微笑ましい、そんな風景は
かつては街中にありふれたものだったのに、
いつの間にか、ほぼ消滅した風景となってしまった。

今時の待ち合わせは
「スマホをいじりながら徹頭徹尾下を向いている」のが
ごく普通の風景だろう。

正面を見据えて遠くに焦点を合わせて
待ち人を待つ人は今はいない。

さっき見た女性は
ただ単にスマホを忘れたか、修理に出しているだけの
一時的な行動だったのだろうな。きっと。

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