無題 Enter

 ありがちな夜が来る
夕暮れる紅に沿う心拍数と、ゆっくり下降するフィラメント。
その明滅に指を這わせ、擦る

ちっともあかるくはならない癖に。

 沿線上のスイッチを行ったり来たりする様はなんだか壊れた子どもの玩具みたいで、可笑しいと思えばぷん、と熱量があがってしまった。

俯瞰する私を侮辱するように、汚すように。
トクントクン、と明滅する。
灯は熱を持ち回転が速くなる。
ー此処にいる私ーが下降していくのか、或いはあの拍動のトルクが上昇するのかはわからない。
ただじくじくと赤銅色に焼け切れそうなフィラメント。

長く続く夏の夜の湿度にも似た劣等感
じわ、と夜の空気に蕩けた。


 外を見るといつの間にか紅は翠に犯されていて、人工的な街燈がポツポツと咲いている。
それはなんだかこのどうしようもない回路に似ていて、ふわり、と

エモがはためいた。


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