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忘れ得ぬ心の風景(My favorite notes)

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琴線に触れる、忘れ得ぬ記事をこのマガジンに集めました。ご執筆くださったクリエイターの皆さま、大切な記事を本当にありがとうございます。ご縁頂けましたこと心から感謝申し上げます。
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#エッセイ

母の旅路に 寄り添う

「私、ここに泊まる、母さんの傍で寝るわ」 死に装束に身を包んだ母を、しんみりと見下ろす。 「えっ、俺はホテルに泊まるよ」 夫は、たじろぎ私の顔色を伺っている。 「いいわよ、かえって母さんと二人きりの方がいいわ、母さんには寂しい思いさせたから、最後は2人きりでいたいの」 夫は安堵の色を浮かべる。自分もここに泊まることを強要されるとでも思ったのだろう。 「そうか、いくらお義母さんとはいえ、死んだ人と同じ部屋で寝るのは、ちょっとね」 ここは、葬儀社の遺体安置室。 約十二畳程の和室

風になったあなたを

今日は命日。 愛する者を看取った日です。 十三年経ちました。早いものです。振り返ると私を取り巻く環境は随分と変わりました。心境だって移ろいゆくのです。 けれど、思い出す光景は色褪せない 今もハッキリと蘇ります  ⭐ ⭐ ⭐ あの日、朝食を終えると眠くなりました。 どうしたのか。確かに睡眠不足の日々が続いていました。それにしても異様な眠気です。 『オレ、ちょっと寝るよ』 「いいわ。寝てて」 ふと目覚めます。ベッドの上でミドリ。呼吸が浅い。これはいかん。血の気が引き

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