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ハヤカワ五味さん&こばかなさんのトークをヒントに「心のベストテン」を紐解くよ

 6/30 土曜日の、Cakes Noteフェスのレポート。
この記事がnote初投稿なのでちょろっと自己紹介から:

・私は1989年生まれ、現在会社員。
映画の話をするブログをやってるよ。 
・WOWOWぷらすとのアーカイブを観るのが好きで、大谷さんや柴さんのトークが自分にとっての良い学びになってきていた。
   
今回は「心のベストテン」公開収録が一番楽しみなのでそれ目当てでチケットを取ったけど、他のトーク内容もきっと自分にとって刺激になるはずだということで午後イチくらいに会場入りした。

フェス形式のトークイベントって、いろんなテーマの話が聞けるからこそ良いんだと思う。特に、ハヤカワ五味さんとこばかなさんの「誰を幸せにするデザイン?」で語られていたことを踏まえると「心のベストテン」の内容がよりよく咀嚼できるように思えた。そのことを具体的に書いていきたい。


デザインは課題解決の手段 → 音楽もそうなのかも!?

 まず、「誰を幸せにするデザイン?」を聴いて大事だと感じた点を自分なりに3つ挙げたい。

 1. デザインは、課題解決の手段として位置付けられる。
 2. 現代ではみんなが同じコンテンツのターゲットにはなりにくい。コミュニティぞれぞれにおける流行が興る。
 3. 複数のコミュニティに属して、視野を広げてバランスを取って行くことが大事。

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ハヤカワ五味さんとこばかなさんのトークは、親しみやすい雰囲気かつ情報量が多く、深く頷くポイントがたくさんあった。で、上記を3点を踏まえて音楽の話に軸足を移していこう。

今の時代のポップミュージックを「音楽的なデザインが楽曲として具現化されたもの」と捉えれば、やはりそれは何かしらの課題を解決するための手段として捉えることが可能だと思う。

「自分の心に沸き起こった感情を何かに具現化して世の中に拡散させたい。けど、多くの人にすぐ届けられるような方法は持っていない」という課題に対し、音楽は有効な解決策として作用してきた。手紙に綴られたような丁寧なメッセージを、私たちの心と体が思わず弾むような (あるいは時にはチルするような)リズムに乗せて届けることに成功してきた。


This is AmericaとHINOMARUのデザイン

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 開演前からPA卓付近のソファーのあたりでスタンバイしていた柴さんと、上手ドアから登場した大谷さんがテーブルに着き、心待ちにしていた「心のベストテン」公開収録が始まった。

cakesでの連載で取り上げてきた内容が「予言」として的中してきたことを振り返りつつ、Childish Gambino「This is America」の話が取り上げられた。2018年上半期 (そしてもっともっと大きなターム)を振り返る上で外せない一曲だ。

何らかのメッセージを発信したい人が直面する「世の中の矛盾・欺瞞・問題点を告発したいが、埋もれさせたりスルーされたりするわけにはいかない」という課題に対してChildish Gambinoことドナルド・グローヴァーは、
 ・ 肉体性のあるリズムの楽曲に
 ・ 凄惨な光景が「楽しさ」で覆い隠される米国の現状をビデオにして乗せ
 ・ 強烈なインパクトの作品として結実させる
という要件定義〜デザインをして、成果である「This is America」を世に突きつけてきた。

その結果が投稿から2ヶ月で3億回を超えるYouTubeのMV再生回数であり、チャンス・ザ・ラッパーのライブでのコラボで大熱狂する少年少女たちの姿だった。


一方でRADWIMPS「HINOMARU」について。
この曲についての柴さんの話を聞いて納得がいったのだけど、サビの歌詞を読めばわかるように「台風にも津波にも挫けない、日本を愛している」という曲だと捉えられる。

野田洋次郎さんの意図を推察すると「愛国ソングを作りたいが、軍国主義や尊皇論は切り離したい」というテーマがおそらくあり、震災をはじめとする自然災害に屈しない日本人の姿を描こうとしたのだと考えられる。が、結果として「大日本帝国大好き」と受け取られる歌になってしまった。

テーマ、つまり設定された課題に対して、歌詞のデザインが柴さんの言っていたように「筋が良くない」ものであり、余計な情報を持ち込ませ過ぎたのだと思う。

といった具合に、「デザインは課題解決の手段である」ということを念頭に置いて、音楽を読み解くといろいろなことが整理しやすくなる気がした。


世界の可変性とコミュニティ

 「心のベストテン」のトーク内容で他にとても印象的だった、アジア出身アーティスト達の活躍について。韓国のBTS (米国の「ビルボード200」チャートで初登場1位!!!!)や、中国のHigher Brothersが自国の言語でグローバルなヒットを飛ばしている昨今、「言語の壁があるから海外ではヒットしない」という言い訳は通用しなくなった。ポップスの潮流は大きな変革を迎えている。

また、マーク・ザッカーバーグ登場以後の "個人が世界を変革することが可能である" ことの話もとても面白かった。

かつて、途方もないエネルギーを持っていた若者たちは「世界は変えられない」という諦観を出発点として楽器を抱えて叫び、ロックンロールバンドを組んだ。

今では、情熱とエネルギーを持ち、仲間や支援者を見つけることが得意な若者たちはビジネスによって世界に爪痕を残そうと動いている。

ここで、冒頭に「誰を幸せにするデザイン?」の話の整理で触れた「コミュニティごとの流行がそれぞれの中で発生するようになる」ことと「世界は変えられる」ことを結びつけて考えたい。

世界的な影響力を持つに至った若者も、はじめは自分の周りの人々に少しずつ影響を広げながら変化を起こしていったはずだ。だから自分の属するコミュニティの課題をデザインという手段で解決することは、細分化された集団の内部に作用するだけに留まらず、もっともっと大きな可能性に繋がっていく可能性がある。自分の国の言語で放った音楽が海を超えて広がっていくように。

日本はこれから経済的にも文化的にも貧しくなっていくかもしれない。
でも。衰退していく様を指を咥えてただただ眺めているのではなく、まずは自分の属する小さな集まりの課題を解決していけるように行動していくことが、やがては未来を楽しく変える潮流に繋がっていくんじゃないか。そう考えていたら、とても気分が明るくなった。


本当に良い気づきのあるイベントだった。来年もあるのかな? とっても楽しみ。

#cakesnotefes #心のベストテン


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