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【言語観察ノート vol.1】「横」と「縦」のイメージの違い


「横断」歩道

横断歩道と言うのに、縦断歩道と言わないのは何故なんでしょう。

渡ろうとする眼前に横断歩道があるとき、あの縞縞模様が常に横向きだからかな。

それとも、「車に乗っていて歩行者が渡るのを待つ側」からすれば、車の目の前を歩行者は横切っている。だからでしょうか。

車にとって縞模様は縦向きですが、渡っている人は横断……
考えれば考えるほどややこしくなってきました。

気になって調べてみると、道路が縞模様で舗装される前から「横断歩道」の由来となる呼称がありました。
もともとは模様もチェッカー柄だったようです。縞模様の向きは関係ないみたいですね。


"object"と「対」の表す意味

ところで、英語のobjectという単語にはいくつか意味があって、名詞では「対象物」「目的」「物体」のほか、「敵」もこの語で表すことができます。

「対象物」と「敵」。一見全然違う意味に思えませんか。

objectは、ob(~に対し)+ject(投げる)がもともとの意味です。
では「敵」というイメージはどこから現れたのでしょう。

「対象物」と「敵」に共通点を見出すとすれば、「敵=敵対するもの」とも表せるので、「対」でしょうか。「対」に注目してみたいと思います。

「対」のイメージは、「自分とは違う何か別のものと寄り添う」、「もしくは向かい合う」だと思います。英語ではpairやversusで表せそうですね。

「それに対し」の対なんかも、日常で使われ過ぎて意識することが少ないですが、「(片方がある前提で、)もう片方はどうか」という時によく用いられますよね。

つまり「対」は、1つだけでは成り立たず、「向かい合う何か2つのもの」という意味が共通イメージとして根底にある。

ここで「対象物」と「敵」に戻ってみると、どちらも「目の前に現れている」というイメージが共通しています。

ということは、
日本語話者、英語話者ともに「目の前にあるもの=立ちはだかってくるもの=敵」のようなコアイメージが共通して存在していて、「object」にも「対」にも、そのイメージが現れているのではないか。

なんていう仮説が思い浮かびます。言語ってロマンだな。

「横」=目の前を遮る=「敵」?

「横」に話を戻すと、「横切る」、「横たわる」や「横断」も、すべて誰かの目の前を遮っているような気がしませんか。

ネコが横たわる、キツネが横切る、シカが横断する、など。全部可愛い。

それは方向感覚的に、何かに沿っているイメージの「縦」では表しづらいような気がします。

縦に切る、縦に寝そべる、日本を縦断する。
こちらを遮るようなイメージがあまり浮かびません。

「自分が進むのを止める何か」は「縦」よりも「横」が相応しい、つまり「横」は「縦」よりも「敵」にイメージが近いのでは?なんて思いました。
いやさすがにこじつけかも。

以上今週の言語観察でした。
つまり横断歩道は誰かの進行を妨げて自分が渡る道ということです。
撥ねられないように気をつけて渡りましょう。

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