見出し画像

芸術学コース・卒業研究①テーマ探し

卒業研究を論文にまとめるには、大きく二つの方向で考える必要があります。まずは、ソフトとなるテーマ選びとその研究。そして、ハードとなる「論文」という完成品。絵画や彫刻とは違うけれど、これも作品みたいなものかな、と思います。

2024年3月に卒業した私の卒業研究は「2023年度卒業研究」で、提出は23年の12月でした。21年入学当初、テーマは全く決まっていない状態でした。もともと3年間の計画でしたので、一年目は課題を進めながらテーマ探しをしました。今思えば、この頃のテーマ探しも、夢があって面白かった思い出です。
縁あって、若冲を間近で見ることができたので、若冲を研究しようかな、と思っていたり。かつてフランスにいて、西洋美術をたくさん目にしたのでそれも馴染むな、とか思ったり。一方で、西洋絵画に若干お腹いっぱいな気持ちもあって、日本美術が新鮮に映っていたり。先生方の影響をもろに受けて、近代日本絵画に新たな発見があったり、中国、インドの仏像も面白いな、とも思ったりもして、ますます何にしようか迷いながら1年目が過ぎました。その中で、当時の芸術学コースの担当教員の先生が西欧中世写本の専門でいらして、その講義がとても魅力的で、その資料の中の写本の一つが忘れられなくなり、最終的にはそれを研究することにしました。

【テーマ選び】
先に述べたように、興味があっちこっちに飛びながらも、中世西欧写本という魅力へ辿り着いて、どちらかというと無理やりそこへ着地した感じではありました。テーマ選びで私が考えていたことは、まず、大人気、超有名、超高評価、超巨匠の作品は避けようということでした。おそらく、資料や文献があり過ぎて、議論も尽くされ過ぎて、なんか新しく、面白いことを見つけるのが大変かしら、と思っていました。先生方は、「どんな小さくてもいいから新知見を!」と言われるので。そんなことできるの?といつも懐疑的ではありましたが。

まずは、2021年度の卒業研究発表会(22年3月頃・大学1年目の終わり頃)に参加して、卒業生の方の発表から論文に求められているものをざっくりと捉えてみました。どのくらいのものが求められているのかがわからなければ、「できるかしら」という不安ばかりになってしまいます。「なるほど、こんな感じでまとめていくのか」と何となくゴールが見えると希望も湧いてきました。そして、すでに3200字のレポートをいくつも書いていたので、「書く」ということの抵抗も少なくなりつつありました。ただ、私がちょっと思うのは、担当教員によって求めるものが違うな、という印象もありました。それでも、ゴールの目安ができたのは前に進みやすくなった気がしました。

それから、私の中世西欧写本については、当時のコース担当の先生の専門そのものだったので、直接面談をお願いして、アドバイスをいただきました。2022年の4月頃だったように思います。23年度に卒業論文を書くとなると、22年7月の「論文研究1−1」には出なければならないので、新学期早々にテーマのご相談をしました。テーマはこの写本で大丈夫か、どのように進めるか、やるべき課題は何か、などをお話ししました。ただ、先生は、実際には、23年度にお辞めになってしまい、実際の私の論文の指導は他の先生に変わりました。

テーマが決まったので、先生に紹介していただいた本を集め、私の画集とモノグラフ(作品専門の文献)は海外取り寄せとなりました。少々お値段はかかりましたが、ただ、何しろ美しく、いくらでも見ていられるので、嬉しかったです。そして、これを皮切りに文献、書籍集めが始まり、本棚も買う必要が出るということになりました。流れ出ていく出費は、投資と考えて。

【今日のまとめ】
「テーマは自分が一番好きなものがいいですよ」
「テーマは自分がものすごく好きなものの次くらいがいいですよ」
などのアドバイスが響いています。確かに、一年以上続けて付き合っていく作品やテーマは「ずっと見ていられる、考えていられる」が目安かもしれません。研究者の方々の「愛」をちょっと実感するような体験ができるのもまたここで学ぶ楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?